子供を育てる大切ないくつかの事=体を鍛えることで心も磨く。

日本復古=武道復古、菊野克紀氏が語る

総合格闘家、菊野克紀

菊野克紀氏は、武道家だ。柔道から空手を経て、総合格闘技でトップレベルで活躍した人物である。DEEP、DREAMやUFCJAPANなどの総合格闘技で、その世代の格闘技ファンなら彼を知らない者はいない。また「巌流島(異種格闘技大会)」では数々の名勝負で知られている。

世界が大きな変化の兆しを示し始めているなかで、エポックタイムズは、日本復古には武道復古が必ず関わると見て、武道家にインタビューするチャンスを探し求めていた。武道家としての実績のみならず普段の言動、及びその活動を見て、次の世代を考えて人の教育を行っている人はいないか? 縁の導きにより、幸運にも彼に出会うことができた。それが、菊野克紀氏だ。

 

彼は今、3つの柱で活動している。

① 誰でも何歳からでも強くなれる「誰ツヨDOJOy」という武術道場。中学生から参加可能だ。

② 「こどもヒーロー空手教室」は小学生以下。今回、見学させていただいた。

③ 「敬天愛人」は、武道、武術、格闘技を愛する人が集まり、交流して高め合う。格闘道イベントも開催。

今年、2月22日に行われたインタビューである。

 

これからどんな日本人が育ってくるのか? 

なぜ強さなのか? なぜ武道なのか?

聞き手:まず最初にお聞きしたいのは、「こどもヒーロー空手教室」を開いて子供たちに教えておられます。なおかつ親御さんたちにも会われていると思いますが、親御さんたちは何を求めて、大切な子供たちを菊野さんに預けているのか? そこが知りたいです。

菊野さん: 子供たちの心と体を鍛えることを求めていらっしゃって、 礼儀のことを言われる方は多いですね。 

聞き手:親御さんは、自分の子供たちにどのようになってほしいと感じておられますか?

菊野さん:いじめない、いじめられない、たくましさ。へこたれないたくましさ。諦めないたくましさ。 そういう心と体の強さを求めていらっしゃいますね。 

聞き手:実際にいじめられている子供が教室に来たという例はありますか? 

菊野:そうですね。保護者の方は子供がいじめられていると明言はされなかったですが、 人間関係がうまくいっていない、自信を持てない、 コミュニケーションがうまく取れないということで来た子供はいますね。 

聞き手:その子供には、何か特別なレッスンはありますか?

菊野さん:その子供が特別な状況に陥ったとき、例えば、練習に来れなくなったとか、学校に行けなくなったとかで、保護者からご相談頂いた時は特別に対応したりしますが、基本的にはみんなと同じようにします。 みんなと同じことを伝えて、たくましくなってもらえるように関わっています。 

聞き手:子供たちは変わっていきますか? 

菊野さん:本当に少しずつですが、確実に変わっていきますね。 特に変わるのが、年に3回の昇級審査です。 課題をクリアして昇級したら帯の色が変わります。子供たちはそこに価値を感じているようで凄く頑張ってくれますし、すごく成長します。

子供たちも成長したい、認められたいという気持ちをしっかり持っています。

うちの昇級審査はちょっと特別で、年に3回、3月、7月、11月が昇級審査月で1か月間毎日が昇級審査です。ずっとその子供の成長を見て審査します。1日の出来た出来ないではなく、一番重要視しているのは稽古に向かう姿勢や、それまでのあり方ですね。ちゃんと大きな声を出せているかとか、ちゃんと人の話を聞けているかとか、正座ができているかとか、他人に優しくできているかとか、そういうのをしっかり見て審査します。

今、その1か月前の2月ですので審査に向けて稽古中です。子供たちにとって凄く大切な時期なのです。例えば、話を聞けない子供は昇級できない、礼儀が出来ない子供は昇級できない、という中で緊張感を持って、いい稽古を積める時期です。最終的に合格できたら、僕は「できる」という自信とともに帯の色が変わります。 成長が帯の色として形になるのはすごくいいですよね。それでみんなすごく成長してきましたから。 

聞き手:親御さんも非常に喜ばれるんでしょうね。 

菊野さん:すごく喜ばれますね。子供たちが明らかに変わっていく姿も嬉しい。 子供たちが喜ぶ姿ですよね。「できた」っていう時の誇らしそうな顔はたまらなく可愛くてかっこいいです。

(編者:インタビューの後に、幼児向けの練習を見学させていただき、実際に子供が目の前で変わっていく姿を目撃)

当然受からない子供もいますが、その時の悔しさも必要な過程だと思います。 痛みを知らないと成長できないので。

聞き手: その、落ちた子供というのはどういう風にフォローされるのですか? 

