椅子から立ち上がるのが難しいことは、今後数年間における変形性関節症のリスク上昇や生活の質の低下の兆候となる可能性があります。
『Calcified Tissue International』に最近掲載された研究では、椅子から立ち上がるのが難しいと答えた人は、変形性関節症を発症するリスクが26%高く、生活の質が低下するリスクが47%高く、うつ症状が強まるリスクが28%高いことがわかりました。
「椅子から立ち上がるのが難しいことは、身体的・精神的な健康の低下を示す早期のシグナルとなり得ます。この兆候を早期に認識することで、人々は将来の深刻な問題を防ぐための簡単な対策を取る機会を得られます」と、筆頭著者のエム・アズハル・フセイン氏はエポックタイムズに語りました。
特に、研究の調整済みの数値はベースライン時の健康状態を考慮して算出されているため、保守的な推定値である可能性が高く、椅子から立ち上がることが困難な人は、追跡調査の途中で脱落したり死亡したりする可能性が高かったとされています。
椅子から立ち上がる困難の健康への影響
研究者たちは、ヨーロッパ15カ国の50歳以上の成人52,541人を調査しました。SHARE調査の簡単な質問(例:「長時間座った後、椅子から立ち上がるのに持続的(3カ月以上続く)な困難がありましたか?」)に「はい」と答えた人は、いくつかの健康問題と関連していることがわかりました。
「椅子から立ち上がるのが難しいことは、脚の筋力低下、バランスの悪さ、関節機能の障害を反映しています」とフセイン氏は言います。
自然な老化の一部として、私たちは太ももやふくらはぎ、股関節やお尻、腰、腹部の筋肉量と筋力を失います。これらの筋肉は立ち上がる動作や体を安定させるために重要です。
多くの人は1日の大半を座って過ごし、歩く時間も限られています。特に座りがちな生活やレジスタンストレーニングの不足により、立ち上がるのに必要な筋肉が十分に鍛えられていません。
一方、椅子から立ち上がる動作は、単なる筋力だけではなく、バランスや制御力にも依存します。これにより、筋肉を適切に制御し、体が周囲に対してどのような位置にあるかを感知し、動きのタイミングを合わせ、安全に体重を移動させて転ばずに立ち上がることができます。
筋力、バランス、制御力が低下するにつれ、椅子から立ち上がるなどの日常動作がますます難しくなり、転倒や怪我、自立性の低下のリスクが高まります。
「これらの制限は関節へのストレスや痛みを直接悪化させ、特に膝や股関節の変形性関節症との関連を説明する一因となります。長期的には、身体的な不快感と自立性の低下が組み合わさることで、精神的な幸福感や全体的な生活満足度に影響を及ぼします」とフセイン氏は言います。
うつ病と身体的健康が互いに影響し合う仕組み
「身体機能と精神衛生の関係は相互的で、一方が他方に影響を与えます」と、ウェイン州立大学の心理学・老年学教授ピーター・リヒテンバーグ氏はエポックタイムズに語りました。「身体的健康、精神衛生、認知能力はしばしば相互に関連しています」
研究では、うつ症状と身体的健康の悪化(身体機能の制限や慢性疾患など)が、負のフィードバックループによって互いに強め合うことが示されています。
例えば椅子から立ち上がる動作では、「基本的な動作で苦労することは自信を低下させ、社会参加を制限し、依存感を高め、うつ症状の一因となる可能性があります」とフセイン氏は言います。
一方、うつ病はセルフケアや定期的な運動への意欲を低下させ、過食などの感情的な対処行動を引き起こし、身体的健康に悪影響を及ぼします。
また、うつ病は痛みと共通する神経化学的経路を共有しており、頭痛、腰痛、胃痛、関節痛、筋肉痛などを伴うことがよくあります。
放置されると、うつ病は変形性関節症を悪化させ、生活の質を低下させる可能性があります。
特に脆弱なグループ
フセイン氏によると、一部のグループは他のグループよりも影響を受けやすいことがわかりました。
「高齢者、特に70歳以上の人々が最も脆弱でした。椅子から立ち上がる困難は年齢とともに急激に増加し、その後の健康問題とより強く関連していました」と彼は言いました。一方、女性はうつ症状を発症しやすく、生活の質も低下しやすい傾向にありました。
また、「身体活動が少なく、体重が多い、または複数の既存の健康問題がある人は、椅子から立ち上がることが困難になった時点で、より大きな影響を受けやすい」と彼は言います。遺伝的要因よりも生活習慣の要因がより大きな役割を果たす傾向があり、特に長時間の座位や運動不足が関係しています。
早期に気づき、早期に行動する
「椅子から立ち上がる困難は、現在何らかの問題があることを示すリスク要因ですが、放置すればさまざまな健康や精神衛生への悪影響のリスクを高めます」とリヒテンバーグ氏は言います。
椅子から立ち上がるなどの簡単な動作から身体機能の衰えに早期に気づくことで、人々は早めに行動し、より深刻な問題の発生を防ぐ機会を得られます。
「観察された高いリスクのほとんどは、生活の質の低下、うつ症状、変形性関節症など、困難が初めて報告されてからすぐではなく、おおよそ2〜6年以内に現れる傾向がありました」とフセイン氏は言います。
「この(椅子起立)困難は、最も改善しやすいもののひとつです。運動をしていない人でも、筋力やバランスのトレーニングを始めれば、かなりの改善が期待できます。機能回復に遅すぎるということはありません」とリヒテンバーグ氏は言います。
複数のランダム化比較試験に基づくあるレビューでは、漸増的レジスタンス運動が筋力を向上させ、日常生活の機能を高め、変形性関節症の高齢者の痛みを有意に軽減することがわかりました。
すでに椅子から立ち上がる困難などの初期兆候を経験している人に対して、フセイン氏とリヒテンバーグ氏は、さらなる機能低下を防ぐために以下の簡単な対策を取ることを提案しました。筋力やバランスを高めるエクササイズ(ヨガなど)を取り入れた日常習慣を作ること、活動的に過ごすこと、長時間座り続ける時間を減らしてこまめに体を動かすこと、健康的な体重を維持すること、サポートのある運動プロgに参加すること、既存の疾患について医療提供者に相談すること、などです。
「日常の身体動作の小さな変化に注意を払うことで、全体的な健康状態について貴重な手がかりが得られます。椅子から立ち上がることのような小さな困難は見過ごされやすいですが、早期に行動し、活動的に過ごし、長期的な自立性と幸福を維持するための機会となります」とフセイン氏は言います。
リヒテンバーグ氏は高齢者に「老化と向き合う」ことを勧めています。
(翻訳編集 日比野真吾)
ご利用上の不明点は ヘルプセンター にお問い合わせください。