冬に生姜を食べると聞くと、多くの人は「体を温める」「風邪予防」と思い浮かべるでしょう。けれども中医学の考え方では、生姜には二つの働き方があり、使い方を間違えると、かえって逆効果になることもあります。特に冬の生姜の使い方には注意が必要です。
生姜にある二つの力
一つ目は、生の生姜の力です。生姜は温かい性質を持ち、辛みが強く、この辛みは体の表面に向かって広がる働きをします。毛穴を開いて汗をかき、体の外へ寒さを追い出す力です。そのため、体表にとどまっている寒気を散らすには有効ですが、同時に体の温かさのエネルギーも一緒に外へ逃がしてしまいます。
体を温めるエネルギーである「陽気」は、汗をかくことで失われます。陽気が減ると、かえって体は冷えやすくなります。これは、本来、冬は体を守るために陽気を体の内側に蓄え、毛穴を閉じて無駄に汗をかかない、という自然のリズムに反します。例外は、ひき始めの風邪で寒気が体の表面にとどまっているときです。この場合だけは、発汗させて寒さを追い出す必要があり、生姜の表に向かう力が役立ちます。

二つ目は、乾燥させた生姜や、酢と合わせた生姜の力です。こちらは温かさを体の奥へと届け、胃腸や腎を温め、体の深い部分のエネルギーになります。これは、まさに冬に必要な生姜の使い方です。
では、家庭料理の中で、どうすれば生姜の温める力を体の奥に届け、冬に合った使い方ができるのでしょうか。
その答えは、酸味と火の通し方にあります。
下ごしらえで、生姜の働き方は変わる
方法の一つ目は、生姜をみじん切りや細切りにし、油を使わず弱火でゆっくり乾煎りすることです。少し色づき、香りが立つまで火を入れることで、火の力が生姜に入り、辛みが穏やかになります。すると、生姜の性質はより熱を持つようになり、温める力が体の奥、胃腸や腎まで届きやすくなります。
方法の二つ目は、酢を加えることです。黒酢やりんご酢などの酸味には、広がろうとするエネルギーを内側に引き戻す働きがあります。これにより、生姜の温かさが体の表面に散らず、内側へとしっかり届きます。
さらに、栄養のある肉と一緒に使うことで、胃腸の温かさが増し、消化する力も高まります。その結果、肉も重たくなりすぎず、体に取り込みやすくなります。
日本の家庭料理として親しまれている「生姜焼き」に、少量の酢を加えると、冬に特に向いた体を温める料理になります。食べても汗だくになったり、のぼせたりせず、胃が心地よく、体の芯からじんわり温まるのが特徴です。
体を温める薬膳:お酢でさっぱり 豚の生姜焼き
手足が冷えやすい人、体力や抵抗力が弱い人、食欲が落ちやすい人に向いています。
材料
- 豚ロース薄切り、または豚肩ロース薄切り …… 250g
- 生姜 …… 20g(体質によっては30gまで可)
- 玉ねぎ …… 1/2個(約80g)
- 醤油 …… 大さじ2
- 黒酢またはりんご酢 …… 大さじ1
- みりんまたは砂糖 …… 大さじ1
- 日本酒または料理酒 …… 大さじ1
- 油 …… 大さじ1
- 白ごま・青ねぎ …… 少々(お好みで)
作り方
- 生姜をみじん切り、または細切りにし、フライパンで弱火のまま乾煎りします。水分が飛び、少し色づいて香りが立ったら取り出します。
- 肉は広げて準備し、玉ねぎは薄切りにします。
- 醤油、酢、みりん、日本酒を混ぜて調味だれを作ります。
- フライパンに油を熱し、肉を両面をさっと焼いて一度取り出します。
- 同じフライパンで玉ねぎを炒め、柔らかくなったら生姜を加えて香りをなじませます。
- 肉を戻し入れ、調味だれを加え、中弱火で軽く煮詰めて照りを出します。
- 仕上げに青ねぎや白ごまを散らします。
期待できる働き
乾煎りした生姜は、体を内側から温め、その温かさを中心部まで届けます。酢の酸味が温かさを胃腸や腎に引き込み、豚肉が冬に必要なエネルギーを補います。温めながら滋養するため、体が冷えにくくなり、抵抗力の維持にも役立ちます。
食後に大量の汗をかくことはなく、体がぽかぽかと心地よく温まる感覚があれば、温かさがきちんと体に蓄えられている証拠です。大根の味噌汁を添えると、温かさがよりやさしく、体にしみわたります。
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