情報を抱いた渡り鳥【季節の便り】

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渡り鳥が移動する季節です。春を告げるツバメが生まれ故郷の日本に、一羽ずつ単独飛行で帰ってきます。オスたちが先立ち、それから数日遅れてメスたちがやって来ます。2月下旬には日本の南のお空(鹿児島辺り)にその姿を現します。低空飛行を重ねて日本列島の湿地帯(琵琶湖ルートなど)を北上し、4月下旬になると北のお空(北海道辺り)を元気一杯に飛び回ります。

お空をチュイン、チュイーンと小気味良く鳴くツバメがやって来ると、本当に日本の春が来たと実感します。ツバメは日本で巣作りをし、4月から7月にかけて産卵します。秋には日本から飛び立ち、南の国(台湾やフィリピンなど東南アジア)へと渡ってゆきます。

《南》の越冬地で、ツバメは大地の懐に抱かれます。地球の力を受け取るために南へと渡ってゆきます。北のお空で繁殖するための体力、骨格や筋肉を、南の土のめぐみから受け取るのです。

《北》の大空で、ツバメは天の懐に回帰します。ツバメは生まれ育った故郷の力と結びつきます。ツバメは天から降り立って来た「いのち」ですから、天の出産力と結びつかなければなりません。北のお空に降り注ぐめぐみから出産力を受け取るのです。

あめ《天=北》と、つち《大地=南》を渡るツバメの春一声は「喉かな」日本の春の確かな槌音です。