人生の3分の1を過ごす場所 ベッドについて(上)

ベッド」とは。ほとんどの人はここで生まれ、ここで死んでいきます。人生の3分の1をここで過ごし、本を読んだり、話したり、愛する人と抱き合ったり、ワインやコーヒーを飲んだりします。ここは体を回復する場所であり、悲しみに泣く人の避難所であり、夜中に恐怖の暗闇と幽霊を避ける子どもたちのお城です。ここは、夫婦の砦であり、戦場でもあります。

これが「ベッド」です。

一見ごく普通の家具ですが、実際、アンデルセン童話や千夜一夜物語では、「ベッド」が物語の舞台となっています。

芸術に限らず文化の定義を広げて考えてみれば、「ベッド」は睡眠用の家具だけでなく、喜劇や悲劇の舞台でもあるのです。

「TheSickGirl」(1882年、ミカエル・アンカー作/パブリックドメイン)

「ベッド」の歴史

先史時代の人類は睡眠にあまり関心がなく、肉食動物の深夜のおやつにならないように常に気を引き締めなければなりませんでした。

人類最初のベッドの出現は、約7万7千年前と推定されています。それは南アフリカで発掘された浅い穴で、両側には昆虫を寄せ付けない植物が植えられていました。社会の発展に伴い、簡易な小屋に寝室ができ、家族や親戚が共用しています。

エジプトや中国などの古代社会では、ほとんどの人がマットや筵(むしろ)、干し草の上で寝ていました。時が経つにつれて、ベッドに関して、快適さや地位を追求されるようになったのです。例えば、中国の北方では、レンガで築かれたベッド――火炕が普及し、長くて寒い冬には、炕の下で火をおこせば、長時間暖かくなります。エジプトのツタンカーメンは金の布団や、精巧で貴金属の彫刻が施された豪華なベッドを使用していました。

古代ローマでは、上流階級の住宅「ドムス」(ラテン語)には、現代の個室(キュービクル)のようなキュービクラ(cubicula)と呼ばれる寝室がありました。現代のオフィスビルの空いているワークスペースのように、これらの部屋には装飾が施されてはおらず、休憩だけできるように確保されています。

 

「ベッド」は集まりの場所

「The Women of Amphissa」(1887年、ローレンス・アルマ=タデマ作/パブリックドメイン)

 

多くの社会では、寝室はしばしば大きな共有スペースとされています。人類の大半の歴史の中で、多くの地域の文化は、プライバシーと公共生活の認識に関して著しく異なります。

例えば、叙事詩であるベーオウルフ(Beowulf)の物語は、肉と蜂蜜酒で満たされた大宴会場であるヘオロットで展開されています。デンマークの王フロースガールがお祝いのイベントから去った後、その部下や側近、王の部下も宴会場で寝ていました。そしてその夜、ベーオウルフはそこで巨大な怪物グレンデルと戦いました。

フランスのルイ14世国王の場合、寝室はオフィスにもなっていました。

第二次世界大戦中、イギリスのウィンストン・チャーチル首相もルイ14世のように、快適なベッドで仕事をしていたのです。

(つづく)
(翻訳編集 季千里)