かつては、バーバリーやヴェルサーチといった高級ブランド品を所有していることが、超富裕層の象徴とされていました。しかし現在では、上流階級の人々は、より分かりにくく、それでいて確かな形で豊かさを示しています。しかも、その多くは、目立つ消費行動とは直接結びついていません。
『フォーチュン』誌のウェブサイトは12月3日、プライバシー、自由な時間の使い方、個性を感じさせる物、そして自分らしさこそが、新しい豊かさの基準になりつつあると伝えました。いま重視されているのは、「高価な物を買えるかどうか」ではなく、「忙しさや情報に追われない生活を送れるかどうか」です。
プライバシーとインターネットから距離を置く生活
ユージン・ヒーリー氏は、ブランド戦略のコンサルタントであり、TikTokで動画を発信するクリエイターでもあります。11万人以上のフォロワーを持つ彼は、動画の中でいくつかの価値観を紹介しており、その一つが、「人に知られすぎない生活」や「インターネットに過度に依存しない暮らし」が、今では特別な価値を持つという考え方です。
ヒーリー氏は、スマートフォンで絶えず情報を追い続ける人が多い現代において、あえてネットから距離を置いて生活できること自体が、豊かさの表れになると説明しています。流行のレストランや人気ブランドに詳しくても、それを検索して調べたのではなく、自然な人間関係や日常生活の中で知っている場合、その人が本当の意味で余裕のある環境にいることがうかがえます。彼らは「一番人気のお店」をわざわざ探す必要がありません。その収入や生活水準に身を置いていることで、自然とそうした場所に足を運ぶことができるからです。
「長い期間、インターネットに頼らずに生活できることが、新しい自慢の形になっています」と、ヒーリー氏は1月に公開した動画の中で語っています。
自由に使える時間と過ごし方
人口の上位1%にあたる超富裕層のもう一つの特徴は、自由な時間の使い方を自分で選べる余裕があることです。上流階級の余暇の過ごし方は、多くの中間層とは大きく異なります。ヒーリー氏は、落ち着いた生活ぶりそのものが、日々の生活費や将来への不安に縛られていない証だと述べています。
この点については、研究者の間でも注目が集まっています。
コロンビア・ビジネス・スクールの准教授、シルビア・ベレッザ氏は、余暇の過ごし方が社会的な立場を示す要素になることを明らかにしました。2023年の研究では、人がどのような活動に時間を使っているかと、その人が周囲からどのように見られるかの間に関連があることが示されています。
ベレッザ氏によると、富裕層は仕事以外の時間にも、健康や心の満足、自己成長につながる活動に時間を割く傾向があるといいます。具体的には、会員制クラブで軽いスポーツを楽しんだり、ビジネス書や自己啓発書を読んだり、添加物を使わないパンを自宅で焼いたりすることなどが挙げられます。
個性的で自分らしさを表す服装
超富裕層の間では、いわゆる有名高級ブランドへの関心が徐々に薄れつつあります。ベイン・アンド・カンパニーが2024年に発表した報告書によると、2022年から2024年の間に、約5,000万人が高級品を購入しなくなりました。ディオール、エスティ ローダー、ルイ・ヴィトン、バーバリーといったブランドも、その影響を受けています。消費者は、「価格が高いわりに新鮮さを感じにくい商品」に、次第に飽きを感じ始めているのです。高級品業界を分析するマリー・ドリスコル氏は、2024年に『フォーチュン』誌の中で、次のように述べています。
「2019年以降、高級品の価格は大きく上昇しましたが、品質やサービス、魅力がそれに見合って向上したとは言い難い状況です。今年は特に、その傾向がはっきりしています」
ベレッザ氏は、着る人の考え方や価値観が伝わる服装が、今後さらに注目されると見ています。プラダのバッグやジミー チュウの靴を身につけていても、その人らしさが伝わりにくくなっているからです。似たような商品が容易に手に入る現代では、自分らしさをどのように表現するかが重要になっています。
バーバリーはこうした流れを受け、商品に購入者のイニシャルを入れるサービスを開始しました。また、ルイ・ヴィトンも、従来の定番色に加え、より明るく個性的な色使いのデザインを増やしています。
記事の締めくくりでは、かつては「見た目」が富裕層の象徴とされていましたが、美容やファッションが誰にでも手に入る時代となった今では、生き方や日々の行動そのものが成功の指標になっているとまとめています。高級ブランドだけでは満足できなくなり、多くの富豪が、より目に見えにくい形で自らの豊かさを示すようになっているのです。
(翻訳編集 解問)
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