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心を癒す習慣

「自分責め」をやめたいあなたへ──心のいじめっ子を癒す方法

56歳のスージーは、成功したビジネスウーマンとして洗練された自信を身にまとっています。しかし、その内面では容赦ない自己批判の声がささやき続けています。「何をやっても十分じゃない。誰もあなたのことを好きじゃない」

夫にも秘密にしていたこの残酷な思いは、生涯にわたるトラウマを物語っています。スージーは9歳のときに母親を亡くし、その後中国でアルコール依存症の父親から数年間にわたり虐待を受けました。最終的に、父親は自ら命を絶ちました。

彼女はその深い痛みを外面的な成功へと昇華させましたが、心の中の「いじめっ子」は彼女の自己価値をむしばみ続けていました。法輪功の実践によって逮捕・投獄された経験は、その内なる声をさらに強くしたのです。現在アメリカに暮らしていても、過去のトラウマはなおも彼女の中に存在しています。

スージーの物語は、トラウマが私たちの「つながりたい」という本能を、自己批判という形にすり替えてしまう仕組みを浮き彫りにしています。これは多くの人に共通する生存メカニズムですが、癒しを通じて乗り越えることが可能です。

「心のいじめっ子」はどこから来るのか?

私たち一人ひとりの中には、「内なる批判者」が存在します。これは一見、私たちの欠点を指摘し、改善の助けをしようとしているように見えます。しかし、この声が誇張され、容赦のないものになると、それはカナダの学者で作家のジェニファー・フレイザー(Jennifer Fraser)氏が「心のいじめっ子」と呼ぶ存在へと変化します。彼女は著書『The Bullied Brain』の中で、この「心のいじめっ子」について詳しく解説しています。

内面的ないじめは、身体的あるいは感情的なトラウマに起因し、身体・精神・魂にまで影響を及ぼします。言い換えれば、トラウマがなければ、「心のいじめっ子」は発達しないのです。

人がいじめや虐待を経験すると、その有害なメッセージを内面化し、たとえ虐待が終わったとしても、そのトラウマを持続させる「内なる声」として残る可能性があります。

「トラウマとは、単に私たちに起こった出来事ではありません」と語るのは、トラウマの専門家であり、『When the Body Says No』の著者としても知られるガボール・マテ博士です。「それは、私たちに起きたこと、あるいは無視されたことに起因する、私たちの内面における影響なのです」

研究によれば、社会からの引きこもりや自己隔離は、トラウマ的な出来事の一般的な結果として見られます。これらの行動は短期的には適応的かもしれませんが、長期的には健康的とは言えません。

「あなたの脳は孤立を、非常に危険でリスクの高い健康危機として解釈します」と、フレイザーはエポックタイムズの取材で語っています。また、内なる批判者の声が、物理的な脅威への反応と似たストレス反応を引き起こすことがあるとも指摘しています。

そのようなストレス反応によって生じる羞恥心、不安、低い自尊心は、自分自身を素直に表現する妨げになる可能性があります。

重要なのは、内なる「いじめっ子」の声が真実を語っているわけではない、ということです。それは、トラウマに対する学習された反応であり、克服可能なものなのです。

「元被害者が声を上げるとき」とフレイザーは語ります。「それは彼女が、過去のトラウマから力と自立を獲得したことを意味するのです」
 

内面的ないじめを止める方法

「心のいじめっ子」を静める最も効果的なアプローチは、新たな対処法を学び、健康的で前向きなセルフケア習慣を確立することです。

専門家によれば、自己批判や反芻思考など、心理的トラウマの症状に悩みつつ、自分自身や他者との関係を変えたいと願う人は、確実に変化を遂げることが可能です。

「私たちの脳は、身体と同様に修復や回復に適応する性質を持っています」と、ジェニファー・フレイザー氏は述べています。

まず大切なのは、過去のトラウマによる「見えない傷」が存在することを認識することです。肉眼では見えなくても、EEG(脳波計)やMRIといった先端技術を用いれば、脳への影響を可視化できます。