菊野さん:理由をちゃんと伝えます。今回は稽古の時に集中できなかったね。とか、立ち方が出来てなかったとか。 修正すべき在り方や技術をちゃんと伝え、次は頑張ろう!と伝えますね。

親たちが子供に望むこと。

聞き手:みんな、先生の言うことは聞きますか? 

菊野さん:いろんな子供がいますが、 うちには「こどもヒーロー訓」という、いわゆる道場訓があります。

 一つ、大きな声を出します。

 二つ、メリハリをつけます。

 三つ、話している人を見ます。

 四つ、礼儀を大切にします。

 五つ、人に優しくします。

これが憲法みたいなもので、指導者もそれを守るし、それをもとに子供たちに指導します。それができない子供は、昇級できない。もっと言えばそれを守ろうとしない子供は、稽古に参加できないというスタンスです。(編者:これも目撃した)

「こどもヒーロー空手教室」は空手の稽古を通して「こどもヒーロー訓」を身に着ける場。

幼い子供は仕方ないですが、小学生でそれを守ることが嫌という子供は今のところいないです。生徒達も、この「こどもヒーロー訓」が自分たちのためにあるものだと感じてくれているのだと思います。食らいついてきますよ。僕らもちゃんと信頼関係を作ってから厳しく対応します。

編者:インタビューから離れて、道場を見学させて頂いた時に実際に起こったこと。白帯でまだ幼稚園生だろうと思われる子供が、しっかり前足を踏み出せずにふらふらしていると矯正され、泣き出してしまった。先生が両手でひっぱり立たせようとしても、体をぐったりさせ泣き止まない。何度か試したが泣き続け、床に座り込んでしまった。指導員はその子供を抱き上げ、母親の側に連れて行き、「やる気になるまで、ここで見学ね」と言って、他の子供と練習を続ける。

その子供は半泣き状態。母親もカバーしようとはしない(これが偉いと思った)やがて泣き止むと、他の子供の練習をしっかり見ている。2段蹴りの稽古になった途端、目の色が変わって立ち上がり、ゆっくり仲間のところに戻っていく。すこし笑顔も見せた。先生はそれを見逃さず彼の手を引いて仲間の真ん中に彼を立たせた。

二段蹴りの練習を始めた彼の顔は満面の笑顔なのだ。

傍から見てもその笑顔は素晴らしかった。仲間に戻れたことと練習できる喜びにあふれていた。その姿を見つめる母親の顔も嬉しさと幸せの微笑みがこぼれた。親として、我が子が転んだ時に自分で立ち上がれる人間になってほしいというのは切なる願いではないだろうか?

 

総合格闘家、菊野の子供時代からの歴史

聞き手:菊野さんの子供の頃はどうでしたか? やっぱりそういう道場に通われたのですか? 

菊野さん:僕は小学校まで水泳スポーツ少年団に通っていました。でも友達とプロレス見て、プロレスごっこぐらいはやってましたよ。あとジャッキーチェンごっこも。道場に通ったわけではなく、中学から部活で柔道部に入りました。

指導者として、Katsunori Kikuno 公式WEBサイトより

聞き手:そうですか。その当時と比較して、何かを習うということにおいて今の若い人達と、自分の時代とギャップみたいなものを感じられますか?

今も昔も、子供は子供!

菊野さん:どうですかね? 僕の目の届く範囲で言えば、問題は感じていません。昔の子供も今の子供も同じだと感じています。昔の子供のことは、僕も子供だったのでわからないです。あと地域性もあるかもしれないですね。僕のみる範囲では、「最近の若い者は」みたいなものは感じないですね。いわゆるモンスターペアレントみたいなものも。色々な親御さんがいますが、あまりにも常識外れな人はいませんね。

生徒たちもちゃんと言えば分かるし、成長してくれています。そうですね。僕はそこに関しては むしろ「こいつらすげえな」と思ってます。

聞き手:中学に入ってから柔道ですか? 

