イスラエルの小さな村の地下で、学生や兵士、そして地元の洞窟クラブのボランティアたちが、古代の反乱軍の隠れ家から遺物を発掘しています。最近、彼らは失われていた青銅貨の隠し財宝を掘り当てました。そのコインには、ユダヤ人の反乱期に統治していたローマ皇帝の頭像が刻まれています。
この財宝を隠した人物は、結局それを取り戻すことはなかったようです。
22枚の青銅貨は、狭い通路と小部屋が複雑に入り組んだ地下のネットワークの中で発見されました。これらは約1600年前、ガリラヤ地方のフコクの村の地下で、反乱軍がローマ軍から身を隠していた時代にさかのぼると考えられています。洞窟自体はそれよりもさらに古く、もともとは貯水槽として使用されていたものが、後に秘密活動のためのトンネルに改造されたとみられています。
「これらのコインには、ガルスの反乱(※西暦351〜352年にユダヤ人が起こした蜂起)当時、この地を支配していた皇帝たちの肖像が刻まれています」と、ツファット学術大学のインノン・シフティエル教授はプレスリリースで語りました。
「私たちはこれまでに、3つの異なる困難の時代に築かれた隠れ家を発見してきました」


コインの隠し場所は、曲がりくねった通路の先にある小さな穴の中で見つかりました。その位置から判断すると、コインを隠した人物は、危険が去った後にそれを取り戻すつもりだったと考えられます。
「これらの地下の避難所は生活のための場所ではなく、あくまで一時的な小さなシェルターでした」とシフティエル教授は説明しています。
研究チームは、これらの古代トンネルが何世紀にもわたって複数の反乱時に再利用されていたことを知り、大いに驚いたといいます。ガルスの反乱に関する遺物はこれまでほとんど発見されていなかったため、この青銅貨の発見は極めて貴重であり、過去2度の反乱に続く「第3の闘争」を裏づける証拠となりました。
フコクの地下トンネル群は、最初に「大反乱(※西暦66〜70年・第一次ユダヤ戦争)」の際に反乱軍の避難所として使われ、のちに「バル・コクバの反乱(※西暦132〜136年)」の時代にさらに拡張されました。今回発見されたコインは、それから2世紀後の「ガルス皇帝への反乱」の時代に隠されたものです。

この隠れ家は家屋の下に戦略的に築かれており、ユダヤ人反乱軍はローマ軍の目を逃れて自由に移動できたと考えられます。トンネルのネットワークは、ローマ兵の侵入を妨げるために設計されており、息苦しいほど狭い通路でつながれた8つの主要な小部屋で構成されています。
この隠れ家が数年前に発見されて以来、イスラエル考古学庁(IAA)はツファット学術大学と協力して内部の調査を進めてきました。地元のボランティアやイスラエル国防軍の兵士、洞窟クラブのメンバーも参加しており、今回の発見は地域全体の成果となりました。
「2019年から2023年にかけての発掘は、学生、ボランティア、兵士、地元住民が協力する大規模な地域共同プロジェクトでした」とIAAは発表しています。「今回の希少な証拠(コイン)は、トンネルが掘られた何世紀も後に再利用されていたことを示しています」
発掘現場からは、壊れた陶器やガラス皿、食器類、そして避難中の女性が身につけていたとみられる青銅の指輪なども出土しました。


フコクは歴史的にも重要な集落で、エルサレム・タルムードやバビロニア・タルムードといった古代文献にもその名が登場します。今回新たに発見された反乱軍の隠れ家(ガリラヤ地方で最大級のひとつ)は、村の考古学的価値をさらに高めるものとなりました。IAAは「この新しい発見は、当時の「困難と危機』の時代に光を当てるものです」とコメントしています。
ガルスの反乱はローマ軍によって鎮圧され、反乱軍は悲劇的な結末を迎えました。しかしその後、フコクの人々は灰の中から立ち上がり、地上には美しい古代モザイクで飾られた壮麗なシナゴーグを建て、再び繁栄を取り戻しました。IAAは今後も、その豊かな歴史を保存し、一般公開していく方針です。
「この地では何度も困難な時期がありました」と、IAA研究員でフコクの調査を担当するウリ・ベルガー氏は語りました。「それでも最終的に、この集落は復興し、何百年にもわたって繁栄し続けたのです」
フコクは今後、観光客が訪れる新たな考古学拠点として整備される予定です。地下の反乱軍の隠れ家に加え、1600年前のモザイク装飾をもつ古代シナゴーグや新設のビジターセンターも整備され、国内外から訪れる人々を魅了することでしょう。
(翻訳編集 井田千景)
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