首の腫れ、手の震え、心悸、失眠といった症状は、一時的な不調にとどまらず、甲状腺機能亢進症を示している可能性があります。
従来の医学では、通常、薬物療法や手術が選択されますが、中医学では、より穏やかで非侵襲的な代替法として「耳圧」が用いられることがあります。この数百年の技法は、症状を和らげ、ホルモンを調整し、自然にバランスを回復する助けになる可能性があります。
甲状腺機能亢進症の理解
甲状腺機能亢進症は、甲状腺が過剰に甲状腺ホルモンを産生することで、代謝が加速し、心拍数の増加、手の震え、睡眠困難などの症状を引き起こします。アメリカでは、12歳以上の約100人に1人が影響を受けており、女性や高齢者でリスクが高いとされています。
ヨウ素は甲状腺ホルモン合成に不可欠な微量栄養素です。かつては、甲状腺腫大はヨウ素不足が原因と考えられ、昆布や海藻などのヨウ素を多く含む食品の摂取が勧められてきました。しかし、現在では食生活の多様化やヨウ素添加塩の普及により、ヨウ素不足は次第に少なくなっています。
そのため、現代に見られる多くの甲状腺腫大のケースは、甲状腺機能亢進症と関連していると考えられています。このような状況下でヨウ素を過剰に摂取すると、甲状腺ホルモンの産生がさらに刺激され、状態を悪化させる可能性があります。
中医学の視点
中医学では、甲状腺の健康を全体的な視点から捉えます。甲状腺を単独の機能不全の腺と見るのではなく、経絡(生命エネルギーである「気」が流れる通り道)によって統合された広範なエネルギーのネットワークの一部と考えます。この枠組みにおいて、甲状腺機能亢進症は陰陽の不調和を示し、内部の過剰な熱、心や精神の乱れ、心経や肝経の機能低下を伴うことが多いとされます。
中医学の原則では、甲状腺の過剰な刺激は、内部の熱、感情的ストレス、気の滞りによって生じると考えられています。特定のツボ、とくに全身を反映するとされる耳のツボを刺激することで、気の流れを整え、神経系を落ち着かせ、体内の調和を回復することを目指します。
2018年のレビューでは、鍼灸が甲状腺機能亢進症や甲状腺機能低下症など、甲状腺に関連する状態のケアに役立つ可能性が示されています。
耳圧療法
エポックタイムズの姉妹局新唐人テレビの番組「She Health」のエピソードで、台湾の泰心中医学クリニック所長であるWu Tung-Yi氏は、耳の特定のツボを継続的に刺激することで、甲状腺機能亢進症の症状が和らぐ可能性があると述べました。
中医学では、耳は全身の縮図と考えられています。耳の各部位は異なる臓器系に対応しており、これらの点を刺激することで、神経経路やエネルギーの通り道が活性化され、ホルモン分泌に影響を与えたり、心を落ち着かせたり、失眠といった甲状腺機能亢進症でよく見られる症状を和らげる助けになるとされています。
Wu氏は、以下の耳のツボマッサージを勧めています。
・「耳神門」のツボ(耳の上部にある三角窩):この点を刺激することで、心を落ち着かせ、心悸を和らげ、甲状腺機能亢進症に伴う不快感を軽減する助けになると考えられています。
・甲状腺点:対輪の上縁に位置し、この点を刺激することで、甲状腺機能を整える助けになる可能性があります。
・内分泌点:対輪の下側にあり、刺激することで内分泌系を調整し、ホルモンバランスを支える可能性があります。
方法
指先や先の丸い道具を使い、対象となるツボに5~10分ほど圧を加えます。あるいは、耳用の種子を対応する位置に貼り付け、日常のウェルネス習慣として継続的に刺激を与える方法もあります。
耳を定期的にマッサージすることで、副交感神経系が刺激され、神経が落ち着き、心拍数が緩やかになり、甲状腺機能亢進症に伴う失眠の緩和につながる可能性があります。
心身のつながり—副交感神経のサポート
経絡理論に加え、耳への刺激は迷走神経(副交感神経系で重要な役割を担う神経)を活性化する可能性があると考えられています。この「休息と消化」を司るシステムは、過剰な甲状腺ホルモンによって生じる高い緊張状態を和らげる働きを持ちます。
神経系が落ち着くことで、耳圧は心悸を和らげ、心拍数を下げ、睡眠の質を高め、不安を軽減するなど、身体的・感情的なリラックスをもたらす助けになる可能性があります。
甲状腺機能亢進症の症状
一般的な症状としては、手の震え、心悸、睡眠困難が挙げられ、一部のケースでは心臓に関連する合併症につながる可能性があるとWu氏は述べています。
その他にも、食欲低下、体重減少、髪が薄くなるといった症状が見られることがあります。
女性では月経不順、男性では性機能の低下に気づく場合もあります。
2024年の横断研究では、60~80歳の甲状腺機能亢進症のある成人は、そうでない人と比べて、変形性関節症を発症するリスクがほぼ3倍高いことが示されました。このため、高齢者では関節の健康状態を注意深く見守ることが重要とされています。
未治療の甲状腺機能亢進症のリスク
治療を受けない場合、甲状腺機能亢進症は、甲状腺ストーム(甲状腺ホルモンが突然大量に放出されることで起こる生命に関わる状態)と呼ばれる重篤な合併症を引き起こすことがあります。これは、感染症、手術、強い身体的・感情的ストレスなどをきっかけに起こることが多いとされています。
甲状腺ストームは心機能に深刻な影響を及ぼし、急激な心拍数の増加や血圧上昇、心房細動を引き起こし、重症の場合には心不全に進行する可能性があります。
また、この状態は消化器系にも影響し、吐き気、嘔吐、下痢などの症状を伴うことがあります。
甲状腺の除去はいつ必要か?
甲状腺腫大は必ずしもがんを意味するものではなく、すぐに手術が必要になるとは限りません。実際、多くのケースは石灰化結節や嚢胞といった良性のもので、定期的な経過観察のみで対応できる場合が多いとWu氏は指摘しています。
手術は、結節が外見上の問題になるほど大きくなった場合や、悪性であることが確認された場合に、一般的に検討されます。
Wu氏は、絶対に必要でない限り、甲状腺の除去は避けるべきだと述べています。除去後は体が自然に甲状腺ホルモンを産生できなくなり、生涯にわたってホルモン補充療法が必要になります。この治療を行わない場合、疲労感、寒さへの弱さ、めまいなど、甲状腺機能低下症の症状が現れる可能性が高くなります。
「大切なのはバランスです」とWu氏は述べています。「腺を急いで取り除くのではなく、体内の環境全体の調和をどのように回復できるかを考えるべきです」
(翻訳編集 日比野真吾)
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