 

臆病だった少年時代

菊野:そうです。高校まで6年間やりました。小学時代、僕は体は強かったんですけど、心が臆病で、強がったり、過剰にやり返したりするので、人間関係がうまくいかず昼休みを1人で図書館で過ごすような孤独な時期がありました。

聞き手:何が問題だったのですか?

菊野さん:自分の思い通りにならないことがあると、我慢できなかったり、1発打たれたら2発返したりとか。なんか弱い犬ほどよく吠えるっていうような感じだったと思いますね。だから小学生時代は孤独な記憶があります。

聞き手: 図書室では、何をしていたんですか? 

菊野さん:本を読むしかないですよ。ウォーリーを探せとかわかりますか? ページのどこかにウォーリーという人が隠れていて、それを見つけるというゲームっぽいやつですね。

あと漫画日本の歴史くらいは読んだかな。読書はあんまり得意じゃないんですよ。そういう孤独な思い出があって。僕、漫画がすごく好きなんですけど、僕の時代ではドラゴンボールとか、 やっぱり孫悟空みたいに強くて優しくて、かっこよくて、人から愛される、そういう存在に憧れていました。全然違う僕がいて……すごくそこが苦しい。だから……強くなりたくて中学校から柔道部に入ったんですね。 強くなりたかった。心が弱かった裏返しですね。 

 

自信が付くと、人に優しくなれた

聞き手:その6年間の柔道を通じて変わったことは?

菊野さん:自信がついたんだと思います。変わりましたね。 自信がつくと、 人に優しくなれるのですよ。でも何でもそうですよね。お金がないとケチケチしたりイライラしたり。いざとなったら何とかなるという自信があったら大らかでいられるのですね。

聞き手:孤独だった人が柔道を始めて孤独じゃなくなった。 孤独から強くなることで、人生を楽しめる生き方を見つけた?

菊野さん:はい。

聞き手:仲間ができたってことですか? 

菊野さん:そうですね。コミュニケーションがうまく取れるようになって、 友達が増えて毎日が楽しくなったっていう。 僕にとって強くなるってことは、「人生が楽しくなる」「幸せになる」こととイコールになりました。 だから未だに続けています。他人にもそういう経験をシェアしたいという思いで道場を主宰していますが、強くなっていくと日々見える景色が変わっていきます。

 

他人は変えられない、だからまずは自分を変えろ!

聞き手:景色が変わっていきますか?

菊野さん:他者は変えられないですが、自分が変われば見える景色が変わってきます。

聞き手: それで6年間の柔道の後に、今度は極真空手でしたね。

菊野さん:そうですね。高校3年生の時に、僕、進学校だったのでみんな受験に向けて頑張るのですが、僕の中ではやりたい職業とか、行きたい学校っていうのが見つけられなくて。 どうしようって悩んでいた時に、中学時代からの親友が二人いるんですけど、でも悪友なんですが(笑い) この2人が「コンビを組んでお笑い芸人になってビッグになる!」って言い出して、びっくりして……。

一番身近な親友二人が目をキラキラさせて、夢を語るわけですよ。 僕は夢が見つからなくて、その時柔道もインターハイ予選で負けた直後だったので、なんかすごく自分に自信がない時で。そんな時に親友二人が夢を語ってきたことに対し、なぜがものすごく悔しくてね。

その時、本当はたった5分くらいだったと思うのですが、 すごく悩んで、走馬灯のようにそれまでの人生を振り返って、悩んだ末に辿り着いたのが、「強くなりたい!」だったのでその場で『俺は格闘家になる』って宣言しました。 

聞き手:その親友お二人は、もうすでにデビューされているんですか? 

菊野さん:1人は吉本に行って、その後、今はYouTuberとして、頑張っていますね。もう1人はビジネスの世界で社長として頑張っています。

僕の中には頑張りたいこと、なりたいものが、ドラゴンボールの孫悟空みたいに「強くなりたい」しかなかったんですよ。 僕にとって強くなるは、イコール幸せになるですからね。PRIDE(総合格闘技の火つけ役)ってご存知ですか? 当時60億分の1を掲げ世界最強を決める舞台としてテレビでガンガンやっていて、まさに強さの象徴だったので「じゃあ俺これ目指す」みたいな感じでした。

空手バカ一代とか、キャプテン翼とか、漫画の力は偉大です。

聞き手:それで、その極真空手はどこの道場だったのですか?

