立春を迎えたこの頃、「肝を整えたほうがいいの?」「何か補ったほうがいい?」「春らしいものを食べたほうがいい?」と不安になる人が増えてきます。
でも、こうした疑問に対する答えは、実は昔の人たちがすでにとても素朴な形で教えてくれています。
昔から、「自然は命を大切にする」と言われてきました。天地が人という命を生み出した以上、試練ばかり与えて逃げ道を用意しない、ということはありません。どの節気の前後にも、自然は必ず、その時期を無理なく乗り越えるための食材を用意してくれています。
だから、食養生は難しく考える必要はありません。いちばん簡単で効果的なのは、「今、たくさん出回っているものは何か」を見て、それを自分の体調に合わせて使うことです。
立春は「体の切り替えポイント」
立春といっても、いきなり春本番になるわけではありません。冬の気配はまだ残り、春のエネルギーがようやく動き始める時期です。
この頃、体には共通した小さな不調が出やすくなります。便秘になりやすい人、気持ちが落ち着かない人、食欲が落ちる人、眠りが浅くなる人などが増えてきます。
原因はそれほど複雑ではありません。春のエネルギーが上に向かって動き始めているのに、まだスムーズに流れていないのです。
五行の考え方では、立春は「木」に属し、肝と関係します。木の性質は伸びていくこと。本来、肝の働きはのびのびとしていて、脾(胃腸)とバランスを取り合っていますが、冷えや湿気、胃腸の弱りがあると、流れが滞りやすくなります。
だから、この時期の食事で大切なのは、無理に補うことでも、無理にデトックスすることでもなく、体の流れを少しずつ動かしながら、偏らせないことです。
立春に、自然がよく用意してくれる食材
この時期、八百屋やスーパーでよく見かけ、値段も手頃なのは、青菜類(ほうれん草、菜の花、春菊)、大根・にんじん・ごぼうなどの根菜、豆腐や豆乳といった大豆製品、そして柑橘類です。
これは偶然ではありません。これらの食材に共通しているのは、刺激が強すぎず、乾燥させすぎず、滞らせず、流れを助けながら体の力を奪わないという点です。
五行の視点で見ると、肝の働きを助けるもの、胃腸を支えるもの、呼吸や巡りを整えるものがちょうどよくそろっていて、「春のエネルギーは動きたいけれど、体はまだ整いきっていない」という立春特有の状態に合っています。
ここからは、現代の人によくある悩み別に、食べ方のヒントを見ていきましょう。
一、立春に便秘になりやすいタイプ
――水分不足ではなく「流れの問題」
立春前後になると便秘になる人は少なくありません。水も飲んでいるし、野菜も食べているのに、スムーズに出ないという場合が多いのです。
このタイプは、腸が乾いているというより、体の流れが滞っていることが原因です。春のエネルギーが動き始めたものの、うまく流れず、胃腸の働きが弱まってしまうのです。
このとき活躍する食材が、大根です。
大根は体の流れを下へ導き、腸の動きを助けながらも、下剤のように体力を奪うことがありません。無理なく「通す」力があります。
おすすめの組み合わせ
- 大根と陳皮、牛肉のスープ
大根が流れを整え、牛肉が胃腸を支えます。
- 大根と生姜のあっさり煮
味噌汁にしてもよく、発酵の力で腸内環境も整います。
- ごぼうと鶏肉の煮込み
体力が落ちやすい人や、便秘が長引いている人に向いています。
これらは、流れを整えながら胃腸を守る食べ方で、無理に出すのではなく、自然に動かすのがポイントです。
二、イライラ・胸のつかえ・眠りが浅いタイプ
――春のエネルギーを上げたいのに、詰まっている
立春になると、気分が落ち着かず、ため息が増えたり、夜、眠りにくくなる人もいます。
これは「のぼせ」ではなく、気の巡りが詰まっている状態です。エネルギーが上にも下にも行けず、体の真ん中で止まってしまうため、気持ちも不安定になります。
このタイプには、青菜が向いています。ほうれん草や春菊など、色の濃い葉物野菜は、春のエネルギーと相性がよく、流れをやさしく上へ導いてくれます。
おすすめの食べ方
- にんにくを少し使ったほうれん草の炒め物
冷やしすぎず、血を養いながら巡りを助けます。
- 春菊のごま和え、または春菊と豆腐のスープ
どれもシンプルですが、この時期にとても合った食べ方です。即効性はありませんが、気持ちが少しずつ楽になっていきます。
三、食後に張る・食欲がない・疲れやすいタイプ
――胃腸がまだ冬モード
立春を迎えても、体はまだ冬の状態のままという人も多くいます。この時期に冷たいものや生ものをとりすぎると、かえって疲れやすくなります。
これは、春のエネルギーは動き始めているのに、それを支える胃腸がまだ整っていない状態です。
この場合は、にんじんや山芋のような、目立たないけれど土台を支える食材が向いています。
おすすめの食べ方
- にんじんと卵の煮物、またはおでん
- 山芋と雑穀のおかゆ
雑穀は胃腸を助け、山芋は体の基礎をしっかり支えます。
胃腸が安定すれば、春のエネルギーも自然に伸びていきます。
柑橘類はどう食べる?
立春前後は、みかんやオレンジがたくさん出回ります。これらは、少量であれば体の流れを助け、胃腸を目覚めさせてくれます。
ただし、空腹時や食べすぎは避けましょう。食後に少し、温かい食事と一緒にとるのがおすすめです。
また、みかんを軽く焼いて皮を焦がし、皮をむいて食べると、体を冷やしにくくなり、巡りを助ける力も高まります。咳や便秘が気になるときにも向いています。
立春の食事は、体の「ギアチェンジ」
立春の食事は、体を「ためる冬」から「動き出す春」へと切り替える手助けです。
特別な食材も、難しい理論もいりません。季節を見て、食材を選び、体調に合わせて組み合わせる。それだけで、自然はちゃんと答えを用意してくれています。
体の声を聞きながら食べていけば、「心地よい」「ちょうどいい」という感覚が、自然とわかってくるはずです。
(翻訳編集 華山律)
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