かつて非常食として棚の奥にしまわれていた小さな魚が、今、グルメの主役として華々しく復活しています。
かつて「いざというときの保存食」として冷蔵庫の奥に追いやられていたイワシが、今や料理業界では大復活を遂げています。ニューヨークなどの都市では高級缶詰魚専門店が次々とオープンし、ポルトガルやスペイン産の厳選イワシが並んでいます。この地味な小さな魚が、思いがけない文化的な注目を浴びるようになりました。
このブームの背景には、手頃な価格で健康的な食品への関心の高まりがあります。イワシは昔からその両方を兼ね備えていました。実際、イワシは最も栄養価の高い食品の一つです。
「イワシは完全タンパク質源で、卵・乳製品・肉類と同等の価値があります」と、登録栄養士で認定糖尿病教育者のヘレン・ティウ(Helen Tieu)氏は語ります。
「20種類すべてのアミノ酸を含み、オメガ3脂肪酸が豊富です」

主な栄養素
「イワシは栄養の宝庫です」とティウ氏は言います。タンパク質以外に特に豊富なのは次の栄養素です。
- オメガ3脂肪酸:イワシはEPAとDHAの強力な供給源です。1缶(85g)には約1.2g含まれ、週2回食べれば十分な量を摂取できます。
- ビタミンD:イワシ1缶で通常150~200IU摂取できます。比較すると、強化牛乳1杯(約240ml)で約100IU、卵黄1個ではわずか20IUです。
- カルシウム:100gのイワシ(標準缶1個分)で382mg。これは牛乳1.5杯以上(約360ml超)に相当します。
- ビタミンB12:ティウ氏はイワシ1缶で成人が1日に必要な量の3~4倍を摂取できます」と話します。
健康効果
イワシは豊富な栄養素によって、心臓・骨・脳の健康を支える機能性食品です。
心臓代謝の健康を向上させる
イワシは、オメガ3脂肪酸とミネラル・アミノ酸の組み合わせにより、炎症と酸化ストレスのバランスを整えることで、心臓代謝の健康を改善します。
2023年の『Frontiers in Nutrition』に掲載されたレビューでは、オメガ3サプリは心臓への効果がまちまちですが、イワシは低コストの天然源としてオメガ3に加え、カルシウム・カリウム・マグネシウム・亜鉛・タウリンを供給し、心血管機能をサポートすると指摘されています。著者は心臓の恩恵を得るために週1~2回の摂取を推奨しています。
同総説では、イワシが赤血球中のEPAとDHAの割合(オメガ3指数)を高め、冠動脈疾患のリスクを低いゾーンまで引き下げられることも明らかになりました。
特に2型糖尿病患者を対象とした研究では、定期的にイワシを食べ続けた人はオメガ3指数が大幅に上昇し、突然の心臓死のリスクが著しく低下するレベルに達したことが確認されています。
さらにイワシは鉄分が豊富で、心臓代謝では見落とされがちですが重要です。鉄欠乏は心血管疾患と関連し、イワシの鉄分は肉類に匹敵します。
2021年の『Clinical Nutrition』に掲載された研究では、前糖尿病の高齢者に標準糖尿病予防食+週200g(約2缶)のイワシを1年間続けたところ、2型糖尿病発症リスクが減少し、血圧と脂質プロファイルも改善しました。
骨を強くする
週1回以上のイワシ摂取で、股関節骨折リスクが33%低下することが報告されています。この効果は、オメガ3が骨損失を促す炎症性物質を抑えることにも起因します。
また、イワシの骨はカルシウムとリンが特に豊富で、骨を強くするには欠かせません。
「一般的なイワシ缶1個で、成人の1日カルシウム必要量の30~40%をまかなえます」とティウ氏は言います。