菊野さん:僕は高校3年生の時、格闘家を目指した時は鹿児島にいたのです。その鹿児島でPRIDEを目指す環境、総合格闘技を高いレベルでやれるところはなかったので、自分に言い訳をしたくないので東京で一番いい場所に行こうと思ったんです。けれど金がないわけですよ。 両親はもちろん格闘家なんて大反対でしたから自分でお金作らなければいけなかったので、せっかくだからきついことやってみようかなと思って土木作業員のバイトを始めました。土木作業員しながら強くなれるところはないかと探したら、家の近くに極真空手の道場がありました。そうしたらたまたまそこに世界チャンピオンがいて。

本当に偶然に、木山仁さん(第8回オープントーナメント全世界空手道選手権大会で優勝)という世界チャンピオンがいて、 えーって、鹿児島にも世界チャンピオンがいると驚きました。

ところが、土木作業員をやってみて思ったのは、お金を稼ぐのは大変だということ。 体はヘトヘトになって時間も奪われて、練習に時間を割けないんですよ。 東京に行ってもバイトに追われたら意味がないなと。

でも、鹿児島で親に食と住を甘えれば、世界チャンピオンがいる環境で練習時間に全てを捧げられるので、これはチャンスだと思いました。1年間は土木作業員でお金を貯めて、2年目からは仕事を辞めて極真空手の内弟子(職員)になりました。

聞き手:内弟子になられて、1日どのくらい練習されていたのですか? 

菊野さん:内弟子の練習は午前中の3時間ぐらい、 昼からは道場の仕事があります。事務仕事とか。夕方4時から5時ぐらいから子供の指導が始まります。 夜は大人の指導があるので一日中空手に関わっていました。

大変でしたよ、本当に。 先輩後輩もね、厳しいんでね。鍛えられました、本当に。

高校生までは結構ぬるま湯だったので。極真でビシッと締められて、それが良かったと思います。若いうちに得るべき財産ですね。

当時、極真空手も強さの象徴でしたし鹿児島支部には世界チャンピオンがいたので人材が集まり、良い稽古をさせて頂きました。

木山先輩と僕の間にもう一人先輩がいて、その人がなかなかのジャイアンで……その上に強いんです。その先輩と試合しても負けるんですね。 すっごく悔しくて。 プライベートでも、試合でもやられて……。存在を否定される感じです。地獄でした……。この人を超えないと、僕は何にもなれないと思いました。

 

目の前の壁を本気で超える

 僕は、総合格闘技が目標だったから、本当はすぐに東京に行くつもりだったんですけどね 。 この人に勝つまでは、ってことで結局5年かかりました。

1回負けて、次こそは絶対に勝つとめちゃくちゃ練習して臨んだけど2回目も負けて、3回目は絶対に自分の方が頑張っている自信があったし、その先輩は怪我もしていたので絶対に勝てると思ってもまた負けた……。心が張り裂けそうで試合場で叫んで、控室で吐きました。

それでも前に進むしかなくて頑張り続けて、4回目で初めて判定勝ち、もう一息と臨んだ5回目で一本勝ちをして卒業させてもらうことにしました。

何が変わったのか分からないです。分からないですけど、やっぱり稽古や経験の積み重ねしかないんですよね。 何かっていうよりは、本当に積み重ねだったと思います。 

聞き手:その時に自分の内側でものの考え方が変わったとかはなかったのですか。

 

相手を冷静に見つめなおす、否定を捨てて、そして全てを認める!

菊野さん:その先輩には負の感情を持って挑んでいました。四六時中やられていましたからね。でも3回目に負けた時に認めちゃったところがありました。「この人すげえな」って。その負けた試合が、準決勝だったのですが思わず決勝戦はその先輩を必死に応援してましたからね。

もしかしたらその先輩を認めたことによって勝ち目が出てきたのかもしれません。

夢に向かって総合格闘技界へ

Katsunori Kikuno 公式WEBサイトより

僕がその5回目でようやく一本勝ちして、極真空手を卒業させて頂くのが23歳でした。総合格闘技をするための一番いい環境に行こうってことで、東京に上京して、 高阪剛さん(日本の元男性総合格闘家、プロレスラー、マウントポジションを取られた状態から脱出する技「TKシザース」の開発者として知られる)って分かりますか? 

