この簡単なストレッチは、背中の筋肉のこわばりをやさしくほぐして柔軟性を高め、長い目で見て腰椎(腰の背骨)のケガのリスクを減らすのに役立ちます。
腰椎は背骨の中でも特にケガをしやすい部分です。立ち上がるときや重い物を持ち上げるとき、あるいは少しかがんで物を拾うときなど、日常的に頻繁に使われています。加齢や長年にわたる悪い姿勢によって、腰椎に繰り返し負担がかかり、それがやがて病的な変化につながることもあります。
台湾の全生中医診所院長で整形外科医の陳兆龍氏は、腰椎を守るには「筋肉のこわばりと緊張を避けること」が大切だと話します。彼は腰椎の健康を保つための、簡単で実践的な背骨のストレッチを紹介しています。
背中の筋肉をリラックスさせて痛みを予防する
腰の痛みにはさまざまな原因があります。たとえば、ある場所の痛みが別の場所に感じられる「関連痛」、腎臓結石や帯状疱疹、骨盤内炎症性疾患などの加齢による変化が関係している場合もありますが、臨床では急性や慢性の筋肉疲労が原因になっているケースが多く見られます。
急性の痛みは、交通事故や予期しない衝撃などで突然起こり、非常に強い痛みを伴います。一方、慢性の痛みは長期間の繰り返しによるストレスが原因で、特に長時間座りっぱなしでいると起こりやすいです。
陳氏によると、長時間同じ姿勢を続けていると、背中の筋肉が「等尺性収縮(筋肉の長さを変えずに力を入れる状態)」のままになり、見た目には動きがなくても筋肉が疲労して、こわばりや痛みが生じやすくなるとのことです。これは、高齢の方が一日中座っているだけで腰痛を感じる理由の一つでもあります。
ほとんどの慢性的な痛みの背景には、「筋肉のこわばり」が共通しています。長く悪い姿勢を続けると背中の筋肉が固まり、大腰筋(腰から太ももにかけてのインナーマッスル)も緊張した状態になります。その状態で急に重い物を持ち上げるなどすると、椎間板ヘルニアを起こしやすくなるのです。陳氏は、背中の筋肉を柔らかく保ち、こわばりを防ぐことが腰椎のケガを防ぐカギだと強調しています。
自宅でできる簡単ストレッチで腰をサポート
急性の腰痛に対して、西洋医学では主に抗炎症薬や鎮痛薬が用いられ、安静に過ごすことが勧められます。陳氏によると、急性期には中医学の治療法である鍼やマッサージ、刀針療法などが、緊張した筋肉をほぐし、骨格のバランスを整えることで、痛みを大きく和らげることができるそうです。
中医学では、「経絡(体内のエネルギーが流れるルート)」が臓器と全身をつなぐ通路とされており、そこにある特定のツボを刺激することで、対応する部位の不調を改善できると考えられています。
陳氏は、痛みが治まった後は、軽い運動で体を保つことが大切だと話しています。「薬での栄養補助よりも食事、食事よりも運動によるサポートのほうが効果的だ」とも強調しています。たとえば、ジョギング、ヨガ、速歩、自転車、水泳などの運動は血流を促進し、背骨への栄養供給を助けます。平日の昼休みに、オフィスでヨガマットを敷いて少し横になるだけでも、背中の筋肉をリラックスさせることができます。
膝抱えストレッチ
陳氏は、腰のストレッチと筋肉の緊張をやわらげる効果的な方法として「膝抱えストレッチ」を勧めています。
片膝を抱える方法:仰向けになり、片膝を曲げて両手で抱え、体に引き寄せながら上体を膝に近づけます。
両膝を抱える方法:仰向けで両脚を持ち上げて膝を曲げ、両手で膝を抱えて胸のほうへ引き寄せ、上体を膝に近づけます。
座って前屈する方法:脚をまっすぐに伸ばして座り、腕を前に伸ばして指先でつま先に触れるようにします。
(翻訳編集 里見雨禾)
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