あるネットユーザーは「デフレに陥るリスクがあると言わざるを得ない。住民はお金を使いたがらない、というより、お金を使うことに不安を感じている」と述べている(TEH ENG KOON/AFP/Getty Images)

6月CPI、17省で前年比マイナス 中国経済失速か

中国経済の回復力は弱い。7月10日、中国共産党(中共)国家統計局は31省の2023年6月消費者物価指数CPI)を発表した。 その中で、17省のCPIが前年同月比で下落し、4省が3か月連続で下落したため、ネット上で激しい議論が巻き起こった。

国家統計局のデータによると、6月の全国CPIは前年同月比0.2%下落し、前月と同じ下落率だった。前年同月比では0%と、前月の0.2%から横ばいとなった。

ウェブサイト「中新経緯」は7月12日、17省のCPIが前年同月比が低下し、吉林省、山西省、貴州省、河南省の4省のCPIが3か月連続で低下したと報じた。CPIの伸び率は引き続き市場予想を下回り、2021年3月以来の過去最低を記録した。

同メディアによると、31省の6月のCPI前年同月比は「下落が多く、上昇が少ない」傾向にある。具体的に、前年同月比で上昇したのは12の省で、前月より10省減った。逆に、前年同月比で下落したのは17の省で、前月より8省増えた。2省は横ばいだった。

上昇率から見ると、上昇幅が拡大したのはわずか3省だけ(上海は下落から上昇に転じた)で、一方で前月は16省だった。下落幅が拡大したのは24の省で、前月は13だった。

また、河北省、内モンゴル自治区、陝西省、甘粛省、江蘇省、寧夏回族自治区、北京市、黒龍江省、上海市、安徽省、山東省、新疆ウイグル自治区の12省は、全国平均よりも上昇率が高い。

 

中国民生銀行のチーフエコノミスト温彬氏の分析では、高い気温の影響により、野菜の供給がダメージを受け、食肉の需要が減少するため、高い気温が食品価格を押し上げる効果は比較的限定的と予想される。

また非食品、オフラインサービスの需要と供給は同時に減少するが、一部のオンラインサービスに対する需要と供給に矛盾があるかもしれない。宅配便、持ち帰りなどサービスの価格は増加に直面している。

高い気温はCPIに若干の下支え効果をもたらすと予想されるが、その効果は限定的で、7月のCPIはマイナスになる可能性が高い。

東方金誠国際信用格付け有限公司の首席マクロアナリスト王青氏も、7月のCPIは前年同月比 マイナス0.3%程度になる可能性が高いと見ている。

これに関して、ネットユーザーも意見を表明した。

中国最大のQ&Aサイト知乎のネットユーザーは、「各省の具体的なCPIの状況を見て、消費力は確かに比較的低いと感じる。すべて1以下、半分以上の省のCPIは0に近い、または0未満、本質的な理由は、人々の財布の中が薄くなり、消費を押さえているからだ。本当の問題はお金がないということだ。消費が回復しないと、もちろんCPIも下がる。これらの要素が重なり合うと、みんな消費を減らし、お金を貯めることにするだろう」と分析している。

別のネットユーザーは、「中国のCPIは今年3月から4か月連続で1を下回っている。 省、市の半分はCPIがマイナスだ。基本的に消費低迷、需要減退が経済活力の低下、所得の減少、雇用の困難につながっている。

デフレに陥るリスクがあると言わざるを得ない。住民はお金を使いたがらない、というより、お金を使うことに不安を感じている。それが総需要の減少、消費の落ち込みにつながっている。

なぜ人々はお金を使うことに不安を感じるのか? パンデミックの影響で、危機が訪れたら自分の身は自分で守るしかないと多くの人が考えている。人々の将来に対する自信はますます弱くなっている。将来何が起こるかわからないから、できる限り支出を減らすしかない」

同氏はまた、「もう1つの問題は、保護の欠如である。国民の生活保護や福祉のレベルが低い。都市部での医療保護、農村部での高齢者老後保障、若年層の雇用・住宅保障はほとんどない。このような状況下では、消費を刺激することは状況を改善するのに全然寄与できない」と指摘した。

微博(ウェイボー)ユーザー蔵緑於湖さんは、「景気は回復し、物価は下がり、生活はどんどん良くなっている。私の周りの人々が仕事に行きたがらないのも無理はない」と揶揄した。

別のネットユーザーは

「最近、私の周りには失業者が多い」

「すべての責任は米国側にある」

「毎日財経ニュースは敢えて記事を投稿するが、コメント欄を開放する勇気はないね。すべての官製メディアは同じことをしており、自分も信じていない言葉で他人を騙そうとしている」

「コメント欄はブロックされている」

などと風刺している。

 

 

関連記事
中国経済に新たな危険な兆候が見られている。貸付と借入の減少が続いており、国の深刻な経済・金融問題を浮き彫りにしている。中央銀行の引き下げによって、政策開始時よりも実質金利が高くなってしまった。
中国の5月の「ゴールデンウィーク」期間中、旅行者数は過去最多となったものの、1人当たりの消費額は減少傾向だった […]
中国の四大銀行の営業収入と純利益が急速に減少しており、経済活動の停滞や不動産市場の低迷など、さまざまな要因がその背後にあると専門家は分析する。
上海のオフィスビル市場は今、20%を超える空室率という過去最高の記録を更新した。不動産コンサルティング会社のCBRE Group Inc.の統計によると、上海の甲級(高級)オフィスビルの空室率は20.9%で、前四半期から1.1ポイント、前年同期からは2.8ポイント増加している。専門家は経済の低迷と賃料の下落が続く中、上海の経済回復の困難さを警告している。
地政学的な緊張を避けるため、アップルをなどアメリカ企業の台湾ファウンドリメーカーは、中国本土から生産拠点を移転させている。