中国が「戦狼外交」を続け、米中関係や中印関係を改善しない場合、中国はインド太平洋地域で孤立する可能性がある。そのため、中国の動向とそれに対する米印の対応は、今後の国際関係に大きな影響を与えると予想される(Photo by Anna Moneymaker/Getty Images)

モディ首相の米訪問で米中印露関係はどうなったのか

2023年6月22日、バイデン米大統領は、インドのナレンドラ・モディ首相を迎え、米中印露の新たな四か国関係におけるインドの役割を強調した。バイデン大統領とモディ首相は、この21世紀における米印関係の重要性を共有している。

米印関係強化

モディ首相は2014年にインド首相に就任して以来、米国を5度訪れてきたが、今回の訪米は初めての国事訪問である。この訪問は、インドと米国が「戦略技術パートナーシップ」を強化し、宇宙、クリーンエネルギー、半導体、AIなどの新興科学技術の協力ロードマップを策定したことを示している。

モディ首相の訪米では、米国とインドが3つの防衛協力プロジェクトを進め、GE414エンジンの共同製造やインドが無人攻撃機MQ-9 Reaperの購入の他、米軍艦艇がインドの造船所で修理を受けることを認めた点などが含まれている。

また、「印米防衛加速エコシステム」の設立により、インドの新興の民間防衛産業と米国の防衛部門の統合が進んだ。

更に、米国はモディ首相が2015年に提唱した「インド太平洋海洋イニシアチブ」に参加することを決定した。これにより、米国とインドは安全で信頼性のある海洋を共同で推進するための共同行動と共有の脅威評価計画を策定する。東アフリカとインド洋沿岸の国々との協力も見込まれている。

最後に、両国間の友好関係を示す象徴として、米国とインドは相互に領事館を増設することを決定した。

米印関係の進展とその影響

米国へのモディ首相の訪問が米印関係を大きく前進させたことは、米中印露の四か国関係にも重大な影響を及ぼした。

米印の軍事協力の強化は、インドがロシア製武器への依存を減らすだけでなく、中国に対する牽制となるインドの軍事力強化を意味する。この変化は、米中印露の国際関係に大きなインパクトを与える。

米国はインドの軍事的弱点を補うことで、インドの戦略的役割を最大限に活用しようとしている。これは現実的な意義を持つだけでなく、未来の国際関係にも影響を及ぼすだろうと考えられている。

また、インドは中露印の三国関係を通じて恩恵を受ける立場にある。米国は、インドの国家発展における共通点を見つけ、経済や科学技術の発展を強く推進することで、インドを支援する。

この支援により、インドは米露間で中立を保つことが可能となる一方で、米中間では米国を選ぶという選択をするだろうと考えられている。

更に、米国とインドは「戦略的科学技術パートナーシップ」を結んでいる。2022年5月のサミットでは、「米印重要・新興技術イニシアチブ」(iCET)が提案された。この提案は、中国の技術的台頭に対抗するためのものと見られている。

経済的には、インドのGDPはすでに世界で5番目に位置しているが、その規模は中国の約1/5に過ぎない。そのため、インドの経済発展は米国の戦略的期待の一部となっている。

以上の要素から、米印の連携はインドが国際的に有利な地位にあることを示している。米中印露の四国関係においては、ロシアはウクライナとの戦争により深く困難な状況にあり、影響力を行使することが難しい状況にある。しかし、米中間の対立が激化すれば、米国は強力にインドを支持するだろう。

このような状況の中、中国が「戦狼外交」を続け、米中関係や中印関係を改善しない場合、中国はインド太平洋地域で孤立する可能性がある。そのため、中国の動向とそれに対する米印の対応は、今後の国際関係に大きな影響を与えると予想される。

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