春菊——身体を守り 元気を固め 心を清めて安らかに

春菊(シュンギク)、関西など地方によっては「菊菜/きくな」とも呼ばれています。よく天然の健康食品、植物性栄養素と称えられています。中医学では、春菊は腎を温めて肝気を疏通し、心を安定させ、五臓を調整し、元気を保ち健康を維持する効果があると考えられています。春菊を食べると、老若男女問わず気分爽快になります。

昔話によると、中国では宮廷料理に使われることが多く、皇帝の料理という名声を持っていました。天下の事を憂慮する皇帝は、ストレスが大きく、肝火が盛んで、睡眠障害や便秘、疲れがたまりやすく、体調のケアに、春菊は大きな効果がありました。

現代のサラリーマンは昼夜問わず忙しく、精神的に不安や緊張した状態が続くことが多くて、古代皇帝のように疲れていると言っても過言ではありません。子供も入試試験のためにストレスが溜ります。こんな時は、昔皇帝を守っていた不思議な野菜、春菊を思い出しましょう。

心を安定させる 脾臓と胃を養う

唐の時代の孫思邈の『千金・食治』には、春菊の効能が記載されています。「心の気を安定させ、脾臓と胃を養い、痰を消し、腸と胃を整える」つまり、心を安定させ、後天的な根源である脾臓と胃を養い、体内の様々な痰や老廃物を排除し、腸と胃をスムーズに機能させることができるのです。

実際、中医学では体調を整える際、主に人体の経絡の気機という循環システムに着目しています。また、人間の精神や感情は、喜び、怒り、悲しみ、楽しみ、恐れ、驚きなどの感情要素は、すべて五行に分類され、人の目には見えないエネルギーレベルであり、内臓に属する経絡に直接侵入し、乱れを引き起こすことがあります。感情は目に見えないものですが、古代の中医師はそれらが五行のエネルギーに属することを知っていました。経絡から取り掛かることで、五臓六腑を整えることができます。

そのため、中医学では、症状や治療法を表現する際に「気」という言葉がよく使われます。気とは、経絡を流れるエネルギーです。五臓の気も五行に分類されます。そのため、『千金・食治』では春菊が「心の気を安定させる」と述べています。安定させるのは、心の経絡の気です。気が安定すると、心も安定します。

心の経絡の気は五行の中で「火」に属しており、心の「火」のエネルギーが強いと、イライラして不安になり、眠りにくくなります。心の「火」が強いことは、肝の「火」が強いことと関連があります。

肝の経絡の気は「木」に属しますが、「木」の気が「火」の気を生み出すため、怒りやイライラ、憂鬱な気持ちになります。肝気が鬱し「火」と化すと、心肺に入り、心の気を乱し、心が落ち着かなくなります。

肺は五行で「金」に属し、「金」の気は涼しい性質を持っています。心の「火」によって肺が熱くなると、人はイライラしやすく、熱さに耐えられず、息切れや咳が出ることがあります。

春菊は、古典に記載されているとおり、心・脾・胃の経絡に働きかけ、心を清め、肺を潤し、脾臓と胃を強化することができます。そのため、痰を取り除き、水滞を排泄(化痰利水作用)、咳、喘息を鎮め、心を安定させる効果があります。それによって、人々の睡眠を助けることができるのです。

腎を温めて元気を補い、肝気を良く巡らせる

『本草求真』は春菊の五臓を守り、心の火を解消し、心を安定させる仕組みについて詳しく論じています。その根本的な原因は、春菊の性質が温かいためであり、「心・脾・腸・胃・腎」に作用し、腎を温めて陽の気を補うことができます。腎が虚寒で陽気が不足し、上熱下寒型の虚熱の体質に非常に効果的です。腎の陽気が十分であれば、春菊を食べると、かえって心肺の火気が強まります。

したがって、現代のストレスが多く、腎陽が不足している人々には非常に有益です。しかし、腎気が充足している人は、過剰摂取は避けるべきであり、医師の指示に従うか、または自分で慎重に観察し、その感覚を体感することが大事です。

『本経逢原』にも同様に述べています。「(千金方による)心の気を安定させ、脾臓と胃を養い、痰を消し、腸胃を利すると述べており、それは本来の「火」が衰えている場合を指しています。もし腎の気が本来旺盛である場合、「火」を助ける危険がないわけではありません」と同じ理屈が語られています。

腎の気は五行で「水」に属し、陽気が補われると、温かい「水」で肝(木)の気を養います。肝の気が滞りなく流れ、脾膵と胃が調和し、心肺には余分な「火」が生じず、晴れた空のように澄みわたりまます。人体の経絡が滞りなく流れ、五臓六腑の機能が正常に働くことで、すべての細胞が活性化され、身体は自然と気分爽快になります。これが、肝をほぐし鬱を解消し、心を安定させ、五臓を調整するメカニズムです。

春は陽気が生い茂り、木の気が上昇し、その影響で人体の木性の肝気を引き上げやすいのです。冬に寒さにやられ、腎の陽気が消耗されてしまう場合、春には肝を養うことができず、肝気が鬱滞し、心肺の熱咳、脾臓の湿寒、食欲不振、イライラして眠れないなどの症状が現れることがあります。

一見すると心の「火」が強いように見えますが、実際には腎の寒さと肝の鬱滞が引き起こす虚偽の熱症状です。そのため、旬の春菊を食べることで、腎を温め、肝をほぐし、このような体質の人には良い調整保健効果があります。

腎は先天の根本であり、骨を司り、脳髄の生成を担当しています。これが春菊がカルシウムを補い、脳を助け、記憶力を回復する効果がある原因です。

香ばしい簡単料理

春菊で作る料理は香りが良く、繊維が柔らかく、食欲をそそり、さらに新鮮でおいしいと感じるため、子供からお年寄りまでみんなに適しています。

お湯を沸かし、香辛料を気にせず、一束の春菊を入れて煮てから、適量の塩と味の素を加え、食用油をかけるだけで、手軽なカルシウム補給健康料理「春菊のスープ」が完成します。もちろん、生で食べることも簡単で、調理方法は様々です。

白玉煕
文化面担当の編集者。中国の古典的な医療や漢方に深い見識があり、『黄帝内経』や『傷寒論』、『神農本草経』などの古文書を研究している。人体は小さな宇宙であるという中国古来の理論に基づき、漢方の奥深さをわかりやすく伝えている。