世界のTK高阪剛さん。UFCでも活躍されたり、PRIDE(プライド)でも活躍されていました。今よくRIZIN(ライジン)の解説をされている方なんですね。 

その方のジムに見学に行った時に、例えば当時であれば吉田秀彦さんとか須藤元気さんとか、そういう凄い選手たちが集まって練習していたんですよ。ここなら強くなれると思って入会して、練習に励みました。 

最初アマチュア大会から出て、結果を出してプロの試合に出るようになって、DEEP(日本の総合格闘技団体)っていうところを僕は主戦場にしてたのですが、7連勝してチャンピオンになって、 DREAM(日本の総合格闘技団体)に出ました。僕の夢はPRIDE(日本の総合格闘技団体)に出ることだったので、PRIDEがDREAMとして生まれ変わったから、僕が高校三年生(17歳)のときに描いた夢は10年後の27歳の時に叶いました。

でも自分の中では限界を感じていました。僕は身体能力が高いわけでも、運動神経が良いわけでも、まあ普通の人よりは多少良いかもしれませんが。世界最高レベルの選手達と戦うには、野球で言えばメジャーリーグにあたる総合格闘技世界最高峰のUFCのチャンピオンクラスと戦うには足りないものがいっぱいありました。このままだと上を目指せないと思ったんです。

 

総合格闘技の壁を超えさせるもの=武術復古。

その中で僕は武術というものに希望を求めました。いろんな武術を研究し探し求めて、ご縁を頂いたのが沖縄拳法空手でした。これなら僕も世界を目指せる、自分に希望を持てると思って入門しました。

聞き手:なるほど。その限界を感じていたときというのは、当時のトップスター達と自分の能力を比較してみて、やばいんじゃないかと?

菊野さん:国内の練習仲間に対してでもパワーで負けたり、スピードで負けたり、反射神経で負けたりするわけですよ。 それらが全部優れているやつらがあそこにいるわけです。総合格闘技の選手は大体ボクシング、レスリング、ブラジリアン柔術を練習するのですが、つまり、彼らと同じことをやっても勝てるイメージがわかない。イメージがわかないことは実現しない。そうなると、楽しくないじゃないですか。希望を持てないじゃないですか。

だから僕は違うことをやろうと思って、希望を持てるものを探した結果が武術だったというわけです。僕なりの生存戦略でした。

聞き手:沖縄の空手に違うものを見たとおっしゃっていたけど、 それは一体何なのでしょうか?

 

西洋の力技ではないもの

菊野さん:全てですね。例えば威力の出し方。 それが違うわけです。 地面を蹴って腰をひねってという考え方ではない。 威力の出し方の原理原則が違うということですね。

聞き手:YouTubeで見ていると、そういうことをおっしゃっていましたよね。 腰ひねって踏ん張って打つのではなくて、 自分の体重をどうにかするということですか? 

菊野さん:そうです。 一般的なパンチは足し算で打つんですね。地面を蹴る力、腰をひねる力、腕の力と重さが足されて威力になっていくんですけど、武術は引き算なんです。いかに重さや動きをロスなく伝えられるか。そのために余計なことはしないことが大事です。

手だけで、りきみなく動ければ体全体の重さを伝えることが出来ます。僕はそれまでKOはあまりできなかったんですけど、ボンボン倒せるようになりました。

僕はバネがないのでパンチの威力もスピードもなかったのですが、沖縄空手の突きはパワーではなく重さを伝え、スピードではなく「起こり」の無い動きによって当てます。

編者:「起こり」:何か動作をする直前に、体のどこかがその動作を起こすために、準備をすること。殴るために肩に力が入るとか、前足に体重を移動させるとか、無意識に体のどこかが準備をするので、鋭敏な人はそれを察知し次の動作を読むことができるということ。これを「気」の動きまでに拡大して察知する武道家もいるという。

聞き手:秘伝みたいなものってありますか? 

