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春の肝ケア野菜

春の訪れとともに 肝の働きを整えるカリフラワー

立春の前後になると、自然界では「木のエネルギー(木気)」が勢いを増し、風を吹かせ、雨をもたらしながら春の訪れを告げます。そして、この木気は人間の体とも深く関係しており、特に「肝」の働きに影響を与えます。

東洋医学では、肝のエネルギーは春の気候と連動し、体内の気の流れをスムーズにする役割を担います。そのため、この時期には肝の働きが活発になり、全身の経絡(気の通り道)にもその影響が現れます。

たとえば、東洋医学の「脈診」(脈の状態を診る方法)では、春先の脈はまるで楽器の弦を軽く押したときのような弾力を感じるとしています。これは、体のエネルギーが春の変化に合わせて動き出している証拠です。そして、この変化に伴い、体調の変化や不調が起こりやすくなります。

春に起こる胸のハリと肝の関係

春になると、肝の経絡(エネルギーの通り道)が活発に働き始めます。しかし、もし肝の気や血の流れが滞っていると、朝起きたときに胸の両側が張るような違和感や軽い痛みを感じることがあります。特に女性はこの症状を感じやすく、無意識のうちに胸のあたりを軽く押したりマッサージしたくなることもあります。これは、肝の経絡が春のエネルギーに押し上げられ、気血の流れを促そうとしているものの、途中で詰まっている状態です。

この詰まりが解消され、経絡がスムーズに流れ始めると、圧迫感や張りは自然と消えます。同時に、気持ちの落ち込みやイライラも和らぎます。東洋医学でいう「肝の巡りを良くし、気分を軽くする(疏肝解鬱)」とは、まさにこのことです。

 

ストレスと肝の関係

精神的なストレスや脂肪の蓄積が多いと、肝の経絡が詰まりやすくなります。そのため、春になると特に不調を感じやすくなるのです。これは、体が自然に変化する過程で起こる、ごく普通の反応です。

現代社会では、仕事や勉強、人間関係によるストレスが大きく、肝の経絡に最も影響を及ぼします。東洋医学では、肝は気と血の流れをコントロールすると考えられています。そのため、ストレスや怒り、不満といったネガティブな感情がたまると、それが「負のエネルギー」となり、肝の働きを妨げてしまいます。

感情は目に見えないエネルギー(気)であり、特に怒りやイライラは、肝が本来持っている「上昇し発散する力」と正反対の流れを生み出します。この逆方向のエネルギーが肝の経絡に影響を与えることで、本来スムーズに巡るはずの肝気が滞り、結果として血液の流れも悪くなります。

この状態が長く続くと、慢性的な血流の停滞(瘀血 おけつ)が起こり、やがて動脈硬化や高血圧、さらには腫瘍といった現代病を引き起こす原因になることもあります。肝の健康を保つことは、心身の健康を維持するためにとても重要なのです。

 

肝の気が滞ると、胃腸の調子も崩れる

怒りっぽい人のことを、中国では「脾気(ひき)が悪い」と表現し、日本では「頭に血がのぼる」と言います。言い方は違っても、どちらも東洋医学でいう「肝の経絡」に関係しています。怒ったときに生じる負のエネルギーは、肝の経絡に直接影響を与え、その働きを乱してしまうのです。

特に、怒りを内にため込むと、肝の気の流れが滞り(おけつ)、その影響が脾(消化をつかさどる臓器)や胃に及びます。東洋医学では、肝は「木」の性質を持ち、脾や胃は「土」の性質を持つとされ、木が土を抑える(肝木克脾土=肝が脾を克する相克関係)関係にあります。そのため、肝の気が乱れると、胃腸の消化機能も影響を受けやすくなるのです。

具体的には、食欲の低下、吐き気、胃の張りや痛み、下痢 などの症状が出やすくなります。胃腸の気の流れが乱れると、食べたものがうまく消化されず、体に必要な栄養や水分が正常に吸収されなくなります。さらに、肝の気の影響で、本来排出されるべきでないものまで体外に排出されてしまいます。

このように、怒りやストレスが食欲や消化機能に悪影響を与えるのは、肝と胃腸のつながりによるものです。中国で「脾気が悪い」と言うのも、日本で「怒ると胃が痛くなる」と感じるのも、根本的には同じ理由なのです。肝の気の流れが滞ると、結果的に胃腸の働きも乱れ、消化不良や体調不良につながるのです。

 

強い怒りは肝だけでなく胃も傷つける

激しく怒ると、肝の気と血の流れが一気に高まり、頭にまで達します。これはまさに日本語の「頭に血がのぼる」という表現そのものです。また、中国語の「怒髪衝冠(どはつしょうかん)」(怒りで髪が逆立つほどの状態)も、肝の気が爆発的に増大したときの様子を表しています。感情は単なる気分ではなく、実際にエネルギーとして体に影響を及ぼすのです。