フレイザー氏は、私たち一人ひとりが実践できる多くのセルフヘルプの方法を支持しています。

頭から抜け出して、身体を動かす

ネガティブな思考の連鎖から抜け出すには、「気分は運動に従う」という考え方が有効です。

「私たちは日々、ストレスホルモンであるコルチゾールの影響を受け続けています」とフレイザー氏はエポックタイムズに語りました。

有酸素運動は、コルチゾールの分泌を抑える効果があり、脳をストレスに対して強くする働きがあるため、非常に有効です。

研究によれば、有酸素運動は「脳由来神経栄養因子(BDNF)」と呼ばれる特別な物質を増加させます。これは新しい脳細胞の成長を促進し、脳の神経可塑性(変化と適応する力)をサポートします。

あなたが心地よく感じられる運動であれば、どのような形式でも構いません—ウォーキング、ダンス、ジョギング、サイクリングなど、いずれも効果的です。スポーツには特に社会的なつながりを築く利点もあり、より良い選択となることがあります。

友達のように自分に話しかける

困難な時期を過ごしている友達や、失敗を経験した友達に、あなたはどんな言葉をかけますか?

その言葉と、これまで自分自身にかけてきた言葉を比べてみてください。そして、友達に使うであろう優しく思いやりのある言葉を、自分自身にも使い始めてみましょう。

研究によると、自己同情は、過度な自己批判や完璧主義に対処するよりも、ずっと健康的な方法です。自己同情を持つ人は、失敗したり短所に直面した際にも、目標に向かって努力を続ける傾向があります。また、別の研究では、自己同情的な人はストレスが少なく、否定的な感情のレベルも低いことが明らかにされています。

あなたの期待は現実的ですか?

「自分には価値がない」と自分を責める前に、その考えが本当に事実なのか、現実的なのかを問いかけてみてください。他人と比較することで人生の意味を見出そうとしていませんか?私たちは皆、それぞれ異なる経験や背景を持っているため、他人との比較は多くの場合、正確でも有益でもありません。

心のいじめっ子から距離を置く

1、マインドフルネスや瞑想も、内なるいじめっ子と付き合うための有効な手段です。フレイザーは、これらの方法が何千年にもわたり東洋文化で実践されてきたものであり、「脳にとって本当に良い」と述べ、「神経科学も今やそれを認め、彼らの正しさを支持しています」と語ります。彼女は、オンラインで利用できる無料の瞑想練習を試すことを提案しています。

2、いじめっ子に名前をつけることも、否定的な自己対話を自分の本質から切り離す助けになります。たとえば、私のいじめっ子は「ミス・パーフェクト」と名付けました。彼女は極端に批判的で、ほんの些細な出来事を最悪の結果にまで膨らませてしまう、いわば「災害化」の専門家です。

3、自分にメモを書きましょう。静かな場所を見つけ、10〜15分間、途中で中断せずにメモを書いてみてください。今あなたが苦しんでいることを明確にし、それを愛情を持って受け入れてくれる親しい友人や家族になったつもりで、自分に対して理解と共感を持って言葉を綴りましょう。挫折は人生の一部であることを認め、自分がより幸せで健康になるためにできる、建設的で支えとなる方法を考えてみてください。

学び続ける:脳は知識を求めている

フレイザーは、私たちが「学ぶことを止めない」ことの重要性を強調しています。

「脳は学びを欲しているのです」と彼女は語りました。

オンラインの脳トレーニングプログラムを使えば、対処スキルやコミュニケーションスキルを学ぶことができます。

また、彼女によれば、脳の研究は「文化的に高揚感をもたらすコンテンツ」が最適であることを示唆しています。優しさ、喜び、希望を感じられる情報源を選びましょう。音楽、美術、建築、語学学習、本、ドキュメンタリーなどは、人々が善をなそうとする姿と、その中にある奇跡を伝えてくれます。

スージーはこれらの戦略を学び、日々実践することで回復を遂げました。現在、彼女は人間関係を深く楽しんでおり、「心のいじめっ子」がときおり現れても、耳を貸さないことを選べるようになりました。

英語のことわざにあるように、 「あなたは、自分の中に最悪の敵、または最高の友を見出すことができるのです」

(翻訳編集 日比野真吾)

臨床栄養士および自然療法士として、2009年より消化不良、依存症、睡眠障害、気分障害に悩む方々を支援するコンサルティングを実施。大学で補完医療を学ぶ中で、行動神経科学や腸・脳の不均衡に強い関心を抱く。それ以来、栄養ゲノミクス、トラウマにおけるポリヴェーガル理論、および栄養療法アプローチに関する大学院レベルの認定資格を取得。