菊野さん:相手と衝突しないことですね。 投げ技にしろ、何にしろですね。 例えばですね。僕の腕を持ってもらっていいですか?  僕、平山さんに向かって押しますので止めてください。 止められますね。これは僕が力で押したことによって平山さんも力で押し返せているので衝突して止まっている状態です。 もっと強い力を出して相手を上まわれば押すことができます。これが足し算の発想です。でも僕が、りきまずに末端が平山さんの方にいければ……止められませんよね。自分を一体化させ、相手と一体化することで衝突せずに動きを伝えることが出来ます。これが引き算の発想です。

 (編者:菊野さんの直線で伸びてくる腕を両手で抑えているのだが、なぜか止めることができない。体ごと動かされる)

 

武術は人間の研究なのです。 

聞き手:それが沖縄空手で? 

菊野さん:全ての武術は大体そういうことやっていますね。 自分の体を最大限に効率的に使おうした結果、大体同じところにたどり着いている。各流派で、それぞれやり方は違いますけど、原理原則は同じです。 同じ人間ですからね。「武術は人間の研究なのです」

 

極意をビジネスに生かして=相手を変えない。 一体化して一緒に変わる

聞き手:例えば、その極意をビジネスに生かすとしたら何か考えられますか? 

菊野 足し算がいいとは限らないってことが1つあると思います。 もう1つ、 人っていうのは安定したいんです。変えられたくない。 押したら押し返してくるし、引いたら引き返してくる。 自分の座標を守りたい。 だから相手の変化を望むのであれば、 まずは適切な関係性を作って一緒に変わる。  そういうことが武術で行われていますね。 相手をむやみに変えない。 一体化して一緒に変わる。

聞き手:それは、子供たちに対しても同じことが言えますか?

菊野さん:そうですね。信頼関係を築くのが第一です。生徒たちにとって我々指導員は「たくましく幸せに生きるお手伝いをする存在」であると感じてもらうこと。これは言葉はもちろんですが何より在り方です。うわべだけだと通用しませんので毎回全力です。我々指導員が「こどもヒーロー訓」を守ること。そして一緒に成長していきたいと思っています。

また技術の稽古の中でよく「相手を変えようとしない。相手と仲良くなって、自分が変われば相手も変わる。結果的に技になる」というようなことを指導します。

ここら辺は子供の方が上達が早いです。先入観が少ないから習ったことをそのままやろうとする。大人はついつい、りきんで喧嘩を仕掛けてしまう。相手を変えようとしてしまう。

それでも少しずつ無意識に置き換わっていきますけどね。 

聞き手:沖縄空手。 沖縄空手を習いながら、UFCとかで闘ったわけですよね。 

菊野さん:あくまで僕は、総合格闘技の競技者として勝つために武術を取り入れたというスタンスでした。今、僕の中では、総合格闘技や異種格闘技などの格闘競技で一段落しました。気持ちが落ち着いたので、今は武術を専門に大人や子供に教えているところです。

聞き手:いろいろ、他流派というか、 いろんな人と交流されているようですが「この人はすごいよ」 という人はいましたか? 

菊野さん:皆さんすごいですね。一緒にコラボされている先生方はそれぞれの道で、すごく努力をされて体現されている方達ですね。いつも学ばせて頂いています。特殊な先生で言えば雨宮宏樹先生、 影武流合氣体術の雨宮先生は500年続く武術を直に継承されている人で、技術もすごいし、伝える言葉も持っていらっしゃるし、とてもすごい先生です。

聞き手:この間、 ビデオでコラボされているのを見たのは大東流光道の先生です。大東流はどうですか? 

菊野さん:非常に面白かったですね。気、合気、光という段階があるそうで僕に見せてくれたのは入口付近のことでしたが、そこに関しては僕がやっていることと通ずるものを感じました。

 

非科学と否定せずに、未科学(いまだ発見されて、答えのないものを科学する)

AUCKLAND, NEW ZEALAND  (Photo by Phil Walter/Getty Images)

聞き手:気功、気というものについてはどうですか? 

菊野さん:少なくとも「未科学」という分類だと思います。 非科学ではなくて。 証明されていないけども、 何かしらのエネルギーというか、 何かがあるというのは僕は確信はしています。 

聞き手:実際に感じられているのですか? 

