『天使たちの台所』(1646年)、バルトロメ・エステバン・ムリーリョ作。カンヴァスに油彩、約183cm × 450cm。所蔵:ルーヴル美術館(パリ)。パブリックドメイン。

良き食事は善き心から生まれる:ムリーリョ作「天使たちの台所」

スペイン・セビリアにある聖フランシスコ修道院は、名高い画家バルトロメ・エステバン・ムリーリョに依頼し、フランシスコ会の聖人たちを描いた13点の絵画を制作させました。その中の一つが『天使たちの台所』で、これは謙虚な在俗修道士[1]のもとに天上の存在が訪れ、彼の雑務を手助けしたという逸話を描いた作品です。ムリーリョは物語性のある絵画を得意とし、この作品もまさに奇跡的な物語を伝えています。

聖ジルについては、アッシジの聖フランチェスコの最初の弟子の一人であること以外、詳しい記録は残っていません。彼はムリーリョの時代よりも何世紀も前の人物です。『天使たちの台所』は「聖ジルの空中浮遊」とも呼ばれ、ムリーリョが知っていた逸話をもとにしています。それは、セビリアのフランシスコ会修道院に仕えていた在俗修道士フランシスコ・ペレスの物語です。ペレスは生涯を修道院の台所で過ごし、料理係を務めていました。

ある日、彼は祈りに没頭し、深い霊的恍惚状態に包まれます。その間、彼の体は宙に浮かび、どんどん高く上昇しました。祈りから目覚めると、台所の仕事はすべて奇跡的に終わっていたのです。

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