研究では、イワシが骨粗鬆症の予防や治療に役立つ天然のカルシウムサプリメントとして期待できるとされています。2012年の『Asian Pacific Journal of Tropical Disease』に掲載された研究では、オイルサーディン(油漬けイワシ)の骨は特にカルシウムとリンが豊富で、適度なタンパク質も含むことがわかりました。研究者達は「この骨を粉末にすれば、骨の健康を支え、骨粗鬆症のリスクを減らす天然カルシウムパウダーとして活用できる」と結論づけています。
さらに、イワシに含まれるビタミンDとリンは、体がカルシウムをより効率よく吸収するのを助けますます。ティウ氏はこう続けます。「だからこそ、イワシは骨粗鬆症の予防と管理に、食事からカルシウムを摂る最高の選択肢なのです」
脳と気分の健康を改善する
2022年の『Nutrients』に掲載された研究では、イワシなどの魚から摂るオメガ3を多くとっている人ほど、うつ病になるリスクも、うつ状態が長引くリスクも低いことがわかりました。オメガ3が豊富な食品を習慣的に食べることで、脳をサポートし、全身の炎症を抑えるため、うつ病を予防できると考えられています。
気分を整えるだけでなく、オメガ3は認知機能全体の健康も支えます。
多くの研究で、イワシを含む魚をたくさん食べる高齢者は、特に記憶に関わる脳の領域で認知機能の低下が明らかに遅いことが確認されています。しかも、アルツハイマー病の遺伝的リスクがある人でも同じ効果が得られます。最もはっきりした効果が出たのは、週に4回以上魚を食べている人でした。
その他の嬉しい効果
オメガ3に加えて、イワシにはセレンと亜鉛も豊富に含まれています。どちらも全身の炎症を抑え、免疫バランスを整えるのに欠かせません。
イワシを習慣的に食べることで、自己免疫疾患・関節リウマチ・炎症性腸疾患など、多くの健康状態に関連する慢性的な微弱炎症を軽減できます。
イワシにはヨウ素も含まれ、セレン・ビタミンDと協力してホルモンをつくり、甲状腺の働きを整えます。同時にコラーゲン生成を促し、肌の弾力と潤いを保つため、美肌効果も期待できます。
吸収を高めるコツ
イワシに含まれるオメガ3脂肪酸は脂溶性です。つまり、脂に溶ける性質を持っています。だからこそ、オリーブオイルやアボカドなどの良質な脂質と一緒に食べると、体がオメガ3をぐっと効率よく吸収できるようになります。
「缶詰でも生でも関係ありません。オリーブオイル、オリーブ、アボカド、くるみなど、良質な脂質を必ずプラスしてください。それが体にビタミンを溶かして吸収させ、血液に乗せて必要な働きをさせるのです」と、認定栄養士で元エグゼクティブシェフのアナ・ブエノ(Ana Bueno)氏はエポックタイムズに語りました。
市販のイワシ缶は水煮や植物油漬けが多いのですが、ブエノ氏はこう断言します。
「私は断然オリーブオイル漬けをオススメします。水煮はダメ、純粋なオリーブオイルだけがベストです」
ビタミンDも良質な脂質と一緒に食べると吸収がぐんと高まります。さらにマグネシウムはビタミンDを活性化する働きがあるため、オリーブオイル漬けのイワシをほうれん草・小松菜・ケールなどのマグネシウム豊富な緑黄色野菜と組み合わせると、栄養吸収が一段とアップします。
イワシのカルシウムを最大限に活かすには、柔らかくて骨ごと食べられることが大切です。さらにトマト・レモン・パプリカなどビタミンCが豊富な食材と組み合わせると、吸収がぐんと高まります。
ビタミンB12・葉酸・鉄はチームで協力して、赤血球をつくり、全身のエネルギー代謝を支えます。そのため、ほうれん草・ブロッコリー・レタスなど葉酸や非ヘム鉄の補酵素を多く含む緑黄色野菜と一緒にイワシを食べると、相乗効果でさらにパワーがアップします。
最後に、高温調理はオメガ3脂肪酸を劣化させる可能性があります。中温オーブン焼き・蒸し料理・短時間のソテーなど、やさしく加熱する方法を選べば、貴重な良質脂肪をしっかり残せます。
正しい保存方法
未開封のイワシ缶は常温で最長5年もつように作られています。
非常食のストックに最高の一品です!