菊野さん:それは間違いなくあるだろうと、ないわけがないだろうと思っていますが、あんまりそれを言い過ぎると本当に怪しくなっちゃうので、でも適時に使いますね。

例えば、思うだけでパフォーマンスは変わるので、これって何だ?と言ったときに、多分「気」というものと隣合わせなんじゃないかなと思います。

聞き手:菊野さんも、実際そういう不思議な力を経験されているんじゃないかと思いますが?

菊野さん:間違いないですね。 例えば、 オーリングってあるじゃないですか。 ちょっとやってもらっていいですか。今から僕が剝がしますから親指と人差し指が離れないようにしてください。 (菊野氏が筆者の指を剥がしながら)今このぐらいの力ですね。 例えば、 ガッチャンって言いながらオーリングを作ってください。 同じように、 剥がされないようにしてください。(菊野氏が筆者の指を全力で剥がそうとするが剝がれない)変化分かりました? 全然変わりましたよ。 ガッチャンっていう言葉の「気」なのかもしれない。 イメージって言ってもいいかもしれない。  全然変わるので、つまりそういうことなのかなと。 仰ってる気と同じかわからないですけど、人ってそんなもんだなって。 

(編者:筆者が親指と人差し指でOKマークの円を作ると、菊野氏が両手でその私の指をつかんで、簡単に親指と人差し指を剥がして、OKマークが壊れてしまった。ついで、二度目には、同じようにOKマークを作るのだが、同時に「ガッチャン」と私が言葉に出して鍵が掛ったかのようにイメージするのだ。そして再び菊野氏が両手で、そのOKを壊そうとするのだが、遥かに耐性が出来ていて外れなかった)

菊野さん:「病は気から」って言葉がありますがその通りなのは皆さんも実感があると思います。元気な人から元気をもらったり、暗い人といると暗くなったり。「気」の定義はそれぞれだと思いますが気持ちであったり、思いであったり、イメージであったり、情報であったり、漫画のようなエネルギーであったり、おそらくそれらは近しい存在で自分にも他人にも影響を与えるのは間違いないと思います。

聞き手:今回の趣旨はお伝えした通り、これからの日本を支える日本復興、武道復興なんですね。日本の伝統とか、古いものに価値観を見立ててる人たちの時代が来るということです。

菊野さん:僕の人生を楽しいものにしてくれた武術の素晴らしさは伝えていきたいと思っています。ひいては人間の素晴らしさですね。武術とは人間の研究なので。 

最近、ある団体からお神輿を担ぐ価値を団体内で共有したいから武術的な観点から講演をしてくれないかという依頼がきまして。

 聞き手:お神輿を担ぐ意味ってなんですか?

菊野さん:儀式や祈祷とかの部分はあると思いますが、僕は専門家ではないのでそこを詳しく説明することはできません。ただ、神様に感謝することであったり、感謝を行為に表すことでこんなにも人って 変わるんだよっていうことを、伝えることはできると思います。

「有難う」って言うだけで変わるんですよ。オーリングでやってみましょうか。僕に対して、「有難う」って言ってもらってもいいですか? 

聞き手:「有難う」

ほら。全然違いますよね。

感謝することで宿った力。 これ、分からないんですけど、感謝する自分のことを信じれるとか、自分のことを好きになるとか、そういうことで生み出される力かもしれないし、僕からしても、感謝されたことで2人の関係性が変わったのかもしれないし。ともかく明らかに変化が起きるのですね。

(編者:ガッチャンという音の変わりに「有難う」という感謝を相手に示しただけで、またもやあのOKマークが外せなくなった)

聞き手:昔の人は知っていたのかもしれないですね。 そういうことをね。 病は気からって。「一念」って、言うのかもしれませんね。これからみんなが、そういう世界を知っていくことになるのでしょうか。我々も、それを伝えていく。そうすると、物の価値観が変わってきそうですね。 

菊野さん:古くから伝わることには真実というか、消えなかった理由があると思うのです。それは現代に生きる我々にとっても、たのもしく幸せに生きる指針になると思いますし、未来に繋げていきたいと思います。

聞き手:ありがとうございました。

インタビュー終わり

 

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親が幸せになる方法

 

ここからは道場に移動し「こどもヒーロー空手教室」を見学させていただいた。子供たちへのインタビューは練習中なので控えさせていただき、親御さんへのインタビューだけを行った。

聞き手:お子様たちをこちらに預けていらっしゃる目的というか、 求めることというか、 そういったものがあればお聞かせ願いたいです。

母親Aさん:基礎体力作りと、男兄弟なので 何かやらせたくて。

やらせてよかったことはたくさんあります。集中力がついたりとか、 規則を守ることですね。 

聞き手:親の言うこと聞きますか?

