大紀元時報
農科学もうひとつの道 完全自然農法

7. 肌がきれいになる農作業~善玉菌が全身を浄化する

2021年8月21日 13時41分
kotoru / PIXTA(ピクスタ)
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土いじりをすると手が荒れる──。家庭菜園を楽しむ人にしろ、プロの農業者にしろ、なぜか土に直接触れると手が荒れる。そして、そのことは当たり前のこととして一般に受け止められている。子供たちに農業体験をしてもらう企画がテレビ番組で紹介される場面でも、畑で種播きしたり、苗を植えたり、あるいは収穫するとき、子供たちはビニール手袋をはめたうえ、さらに軍手をはめて参加する様子が映し出される。いま日本の農地は、素手で入ってはいけない危険地帯になっているのだ。

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ほぼ毎日、自然農法の畑の土に触れている筆者の手は、荒れることなくすべすべしている。すでに園芸経験があり、ずっと手荒れに悩まされていたという人も、この農園で野菜づくりを始めると、「手が荒れなくなった」と驚いている。両者の違いにどのような理由があるのだろうか。とくに手荒れについて検証したことはないが、考えられる一番の原因は「肥料」だと推測される。

農薬」という可能性もなくはないが、かつて有機農業の現場で1年近く学んでいたとき、生産担当のスタッフたちは、例外なく手荒れに悩まされているのを見てきた。瑞々しい肌を持つ若いスタッフたちの両手の爪と皮膚がボロボロになり、痛々しかった。有機農業は農薬を使わない。つまり、肥料を投入した畑の土に直接触れて手が荒れていたのだ。そして、おそらく手荒れの本当の原因は、肥料を投入したことによる悪玉菌(腐敗菌など)の増殖によるものだろう。

2011年、初めは「食糧生産の手段」として自然農法の研究の道に入ったが、途中で微生物の存在と働きがとても重要であることが判明した。そして、微生物について詳しく調べていくと、土壌微生物は、農作物の成長だけではなく、私たち人間の健康に深くかかわっていることも分かってきた。

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目に見えない微生物について、あまり良くないイメージを持つ人が多いのではないだろうか。たとえば病原性大腸菌O157、コレラ菌、腸炎ビブリオ菌などなど。そのほかにもコロナウィルス、インフルエンザウィルス、ロタウィルスといったウィルスたち。現代社会は、危険を訴える情報があふれている。実際、目に見えないだけに、一度不安を感じてしまうと、その負の感情を払拭するのは難しいかもしれない。このように書いている筆者自身も、研究を始める以前は、微生物に良いイメージはなく、せいぜい腸内環境を整える乳酸菌など「ごく一部に善玉菌と呼ばれる種類がある」くらいに思っていた。

その考えは、自然農法の畑に10年以上もかかわり続けることで、180度変わった。微生物もウィルスも、私たち人間が地球に現れるはるか以前から存在し、しかも人間の進化や健康の維持に、最初から役立ってくれているのだと、いまは確信している。

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近年、微生物の研究者も多くなっているためか、さまざまな視点から最新情報が発信されるようになった。なかでも、農地に繁殖している微生物と人間の腸内細菌がよく似ているという指摘が興味深い。もっとも、このことは科学者に指摘されなくても、畑から採れた作物を食べているわけだから、畑の微生物と人間の腸内細菌が似ていても、不思議なことはない。ただ、そのことを意識したうえで、現代農業の畑と自然農法の畑を比較すると、さらに面白いことが見えてくる。

筆者は、1960年代、急激な経済発展の影で水質汚濁や大気汚染という公害に脅かされていた東京に生まれ育った。幼少期は、夏になると、学校の屋上に光化学スモッグ発生を知らせる黄色い吹き流しが毎日のように掲げられ、近所の川は「ドブ川」と呼ばれ、常に悪臭を漂わせていた。東京湾にはヘドロが溜まり、奇形魚がプカプカ浮いていた。

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ドブ川の悪臭は鮮明に記憶に残っているが、いまだに同じ臭いを発する場所がある。大雨に見舞われた農場だ。肥料が残留した農地は、雨水が溜まると酸素不足になり、すぐに腐敗して悪臭を放つ。おもな原因は、毒性の強い硫化水素やメタンだ。これは、農業の現場を経験しなければ知ることはできなかっただろう。そして驚いたのは、肥料をまったく使わない農地は、いくら雨水が溜まっても腐敗による悪臭が立たないことだった。

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また、肥料栽培の農作物は、常温で密閉すると腐って溶けてしまうことが多い。一方、自然農法の農作物は、常温で密閉しておくと乳酸発酵して、いわゆる「漬け物状」になることも知られている。これらの農作物を食べたとき、腸内でどのようになるかを想像すると、現代人の多くが腸内の不具合に悩まされる理由も理解できる。

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自然農法は、未来の食料生産という視点でとても重要ではあるが、それだけではない。いまはプランターや庭でも経験できる農業技術であり、実際に自分で野菜を育てることで、土に繁殖する善玉菌を意識することができるかもしれない。そして「食べて良し」「土に触れて良し」の実体験が、身体の内も外も浄化してくれるだろう。

執筆者:横内 猛

自然農法家、ジャーナリスト。1986年慶応大学経済学部卒業。読売新聞記者を経て、1998年フリージャーナリストに。さまざまな社会問題の中心に食と農の歪みがあると考え、2007年農業技術研究所歩屋(あゆみや)を設立、2011年から千葉県にて本格的な自然農法の研究を始める。肥料農薬をまったく使わない完全自然農法の技術を考案し、2015年日本で初めての農法特許を取得(特許第5770897号)。ハル農法と名付け、実用化と普及に取り組んでいる。
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