2007年9月17日、中国浙江省杭州市の杭州ドラゴンスタジアムで行われたFIFA女子ワールドカップのドイツ対日本戦の前に、警察官が日本のファンに国旗を置かせないようにしている。(Feng Li/Getty Images)

中国の専門家、対中包囲網に「日本を突破口に」 反日感情が足枷か

秋葉剛男国家安全保障局長は8月17日、中国・天津で中国外交担当トップの楊潔篪(ようけつち)共産党政治局員と会談し、政府は「今後も対話を継続する方針を確認した」と発表した。9月下旬に迎える日中国交正常化50周年に向けて、双方が関係改善に乗り出すとみられる。ただ、中国側の目論見はそれだけではないようだ。

中国のポータルサイト「網易」が23日に掲載した、中国人民大学国際関係学元教授で、独立系シンクタンク「國觀智庫」の儲殷研究員の評論記事は、今回の会談が中国の国家戦略にとって非常に重要だと述べ、米中対立が高まるなか「日本を突破口にする」狙いを明らかにした。

同氏は、長い間、日中間に歴史問題などに由来する「構造的な対立」は根強く存在するが、これまで西側の対中包囲網を突き破るため、日本を利用していたと述べた。

1989年の六四天安門事件後、各国は対中制裁を実施したが、いち早く制裁解除に動いたのは日本だった、と言及した。

同氏は、日本が信頼できる相手ではないが「最先端技術と外国投資を得て、西側の包囲網に風穴を開けるための重要な存在だ」と分析した。

「日本との関係は現実的かつ重要な戦略的利益に関わる問題だ」と指摘し、(民族)感情に流されてはいけないと最近高まる反日感情を牽制した。

中国と西側の緊張がますます高まっているとし、「日本企業を安心させ、日本からの投資を安定させ、最先端技術を日本から導入することは、中国にとって非常に重要な問題だ」と説明。

いっぽう、両国の高官による協議は「争議点を棚上げにし、良い雰囲気作りをする」には有効だが、「市民の民族感情とネット空間上の巨大な圧力に直面する」と述べ、日本との友好ムードが国民の反発を引き起こす懸念を示した。

中国ではこのほど、浴衣を着用する若者が連行されたり、日本スタイルの夏祭りが中止になったりするなど、親日の風潮を徹底的に封殺しようとしている。

中国政府は六四天安門事件後、国内政治への不満をかわすため、反日教育を利用してきた。2012年、日本政府が尖閣諸島の国有化を宣言すると、中国政府は大規模な反日デモを容認し、国民の民族感情を煽り立ててきた。

現在、国際社会では中国の脅威への警戒がかつてないレベルにまで達し、中国政府は局面打開に再び日本との関係を改善しようとしているが、国民の理解を得られなくなる恐れがある。反日教育が裏目に出る格好だ。

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