母親A: 親の言うことは聞かないけど、 こどもヒーロー訓の「メリハリをつける」とかは事あるごとに言うようになり守るようになってきました。

母親B:うちも似たような感じなんですけど、 もうちょっと頼もしくなって欲しいということ、こちらの空手は精神的なことも大切にされていて共感しています。そういうことを身につけてほしいなと思っています。 効果は表れていますね。本人も「こどもヒーロー訓」は大事なことだと思っているようです。

母親A:稽古の終わりにいつも先生が実悟教(経書中の格言を抄録して、たやすく朗読できるようにした子どものための教訓書。 寺子屋の教科書などとして使用された。俗に弘法大師の作という。日本で千年前から読まれてきた)を読むのですが、寝る前とか家でも読んでいます。

聞き手:どんなことが書いてあるのですか? 

母親A:何回も繰り返して練習しようねとか、 家族や友達を大事にしようねとか、人として大事なことを教えていただいています。

聞き手:そういうことを、家族の中で話し合うというチャンスは、なかなか一般の家庭ではないですよね。

母親A:そうですね。 他の空手教室の体験にも行ったんですけど、こういう人間としての在り方を空手の在り方とともに教えていらっしゃるところはあまりありません。「こどもヒーロー訓」や実悟教もそうですけど、やっぱり菊野先生の人柄であったり、優しさであったりです。他とは違うかな。

聞き手:やっぱり人と極限で戦ってきたことが人間磨きには最高の道だったのでしょうね。午前中、生い立ちとか、いろいろ聞きましたけど、小学生の頃は孤独な時期もあったそうです。中学で柔道を始めて、自信がついて人間関係が良くなり毎日が楽しくなったと聞きました。

聞き手:別のお母さんにインタビュー。 お子さんをこちらに預けてらっしゃる目的とか何かございますか。

母親C: 彼女(5歳)は空手が好きなのです。 

聞き手:それは空手が好きなのですか。菊野先生が好きなのですか?

母親C:空手が好きなのです。 

聞き手:今、どのくらいやってらっしゃるのですか。

母親C:1年弱です。 

聞き手:その一年弱で、何か変わったことはありますか。

母親C:頼もしくなり、 集中力もつきました。 

聞き手:どんな子供に育ってほしいと思っていますか。

母親C:「こどもヒーロー訓」を守って強くて優しい子に。

聞き手:そういうことって、家の中でもお話されていますか?

母親C:はい。この、メリハリをつけるとか、礼儀を大切にするとか、人に優しくするとか。 本当に大事ですよね。ことあるごとに引用させてもらったり、一緒にその意味を考えたりしています。

聞き手:じゃあ、家庭のコミュニケーションも取れるようになっている感じですかね。

母親C:はい、そうです。家族が皆喜んでいます。

編者:「家族が皆喜んでいる」という家庭で育つ子。親子の会話が成り立つ家庭。そんな家庭で育つ子供に、不健康があり得るだろうか? 不幸が生じるだろうか? 人に優しい子供が、親を幸せにし、友人知人にも明るい波動をふりまくのに決まっているではないか。そういう人をヒーローというのではないか?

Katsunori Kikuno 公式WEBサイトより

ありがとうございました。

菊野氏の語ったことをことごとく、実際、年少組の教室のなかで、編者は目撃した。日本の子供が大きな幸せを掴めるような気がした。そして最も幸せなのは彼の家族だろう。

菊野克紀: https://kikunokatsunori.com/

若いころはHG/PGに明け暮れ、中年になると、アジア各国での日系工場の立て直しに実績有り。同時に小説をプロに習い、書き始める。 エポックタイムズ掲載:「UFOと老人」、「千代能比丘尼物語」、「時間を無くした男」 アマゾン出版:「南十字星の少女戦士」など。