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夏の糖尿病対策は“時間”がカギ――乾いた体を潤す暮らし方

真夏の暑さが厳しい中、汗をたくさんかく人もいれば、口が乾いたり、イライラして眠れなかったり、血糖値が不安定になったり、動悸や疲れを感じる人もいます。この状態は糖尿病だけでなく、体の中の「うるおい」が足りない体質「陰虚体質」が関係しているかもしれません。

体の「陰(いん)」とは、水分や栄養のことで、体をうるおし、落ち着かせる働きがあります。それが不足すると、体の中に余分な熱がたまり、体調を崩しやすくなります。まるで乾いた地面が太陽にさらされて、ますます乾いていくようなイメージです。陰虚の体質は、糖尿病や高血圧、脳卒中などの病気にもつながりやすくなります。

糖尿病と「体が乾きやすく熱を持ちやすい」体質の関係

中医学では、体のうるおい(陰)は体を冷やし、バランスを取る働きをします。これが足りなくなると、熱がたまりやすくなり、体の調子が崩れやすくなります。糖尿病は中医学で「消渇(しょうかつ)」と呼ばれ、初期にはこの体の乾きが主な原因と考えられています。のぼせや口の渇き、水分の取りすぎなどが見られ、放っておくと体力も落ち、血圧や腎臓、心臓などにも悪い影響が出ることがあります。

体の調子が崩すイメージ(Shutterstock)

 

夏に「うるおい」をしっかり補うことが大事

夏は体に熱がこもりやすく、汗も多くかくため、水分や栄養が失われやすくなります。体の乾き体質の人にとっては、特に症状が出やすい時期です。この時期は、夏のエネルギーをうまく利用して体のうるおいを増やすチャンスでもあります。体の熱を上手に内側に取り込みながら、体を整えていくと良いでしょう。

1.心のケアはお昼がチャンス(11:00~13:00)

「心(こころ)は火に属する」と中医学では言われています。体のうるおいが足りない「陰虚体質」の人は、夏になると特に「心の火」が強まりやすく、イライラしたり、不眠や動悸、息切れといった症状が出やすくなります。お昼(11時〜13時)は「心経(しんけい)」が活発になる時間で、この時間帯は心を落ち着かせ、体のうるおいを補うのに最適なタイミングです。

縁側で淹れる麦茶(Shutterstock)

おすすめのお茶:

・麦茶+クコの実のお茶(目の疲れにも)

材料: 麦茶パック1つ、クコの実(ごく少量5~10粒)

作り方: 300mlのお湯で麦茶を作り、クコの実を入れて10分ほど置きます。温かいうちに飲みましょう。

効果: 麦茶は胃にやさしく血糖値にも影響しにくいです。クコの実は肝臓の働きを助けて目の疲れをやわらげ、血糖の安定にも役立ちます。

注意: クコの実は1日10粒程度まで。取りすぎると体に熱がこもることがあります。

・とうもろこしのひげ茶(むくみ対策に)

材料: 乾燥したとうもろこしのひげ5g(ひとつかみ)、水300~500ml

作り方: 水で10〜15分煮出します。煮出した後も再利用して2回くらい煮出せます。

効果: 体の熱や余分な水分を取り除き、血糖値のコントロールも助けます。むくみや口の渇き、トイレが近いと感じる糖尿病の方におすすめです。
 
・桑の葉茶(昔からある血糖ケアのお茶)

材料: 桑の葉の茶パック1つ(または乾燥桑の葉3g)

作り方: お湯を注ぐか、弱火で5分ほど煮出します。

効果: のどの渇きをやわらげ、体にうるおいを与え、血糖値の調整にも役立ちます。

注意: 桑の葉は少し体を冷やす性質があるため、空腹時や冷え体質の方は控えめに。食後に飲むのが良いです。

 
2.夕方は「肝」と「腎」をいたわる時間(17:00~19:00)

