2022年9月、国会で答弁に立つ岸田文雄首相と松野博一官房長官(Photo by KAZUHIRO NOGI/AFP via Getty Images)

日本の「高度人材」新制度 中国籍がすでに6割超 米欧はビザ制限

日本政府は高度外国人材を受け入れる新たな制度を創設する。出入国管理局によれば、現在「高度人材」にあたる在留資格者は総計およそ1万7000人で、全体の6割超にあたる1万人が中国籍となっている。米欧が中国の投資家や技術者らのビザ規制導入を図るなか、日本は安全保障上の要件は特に盛り込んでいない。

「高度人材」は半導体、量子、新エネルギーなどの学術研究や専門技術者、高所得の実業家、世界大学ランキング上位校の卒業生らを指す。新制度は在留資格の取得条件を緩和する。学歴や職歴、業績、年齢をポイント制で加算して5年滞在ビザとして承認され、ポイントが高ければ日本滞在1年で無期限の在留資格が得られる。

日本の人材制度について、中国のオンラインでも関心事項となっている。21日にはオンラインで「#日本の66%の高級外国人が中国人」が注目フレーズの1位となった。「日本版グリーンカードが最短1年で手に入るチャンス!」などと、詳細に制度を説明するウェブサイトも少なくない。

いっぽう、ポータルサイト網易には国内人材の流出を懸念する声もある。「在日高度人材の6割は中国人、我々は日本の台頭に貢献するのか」、「少子高齢化に苛まれる日本は、IT分野でも平均収入400万にも関わらず海外人材獲得に躍起になっている」などの書き込みがある。

日本の防衛関係や先端分野研究所といった機微技術を取り扱う機関に、中国共産党の監督下にある高度人材が入所した場合、情報漏えいリスクもある。

米国や欧州などは、中国共産党の拡張主義や在外華人に対する中国国内法の影響を背景に、中国出身者の迎え入れにはますます態度を硬化させている。

米連邦捜査局(FBI)は特設コーナー「中国の脅威」および「中国の人材計画」を設けて、海外の知識力や開発力を自国に持ち帰る中国の計画について次のように警告を発している。

「中国は何百もの人材計画を監督している。そのすべては中国の国家的、軍事的、経済的目標の達成に必要な外国の技術を盗むよう、メンバーに働きかけている」「中国人材計画がもたらす潜在的リスクと違法行為を理解し、自社の企業秘密と知的財産を保護するための措置を講じるべき」

なお、こうした警告は中国系人種や個人を対象とせず、在外華人の言動にまで影響を及ぼす中国政府や共産党の計画に対するものと強調している。

マルコ・ルビオ議員やジム・バンクス議員ら保守系共和党議員からは、中国共産党員への10年滞在ビザ発給禁止法案や、中国出身者と共産党機関とのつながりを審査するよう義務付ける法案などが提出されている。

警戒を高めているのは人材計画だけではない。移民に比較的寛容な欧州でも近年、安全保障上の懸念、不動産価格高騰、汚職関与などの問題から制限を設けた。

アイルランドとポルトガルは、富裕層の移民に永住権を付与する「ゴールデンビザ」を廃止した。報道によると、アイルランドでは同ビザ制度導入以来、承認した投資家のうち香港を含む中国投資家は90%以上を占めた。

高まる中国人投資家のビザ取得に懸念を示した欧州委員会も昨年、「安全保障上のリスク、マネーロンダリング(資金洗浄)や脱税、汚職」目的で悪用される可能性があるとして、ゴールデンビザの廃止を呼び掛けていた。

いっぽう、日本の岸田政権は中国共産党との協調を模索する。18日、ドイツのミュンヘンで日中外相会談が開かれた。林芳正外相は王毅共産党政治局員とともに「経済分野での協力」「青少年交流を含む国民交流再活性化」について考えを共有した。

これと並行して経済安保対策強化の進捗も伝えられている。22日、国家機密を扱う資格者を国が認証する「セキュリティクリアランス」法制化に向け、有識者会議を開催した。高市早苗経済安保担当相は「ここまでが長い道程でしたが、スピード感も重視して議論を進めます」と述べた。

松野博一官房長官によれば、新たな高度人材計画のビザ制度は4月実施を目指すという。経済安保の対応強化が急がれる。

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