自民党の安全保障調査会長を務める小野寺五典元防衛相はロイターとのインタビューで、武器の輸出規制について、英国と共同開発する方向で調整している次期戦闘機を念頭に見直しを議論していることを明らかにした。写真は閣僚協議でロシアを訪問した際の小野寺氏。2018年7月、モスクワで撮影(2022年 ロイター/Maxim Shemetov)

武器の輸出規制、次期戦闘機開発で見直しを議論=小野寺元防衛相

[東京 25日 ロイター] – 自民党の安全保障調査会長を務める小野寺五典元防衛相はロイターとのインタビューで、武器の輸出規制について、英国と共同開発する方向で調整している次期戦闘機を念頭に見直しを議論していることを明らかにした。

複数の関係者によると、航空自衛隊F2戦闘機の後継機開発を進める日本は、同じタイミングで次期戦闘機開発に取り組む英国と計画を統合することを協議。イタリアも加わる見通しで、来月にも合意する。

開発参加国が技術をそれぞれ持ち寄ることから、英国やイタリアが輸出を決めた場合、日本が担当する部分も第3国へ出ていくことになる。

小野寺氏は「作る部品はパートパートでみんなシェアすることになる。日本がシェアした部分を外したら飛行機が飛ばない」と説明。共同開発国が第3国に輸出を決めても「日本は反対もできないし、日本の部品を外せとも言えないので、そういう時はどうしたらいいのか、少し議論をしている」と語った。

日本は2014年、防衛装備移転三原則を導入して武器の禁輸方針を緩和した。しかし、輸出できる装備品を運用指針で救難・輸送・警戒・監視・掃海に限定しており、戦闘機や戦車など殺傷能力のあるものの移転は想定していない。また、装備移転協定を個別に結んでいない国へも輸出ができない。

小野寺氏は「今後、共同開発国以外のところに出す場合は、少し国内では議論を整理しなければいけない」と述べた。

政府は年末までに「国家安全保障戦略」など防衛3文書を改定する予定で、武器輸出の見直しも俎上に上っている。与党の自民・公明両党は装備移転の運用指針を見直すことで一致しているが、詳細は今後の議論で詰める。

<有事の日米統合運用>>

このほか小野寺氏は、有事の際に自衛隊と米軍が指揮命令を一体化する日米統合指令部の設置も与党内で議論していることを明らかにした。「日本を防衛するために、部隊を動かすときは日米で共同で動くことになる。共同の司令部をどうしたらいいのかという議論は、当然出ている」と語った。

ただ、韓国軍と米軍のような関係までの踏み込んだ議論はしていないという。今も北朝鮮と戦争状態にある韓国には米韓連合軍司令部があり、韓国軍は有事の際、米軍の指揮下に事実上入る。

一方、陸海空の各自衛隊を一体的に運用する統合司令部を設ける議論は「進めると思う」とした。現在は3自衛隊をまとめる統合幕僚監部があるが、統合幕僚長には首相や防衛大臣を補佐する役割もあり、部隊の指揮に専念できない。

小野寺氏は「有事の際に大臣が司令官として部隊を動かすよりは、陸海空の部隊をよく知る司令官を置くべきではないか」と語った。

*インタビューは24日に実施しました。

(金子かおり、Tim Kelly、豊田祐基子 編集:久保信博)

関連記事
1990年代、米国の支援で立ち上げられた中国のサイバー部隊は、今や弾道ミサイル以上の脅威となっている。親米派が多いロケット軍を粛清した習近平は直属の「情報支援部隊」を創設し、情報戦に血道を挙げる可能性がある。
全世界の軍事費支出が9年連続で増加し、過去最高値を再び更新したことが明らかになった。スウェーデンに本部を置くシンクタンク「ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)」が22日(現地時間)に公開した報告書によると、昨年の全世界の軍事費支出規模は約2兆4400億ドル(約772兆円)に達すると集計された。
[東京 23日 ロイター] – 米インド太平洋軍のアキリーノ司令官は23日、中国経済が「失敗」しつ […]
8日、エマニュエル駐日米国大使と山形前駐オーストラリア日本大使が、日米同盟の重要性を力説した。エマニュエル大使は、「新型コロナウイルス感染症」「ロシアのウクライナ侵攻」「中国の威圧的行動」という「3つのC」が世界を変えたと指摘。日米両国がこの2年間で70年来の政策を大きく転換したことに言及し、「日米同盟は新時代を迎えている」と強調した。
日本、フィリピン、米国の首脳は4月中旬に連続してホワイトハウスで首脳会談を行い、国際法の支配を守り、自由で開かれたインド太平洋を推進し、地域の進歩と繁栄を支援するという共通の決意を表明した。