特に激しい怒りは、肝を傷つけるだけでなく、脳の血管にも突然強い負担をかけます。血流が急激に増すことで血管に過度な圧力がかかり、最悪の場合は破裂する危険性もあります。これは非常に危険な状態です。

一時的に強く怒ると、気血の流れが一瞬だけ良くなることもあります。しかし、その代償として大量のエネルギーが消耗され、すぐに強い疲労感が襲ってきます。さらに、怒りによって発生した「熱」のエネルギーが心臓や肺に負担をかけ、喉の渇き、目の充血、口の渇き、鼻の違和感、皮膚の乾燥などを引き起こします。

また、肝の気の爆発的な発散は、胃や腸の働きを大きく乱します。激しく怒った後に胃の痛みや膨満感を感じたり、食欲が極端に減ったり、逆に暴飲暴食に走ってしまったりするのはこのためです。これは、肝のエネルギーが胃の働きを乱し、消化機能のバランスを崩してしまうからです。

胃の気が正常に下に降りずに停滞すると、食欲不振や吐き気を引き起こします。一方で、肝の発散する力が過剰になると、胃が過度に刺激され、暴飲暴食を引き起こすこともあります。これが、「怒るとドカ食いしてしまう」原因なのです。

 

春は肝のケアが大切

東洋医学では「春夏は陽気(エネルギー)を養う時期」とされています。肝は「木」の性質を持ち、温かい「陽」のエネルギーを司る臓器です。そのため、肝の気が冷えすぎず、また過剰に熱を持ちすぎず、穏やかでスムーズに流れる状態を保つことが、健康を維持する秘訣となります。

春に肝の働きを整えると、全身の気血の流れがスムーズになり、体が軽く感じられ、活力が湧いてきます。そのためには、感情のコントロールがとても大切です。さらに、食事の面でも肝の働きを助ける食材を取り入れるとよいでしょう。

具体的には、肝の気を巡らせてストレスを和らげる食材として、カリフラワー、セロリ、ほうれん草 などの緑の野菜、また豆類やもやしなどの芽ものが適しています。これらは、春に不足しがちな栄養を補い、肝の働きを整えるのに役立ちます。また、五味(甘味・酸味・辛味・苦味・塩味)をバランスよく摂ることも、肝の健康維持に効果的です。

カリフラワーは一見すると普通の野菜ですが、実は肝の健康をサポートする優れた力を持っています。そこで今回は、カリフラワーを使った養肝(ようかん)レシピをご紹介します。

 

カリフラワーの花蕾が持つ「巡りをよくする力」

カリフラワーは、無数の小さな花蕾(からい)でできています。この花蕾には、開いて広がる「巡りをよくする力」 があり、気血の流れをスムーズにし、経絡(けいらく)を整える働きがあります。そのため、血流を改善し、がんや生活習慣病の予防に役立つ と考えられています。

さらに、カリフラワーを切ると、その断面がまるで冠状動脈(心臓の血管) のように見えます。実際に、カリフラワーには血管をしなやかに保ち、心臓病の予防や改善をサポートする働きがあるとされています。これはまるで、私たちにその効能を示しているかのよう です。

また、カリフラワーの緑色は、東洋医学における「五行(ごぎょう)」では「木」に属します。木のエネルギーは肝と深い関係があり、肝の気を巡らせ、気血の流れを整える効果を持っています。そのため、春先の肝のケアに最適な食材なのです。肝のエネルギーがスムーズに巡ることで、身体全体の調子が整い、過度な熱を持たずに穏やかな状態を保つことができます。まさに、春にぴったりの「肝の妙薬」 と言えるでしょう。

さらに、カリフラワーにはほんのりとした辛味 が含まれています。辛味は五行では「金」に属し、「金」は肺のエネルギーと深い関係 があります。そのため、カリフラワーには肺を守り、熱を冷まして毒素を排出する効果 も期待できます。

特に、乾燥しやすい肺を潤し、炎症や感染症に対する抵抗力を高める 力があるため、免疫力の強化にもつながります。

 

カリフラワーの養生レシピ

1. 生姜と黒こしょうのカリフラワー炒め

特徴
このレシピは、気血の巡りを良くし、胃を温めて肝の働きを整える料理です。特に、冷え性や胃腸が弱い方(脾胃虚寒)におすすめです。

材料(2人分)

