中国から企業が次々と撤退し、海外へと移転する流れの中で、タイ最大の工業地域開発会社であるWHAグループのCEOは、6月21日に、グループが2年連続、土地売却の新記録を立てる可能性があると発表した(Photo by SAM YEH/AFP via Getty Images)

中国から離脱する企業たち タイやベトナムに工場を建設

中国から企業が次々と撤退し、海外へと移転する流れの中で、タイ最大の工業地域開発会社であるWHAグループのCEOは、6月21日に、グループが2年連続、土地売却の新記録を立てる可能性があると発表した。

米中貿易の緊張が高まり、さらに北京が昨年12月に突如として極端なゼロコロナ政策を中止した中で、主に中国企業のタイなどへの投資が急増した。これらの企業は中国に代わる製造地を模索している。

CEOのジャリポン・ジャルコンサクル女史はロイターに対し、「これらの要因が企業に影響を与え、中国への投資を行っていた企業が離れるきっかけとなったようだ」と述べた。

彼女によれば、WHAグループはタイとベトナムで数十の工業地域を運営しており、パンデミックが緩和してからは、中国企業からの問い合わせや購入量が急増し、その年間土地売却量はパンデミック前の2倍に達した。

ジャルコンサクル女史は、2023年にはWHAグループがタイとベトナムで2000ライ(320ヘクタール)を超える土地を売却する見込みがあり、それは年間目標と2022年の1899ライの実績を超えると語った。

パンデミック以降、WHAグループのタイでの工業用地売却の約半分は中国の投資家によって占められ、また中国の投資家はWHAグループのベトナムでの売却の約80%を占めているとジャルコンサクル女史は述べた。

タイの投資委員会のデータによれば、今年の第一四半期には、中国企業によるタイへの投資案件が昨年同期比で87%増加し、2500億バーツ(約1兆円)に達した。

昨年12月以降、中国からの投資がベトナムにも流れ始め、その中には中国の大手製造業者に製品を提供する多くの小規模の企業が含まれている。

「中国の自動車メーカーや台湾の電子企業からの需要が増えていることから、WHAグループは今後数年間でその工業用地のポートフォリオを約30%拡大し、10万ライに達することを目指している」と彼女は語った。

例えば、タイ東部のWHAの工業地域では、中国の電気自動車メーカーBYD Coが600ライの土地で新工場を建設中だ。

また、WHAのベトナムの顧客には、アップルのサプライヤーである中国の電子企業ゴアテック(Goertek Inc)や台湾のフォックスコン(Foxconn)などが含まれている。タイの地方政府のウェブサイトによれば、ゴアテックはフォックスコンと共同で新工場を建設中だ。

ブルームバーグは今年1月に、中国が過去3年間にわたりゼロコロナ政策を続けたことで地政学的な緊張が増大していると報じた。世界的な大企業であるアップルなどは中国からの撤退を加速させている。2022年4月から12月にかけて、アップルはインドの工場から25億ドル(約3500億円)以上のiPhoneを輸出し、これは前年度の総額の約2倍である。

インドの工場はiPhoneの生産量の一部に過ぎないものの、増え続ける輸出は、インドを世界の工場にするというモディ首相の計画にとってよい兆候だ。

 

関連記事
中国経済に新たな危険な兆候が見られている。貸付と借入の減少が続いており、国の深刻な経済・金融問題を浮き彫りにしている。中央銀行の引き下げによって、政策開始時よりも実質金利が高くなってしまった。
中国の5月の「ゴールデンウィーク」期間中、旅行者数は過去最多となったものの、1人当たりの消費額は減少傾向だった […]
中国の四大銀行の営業収入と純利益が急速に減少しており、経済活動の停滞や不動産市場の低迷など、さまざまな要因がその背後にあると専門家は分析する。
上海のオフィスビル市場は今、20%を超える空室率という過去最高の記録を更新した。不動産コンサルティング会社のCBRE Group Inc.の統計によると、上海の甲級(高級)オフィスビルの空室率は20.9%で、前四半期から1.1ポイント、前年同期からは2.8ポイント増加している。専門家は経済の低迷と賃料の下落が続く中、上海の経済回復の困難さを警告している。
地政学的な緊張を避けるため、アップルをなどアメリカ企業の台湾ファウンドリメーカーは、中国本土から生産拠点を移転させている。