英国のスナク首相。2023年3月1日撮影 (Dan Kitwood/Getty Images)

英政権、孔子学院の閉鎖を撤回…新法により「存続不可能」との指摘も

英国のスナク政権は17日、公約に掲げたすべての孔子学院を閉鎖する方針を撤回した。政権は中国共産党の影響下にある孔子学院への「あらゆる政府系資金の提供は排除する」が、閉鎖は「不釣り合い」だとした。

元保守党党首などからは批判の声があがっている。いっぽう中国関係の研究者は最近成立した新法により「いずれせよ孔子学院は終わりを告げる可能性が高い」と指摘している。

スナク氏は昨年7月の党首選挙で、中国共産党を「英国と世界の安全保障上の今世紀最大の脅威」と呼び、国内に30ある孔子学院をすべて閉鎖する宣言していた。

官邸報道官は声明で「孔子学院を含む高等教育分野における海外からの干渉を注視し、学術界が直面するリスクを定期的に評価している」が、撤回は過剰な措置になると断言。孔子学院に対して「透明性を保ち、法を順守し、言論の自由などの価値観にコミットすうよう求める」と述べた。

孔子学院は、中国語や文化を促進する学習機関として設立されたが、近年は言論検閲や共産主義思想の推進など中国共産党の国際的な影響力拡大を手伝う組織として警戒され、欧米では閉鎖が相次いでいる。

政府の発表を受けて、元保守党党首のイアン・ダンカン・スミス氏はトークTVでスナク氏の方針転換に「失望」したと発言。「孔子学院は言語教育とは無関係で中国人学生や香港人学生をスパイする機関だ」と指摘した。

また政府の対中政策を批判し、英国はほかのファイブ・アイズ諸国ほど中国の脅威を真剣に受け止めていない、と述べた。

スナク氏は昨年11月、英中関係について「黄金時代は終わった」と述べ、権威主義を強める中国に厳しい姿勢で臨む考えを示した。一方で中国が世界情勢において重要な役割を果たしているとし「冷戦時代の手段は取らない」としている。

新法で「孔子学院終了」

英国では先週、高等教育(言論の自由)法が成立した。この新法により「孔子学院は終わりを告げる」可能性が高いと、研究者のサム・ダニング氏は指摘する。

新法は、大学や学生組合が言論の自由や学問の自由を守る法的義務を負うほか、高等教育の監督官庁である学生局は、大学への海外からの資金提供を監視し、言論の自由や学問の自由を害しているかどうかを検討することが義務付けられる。

ダニング氏は「大学監督機関は、違法な孔子学院のプログラムに対して行動を起こすことが義務付けられたため、同院の存続は難しくなるだろう」とエポックタイムズに語った。いっぽうでスナク政権の判断は「学問の自由を享受できることを望むすべての人を失望させた」と付け加えた。

中国の言語や文化の普及を目的に世界各地に設置された孔子学院だが、近年では中国共産党のプロパガンダ機関であるとの厳しい目が向けられている。

ダニング氏が共著者として昨年発表した英シンクタンク「ヘンリー・ジャクソン・ソサエティ」の報告書は英国の大学に設置されている大半の孔子学院が「言語と文化」教育から逸脱し、中国共産党の統一戦線工作部と協力する英国の組織と連携してプロパガンダ拡散に従事していると警鐘を鳴らした。

いっぽうで、米国やカナダやフランスなどでの閉鎖を受けて、孔子学院は名称を変更して生き残りを図っている。米国の保守派団体「全米学識者協会(NAS)」の報告書は、孔子学院を運営する中国国家漢弁は別プログラムを立ち上げ、米大学との提携を再開していると指摘した。

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