  • カリフラワー … 200グラム(小房に分ける)
  • 生姜 … 3枚(千切り)
  • 黒こしょう … 適量
  • オリーブオイル … 小さじ1
  • 塩 … 適量

作り方

  1. カリフラワーを洗い、小房に分ける。
  2. 沸騰したお湯で30秒ほど下茹でし、ザルにあげて水気を切る。
  3. フライパンにオリーブオイルを熱し、生姜を入れて香りが立つまで炒める。
  4. カリフラワーを加えて炒め、黒こしょうをふる。
  5. 塩で味を調え、全体をよく混ぜたら完成。

効能
✔ 肝の気を巡らせ、ストレスを和らげる
✔ 血行を促進し、冷えを改善
✔ 胃腸を温め、消化を助ける(特に胃の冷えや張りが気になる方に◎)
✔ 気血の滞りを解消し、しこりや腫れの予防に

寒い季節やストレスが溜まりやすいときにぴったりの一品です。

 

2. カリフラワーと海藻 豆腐の炒め物

特徴
このレシピは、体の余分な熱を取り、解毒・デトックス作用がある 料理です。特に、痰湿(たんしつ)体質(体内に余分な水分や老廃物が溜まりやすいタイプ)や、内熱がこもりやすい人 におすすめです。

材料(2人分)

  • カリフラワー … 200グラム(小房に分ける)
  • 海藻(昆布やワカメなど) … 100g(戻して食べやすい長さに切る)
  • 木綿豆腐 … 150グラム(ひと口大に切る)
  • 生姜 … 3枚(千切り)
  • 酢 … 小さじ1
  • オリーブオイル … 小さじ1
  • 塩 … 適量

作り方

  1. 海藻を水で戻し、適当な長さに切る。
  2. カリフラワーと豆腐を沸騰したお湯で30秒ほど下茹でし、水気を切る。
  3. フライパンにオリーブオイルを熱し、生姜を入れて香りが立つまで炒める。
  4. 海藻とカリフラワーを加え、軽く炒める。
  5. 豆腐を加え、酢と塩で味を調え、全体を優しく混ぜたら完成。

効能
✔ 体の熱を冷まし、デトックス効果(口の渇きやのぼせが気になる人に◎)
✔ 体内の老廃物を排出し、腫れやしこりの予防(甲状腺の腫れやリンパの詰まりが気になる人に◎)
✔ 肺を潤し、乾燥対策に◎(特に陰虚体質の人向け)

余分な熱を鎮めながら、体の巡りを整える一品。ストレスや疲れが溜まっているときにもおすすめです!

 

3. カリフラワーとイカの和風炒め

特徴
このレシピは、低脂肪・高タンパクで、体にこもった熱を冷まし、痰を取り除く 効果があります。さらに、肝を養い、血を補う 働きがあるため、貧血気味の方や気血不足の方 におすすめです。

材料(2人分)

  • カリフラワー … 150グラム(小房に分ける)
  • 玉ねぎ … 1/4個(薄切り)
  • イカ … 100グラム(皮をむき、輪切り)
  • にんにく … 小さじ1(みじん切り)
  • 醤油(和風) … 小さじ1
  • みりん(または日本酒) … 小さじ1
  • 塩 … 適量
  • 黒こしょう … 適量
  • オリーブオイル … 小さじ1
  • 白ごま … 適量(お好みで)

作り方

  1. カリフラワーを沸騰したお湯で30秒ほど下茹でし、水気を切る。
  2. イカも別の鍋で10秒ほどサッと湯通しし、水気を切る。
  3. フライパンにオリーブオイルを熱し、にんにくを炒めて香りを出す。
  4. 玉ねぎを加え、透き通るまで炒める。
  5. イカとカリフラワーを加え、強火で30秒ほど炒める。
  6. 醤油、みりん、塩、黒こしょうを加え、さらに10秒ほど炒める。
  7. 仕上げに白ごまをふりかけて完成。

効能
✔ 余分な熱を冷まし、痰を取り除く(咳や痰が気になる方に◎)
✔ 胃腸の働きを整え、消化を促進(消化不良の方に◎)
✔ 肝の血を補い、貧血や気血不足を改善(疲れやすい・顔色が悪い方に◎)

この3種類のカリフラワーレシピ は、それぞれ異なる健康効果を持ち、体質に合わせて選ぶことができます。ぜひ、日々の食事に取り入れて、体のバランスを整えましょう!
 

(翻訳編集 華山律)

白玉煕
文化面担当の編集者。中国の古典的な医療や漢方に深い見識があり、『黄帝内経』や『傷寒論』、『神農本草経』などの古文書を研究している。人体は小さな宇宙であるという中国古来の理論に基づき、漢方の奥深さをわかりやすく伝えている。