5. ニコラ・テスラの知恵【人類の活路は地球から教わる】

現代文明を築き、支えてきたものは何だろうか。おそらく、電気の発見と利用方法の発明ではないだろうか。いまや電気のコンセントが部屋のいたるところにあり、「オール電化」や「電気自動車」という言葉も当たり前のように使われている。しかし、この大量の電気をつくるために、天然資源の石油や石炭を燃やしたり、一度事故が起きると大災害をもたらす原子力を利用したり、便利な現代人の生活は決して手放しで喜べる状況とはいえない。

しかし、もし電気エネルギーがほとんどコストをかけずに無限に使えるようになるとしたらどうだろう。これは「フリーエネルギー」と呼ばれるもので、少し前までは「頭のおかしな人間の戯れ言」と評価されてきた。ところが、フリーエネルギーを発生させる装置は、すでに実用段階にあり、世間の目に触れる直前にまで到達しているという情報が、最近はインターネットを駆け巡っている。果たしてフリーエネルギーなるものは本当に存在するのか? そもそもフリーエネルギーとはいったい何なのだろうか?

フリーエネルギーは、実は私の研究している自然農法(完全な無肥料・無農薬)に共通しているものがあり、どちらも量子物理学の考え方を基本にしている。それはとてもシンプルなもので、「振動」という2文字がすべての根源にある。フリーエネルギーや量子物理学について興味のない方には、何のことかさっぱり分からないかもしれない。ただ、一度理解してしまえば、この世界が昨日とはまったく違ったものに見えてくるはず。実は、すごく単純な話なので、この不思議な世界の一部だけでもお伝えしようと思う。

私たち人間は、他の動植物と同じように「生き物」と分類されている。この地球には、生き物のほかに岩石や水、空気がある。まず初めに、「私たち人間とその辺に落ちている石っころは同じなのだよ」と言われたら、あなたはどう感じるだろうか。日常生活でこのような話題になることはまずないと思う。しかし、もしこの記事を読んだあと、「なるほど道端に落ちている石と自分は同じだ」と考えられるようになれば、人生が非常に面白くなることは請け合う。

では、謎解きから始めよう。

私たち人間の身体は、いろいろな細胞で作られている。骨や血液、あるいは筋肉や臓器。こうした細胞を細かく見ていくと、それぞれがカルシウムや炭素、酸素、窒素、鉄などの原子で作られていることを私たちは知っている。原子が最小で、いくつかの原子が組み合わさって分子になる。それが骨になったり、筋肉になったり。ここまでは、かつて学校で教わった通りだ。では、原子は何から出来ているのだろうか?

ここから先は、学校では教わらないまま社会人になった人がほとんどだろう。もちろん、私もその一人だ。だから、原子が何から出来ているかなど、最近になってようやく知ったばかりだし、知ることによって世界観が180度変わってしまったので、自分自身とても驚いている。

さて、原子の話に戻ろう。原子は原子核と電子が組み合わさった物質だ。そのうち原子核は、もっと小さな量子(素粒子)が組み合わさって作られていることが分かってきた。そのことを研究する分野が量子物理学あるいは量子力学と呼ばれている。量子物理学は100年ほどの歴史があり、とくに近年はすさまじいスピードで研究が進んでいる。一昔前は研究者も少なく、内容が難しすぎて理解できなかった。ところが、研究が進むにつれて、マスメディアが特集番組を制作するなどして、この10年は、量子物理学が庶民の目に触れる機会が増えてきた。インターネットでも解説動画がたくさん出てきているので、とてもありがたい。

量子の研究が進んで、もっとも興味を引くのは、「量子は振動している」という特徴を持っていることだ。これは、学校で教わった話と矛盾している。というのも、古典物理学には「絶対零度」という考え方があって、摂氏マイナス273度になると、すべての原子は凍りついて活動を停止すると教わってきた。しかし、量子物理学は「いかなる状況になっても量子は振動している」というのだ。つまり、たとえ絶対零度になっても、原子を構成する量子は振動しているし、つまり原子も微弱ながら振動していることになる。

では、いろいろな原子でつくられている私たち人間の身体はどうだろう。察しの通り、いかなる状況においても、私たちの身体のすべての細胞は振動している、ということになる。そして、この振動こそが、大きなエネルギーを生み出しているのだというのだ。

2011年3月11日、私たちは東日本大震災を経験した。大津波に流された犠牲者は多かった。この津波は、いくつかの波が重なって異常な高さになって陸地を襲った。「波」は、高い部分が重なるともっと高くなる。低い部分が重なるともっと低くなる。そして、高い部分と低い部分が重なると打ち消し合って消える。そんな性質を持っている。私たちの耳に入ってくる音も同じだ。大きな雑音が気になるという人のために、「ノイズキャンセリング」という装置が発明された。これは、雑音の音波を機械で分析して、それと同じ波形を反転させてぶつけることとによって、波が消えてしまう現象を応用したものだ。

とくに注目されるのは、「波の共振(共鳴)作用」だ。たとえば、楽器演奏をするときに「音叉(おんさ)」という道具が使われる。同じ周波数の音叉を2つ並べて、片方を叩いて振動させると、もう一方の音叉が自然に振動する。逆に、2つの音叉を同時に慣らすと、同じ振動がぶつかることによって、波の高いほうが2倍の高さになり、低いほうも2倍の低さになる。この振動を繰り返し共振させていくとどうなるだろうか。それはご想像通り、すさまじいエネルギーを生み出す。実は、大掛かりな実験装置をつくって、ビルをも破壊した研究者がいた。クロアチア出身の発明家ニコラ・テスラ(1856-1943)だ。

テスラは一般家庭に普及している交流電流の発明者でもあり、人類の文明に大きな貢献をした科学者だ。その才能は、ただの発明家ではなく、テスラの考案した「テスラコイル」という回路が、フリーエネルギー装置の基礎になっていると言われている。その原理は、地球内部は「定常波」といわれる微弱な振動で満たされており、この定常波を共振させることで、未知の大きなエネルギーを取り出すことができるというものらしい。実際、その実験をしている最中に、ビルが共振して壊れてしまったというエピソードは有名だ。

「振動」と「共振(共鳴)」。これは量子物理学の重要な考え方であるだけでなく、この世界を理解するのにとても有効だと思う。たとえば、私たちの感情や思考も「脳波」という振動であり、気の合う仲間といると、安心感や楽しさが増してくるのはだれしも経験しているはずだ。もちろん、その逆もある。たとえ微弱な振動であっても、共振することで良くも悪くも巨大なエネルギーになる。この世界は、すべてが振動している。八百万の神。私たち日本人には「石にすら神が宿る」という精神世界がある。おそらく縄文時代の祖先は、量子が振動していることを直観的にとらえる能力があったに違いない。

実は自然農法においても、この「共振」こそが重要な鍵を握っている。次回はその謎解きをお伝えしようと思う。
(つづく) 

自然農法家、ジャーナリスト。1986年慶応大学経済学部卒業。読売新聞記者を経て、1998年フリージャーナリストに。さまざまな社会問題の中心に食と農の歪みがあると考え、2007年農業技術研究所歩屋(あゆみや)を設立、2011年から千葉県にて本格的な自然農法の研究を始める。肥料、農薬をまったく使わない完全自然農法の技術を考案し、2015年日本で初めての農法特許を取得(特許第5770897号)。ハル農法と名付け、実用化と普及に取り組んでいる。 ※寄稿文は執筆者の見解を示すものです。