「肝」と「腎」はどちらも体の基本的なエネルギー源とされ、中医学では「肝腎同源(かんじんどうげん)」と言われます。糖尿病が長引くと、体のうるおいを保つ「腎の陰」が消耗しやすくなり、視力のかすみ、耳鳴り、微熱やほてりなどが出やすくなります。夕方(17時~19時)は「腎経(じんけい)」が活発になる時間で、肝と腎をいたわり、体の熱バランスを整えるのにぴったりの時間帯です。

おすすめレシピ:

・黒豆とレンコンのスペアリブ煮(2人分)

材料: 黒豆30g、レンコン100g、スペアリブ(豚の骨付き肉)150g、生姜3枚

作り方: 黒豆はあらかじめ水に浸して柔らかくしておきます。スペアリブは熱湯で下ゆでし、黒豆と一緒に煮ます。途中でレンコンを加えて、具材が柔らかくなるまで煮込みます。

効果: 腎を補い体のうるおいを整えることで、のどの渇きや体のだるさにもよいとされます。

・山芋ときくらげの炒め物(2人分)

材料: 山芋100g、戻した黒きくらげ50g、にんじん50g、オリーブオイル少量、塩適量

作り方: 山芋は皮をむいて薄切りにし、さっと湯通しします。黒きくらげとにんじんと一緒に炒め、塩で味を調えます。

効果: 胃腸の働きを助け、腎をサポート。体をうるおしながら、血糖値の安定にも役立ちます。
 

「子午流注(しごりゅうちゅう)」に合わせて体を整える

「子午流注」とは、1日の中で気と血がそれぞれの経絡(けいらく)を順番にめぐる流れのことです。各内臓のエネルギーが高まる時間帯を知り、その時間に合わせて食事や休息を工夫すれば、少ない努力でも大きな効果が得られます。

体のうるおい(陰)を養うには、真昼の強い日差しを避け、心と腎をいたわる「午の時間(11:00〜13:00)」と「酉の時間(17:00〜19:00)」を活用するとよいとされています。心経・腎経はもともと陰のエネルギーが強い場所なので、この時間帯に合わせてケアするとより効果的です。
 

「陰」を補うときも「陽」のサポートを忘れずに

体のうるおいを補うと聞くと、冷たい飲み物や生の食べ物ばかりを思い浮かべるかもしれませんが、それは正しい方法ではありません。特に糖尿病の人は胃腸が弱っていることが多いため、冷たいものを摂りすぎると逆に体を冷やし、湿気と熱が混ざり、不調を招きやすくなります。

そこでおすすめなのが、体を整えながら胃腸にもやさしい食材です:小豆、山芋、インゲン豆、白いんげん豆、とうもろこし、かぼちゃ、玄米、卵、スズキ(白身魚)など。さらに、黒ごま、くるみ、小さななつめなどの「ほんのり温かい性質の食材」と一緒に調理すると、体を内側からバランスよく整える「陰の中にも陽を育てる」効果が期待できます。
 

まとめ

糖尿病は単なる血糖の病気ではなく、体質のバランスが崩れた結果とも言えます。とくに「陰虚火旺(体のうるおいが足りず、熱がこもりがち)」の状態が背景にあることが多いです。

夏は、暑さを避けながらも体を冷やしすぎず、体のうるおいと胃腸の活力の両方を大切にすることが大事です。難しい治療のように思えるかもしれませんが、毎日の生活の中で少しずつ変えていくことで、体は確実に変わります。
たとえば、1杯のうるおい茶や、1杯のやさしいスープからでも始められます。毎日のちょっとした積み重ねが、健康への道につながります。
 
 (翻訳編集 華山律)

白玉煕
文化面担当の編集者。中国の古典的な医療や漢方に深い見識があり、『黄帝内経』や『傷寒論』、『神農本草経』などの古文書を研究している。人体は小さな宇宙であるという中国古来の理論に基づき、漢方の奥深さをわかりやすく伝えている。