米国務省次官補ダニエル・クリテンブリンク氏。2018年1月23日撮影(HOANG DINH NAM/AFP via Getty Images)

米国務省高官 北朝鮮ミサイルで…「義務果たさない」中露を批判

4日朝、北朝鮮が日本上空を通過する弾道ミサイルを発射したことについて、東アジア・太平洋担当のクリテンブリンク米国務次官補は、北朝鮮の行為は「地域的および国際的な安定を深刻に脅かす重大な挑戦」だと述べた。いっぽう、国連制裁の義務を果たさず、北朝鮮に対する調達ルートを絶っていないとして中国とロシアを批判した。

クリテンブリンク氏は米シンクタンクのオンラインイベントに出席し、米国は同盟国である日本と韓国を守るために「米国の国家権力を含むすべての必要な措置を講じる」と強調した。いっぽう、北朝鮮には対話窓口を開けているとしながらも、北朝鮮がもたらす脅威には「断固として対応する」と述べた。

さらに、中国とロシアによる協力が北朝鮮による国連制裁回避につながっているとしたうえで「中国とロシアが義務を完全に果たさないがために、国連安全保障理事会や国際的なルールに基づく秩序、世界的な核不拡散体制を弱めている」と批判した。

北朝鮮のミサイル発射は、アキリーノ米インド太平洋司令官の訪日中に起きた。4日午前、浜田靖一防衛相との会談で「このような行動が地域に不安定をもたらし、さらには平和と安定を脅かす」と述べ、自由で開かれたインド太平洋の維持に取り組む考えを示した。

政府は内閣官房長官声明を発表し、ミサイル発射は国連安保理決議違反であり、「我が国として断じて容認できない」と最も強い言葉で非難した。政府によると、ミサイルによる航行中の船舶・航空機による被害報告等の情報は確認されていない。北朝鮮のミサイルが日本上空を通過したのは2017年9月15日以来およそ5年ぶり。

声明は、総理指示を踏まえ北朝鮮の弾道ミサイルについて、落下物等による被害確認を行うほか、国民への的確な情報提供、米韓などとの国際協力の強化、国連安保理における更なる対応を求めるとした。さらに、新たな国家安全保障戦略などの策定をし、「反撃能力」を含め、防衛力を抜本的に強化していくことを表明した。

松野博一官房長官は同日の記者会見で、自衛隊によるミサイルの破壊措置は実施していないと明らかにした。「自衛隊が発射直後から落下までに完全に探知・追尾をしており、その落下によって我が国領域における被害は想定されなかった」ためだという。

関連記事
何てことをしてくれるのかーー。北朝鮮が弾道ミサイルを発射したとの報を受け、在日朝鮮人のパク・ヨンさん(仮名、40代)は肩を震わせた。おりしも日本と北朝鮮はサッカーで予選枠を競っていた。冷酷で傲慢な金正恩体制、日本での静かな営み。二国間のはざまで在日朝鮮人は複雑な思いを抱えていた。
外交関係者の話によると、北朝鮮は国連制裁に違反し、中国の10以上の都市で北朝鮮人従業員を雇用した50以上のレストランを経営しているという。これらレストランの収益の大半は、北朝鮮政権によって核・ミサイル開発資金に充てられていると見られている。
北朝鮮情勢を語る上で、中朝露の三角関係を考慮せずにはいられない。北朝鮮が領土的野心をあらわにし、イランも核開発を加速させるなか、世界情勢のきな臭さは一段と増している。
北朝鮮が立て続けにロケットを打ち上げる背景には、中露という「悪の枢軸」と米国との熾烈な駆け引きがある。大国間のパワーゲームを理解することで、北朝鮮の核・ミサイル問題の本質を見定めることができる。
岸田文雄首相は21日朝、北朝鮮が人工衛星を発射すると通告してきたことを受け、「弾道ミサイル技術を使用するなら一連の国連安保理決議違反」と非難した。