「私はこれを『パントリーのソウルフード』と呼んでいます」と、シェフで料理本作家のケニー・マイナー氏はエポックタイムズに語りました。
未開封であれば冷暗所で何カ月でも保存できますが、一度開封したら必ずすぐに清潔な密閉容器に移し替えて冷蔵庫に入れてください。特にオイル漬けの場合は、魚がオイルに完全に浸かった状態にしておくことで、風味・しっとり感・鮮度が格段に長持ちします。
開封後の缶詰イワシは、漬け込まれている液体の種類によって冷蔵保存できる期間が異なります。トマトソース漬けのイワシは最大3日ほど品質を保てますが、水煮や植物油漬けのものは化学的・品質的な変化が起こりやすいため、1日以内に食べきるのがおすすめです。
プロの食べ方
「私はいつもみんなに言ってるんだ。イワシを侮っちゃダメだよ!」とマイナー氏は笑います。食べ方は本当にシンプル。「結局、ピリッとしたマスタードにするか、オイルのままにするか。それだけ決めればいいんだよ!」
手早くグレードアップしたいなら、マイナー氏はこう提案します。イワシをアボカド、レモンの皮すりおろし、唐辛子、ハーブと一緒にトーストの上で潰してのせれば「即席の贅沢」に。また、頭から尾まで串に刺してタイ風スイートチリソースを塗り、表面が軽くカリッとするまで焼いても絶品です。さらに、温かいキヌアやパスタにそのまま混ぜ込むだけで、簡単で風味豊かな一品が完成します。
新鮮なイワシが手に入ったら、ブエノ氏はこう勧めます。「オリーブオイルを回しかけ、岩塩または天然塩をパラリと振り、150~180℃のオーブンでサイズに応じて25~30分焼くだけで最高においしく仕上がります」
注意点
大豆油やひまわり油漬けはなるべく避けてください。これらはオメガ6脂肪酸が多く、過剰になると炎症をまねき、心臓病などのリスクを高める可能性があります。オリーブオイル漬けか水煮を選ぶことで、オメガ3とオメガ6のバランスが崩れにくくなり、体に優しい選択になります。
サーディンは、魚アレルギーのある人にとって安全ではありません。
最近「数日間イワシだけを食べるイワシ断食」が、減量・美肌・頭のスッキリを求めて話題になっています。しかし、極端な食事法は誰にでも適しているわけではありません。ティウ氏はこう注意します。「大量に食べ続けると、特に痛風や腎臓にリスクのある方・既往のある方は注意が必要です」と。さらに「イワシはプリン体を多く含むため、尿酸値が上がり、痛風発作や尿酸腎結石を引き起こす可能性があります」と付け加えました。
缶詰のイワシは塩分が高めの場合もあります。高血圧の方は、減塩タイプを選ぶか、食べる前に軽くすすいでください。
「イワシだけを食べ続けると、食物繊維やその他のビタミン・ミネラルが不足しやすくなります」
レシピ
以下のレシピはブエノ氏からの提供です。
この万能なイワシ料理は、トーストにのせてもよし、クレソンなどのフレッシュな葉物と一緒にラップに包んでもよし、あるいは調理したひよこ豆や白いんげん豆と和えて、たんぱく質たっぷりのサラダにしても最適です。
よりクリーミーでマイルドな味にしたい場合は、無糖ヨーグルトを混ぜてツナサラダ風のスプレッドにすると、イワシの風味がやわらぎます。
地中海風イワシサラダ
材料(2人分)
- イワシのオリーブオイル漬け 1缶
- 有機セロリ(極細みじん切り) 1~2本
- 有機トマト(極細みじん切り) 1個
- 有機パクチー(みじん切り) 大さじ2
- 有機イタリアンパセリ(みじん切り) 大さじ2
- 有機ケーパー(みじん切り) 大さじ1
- 上質オリーブオイル 大さじ1
- 有機紫玉ねぎまたはエシャロット(みじん切り) 小さじ1
- 有機ライム果汁 1/2個分
- 天然塩 小さじ1/4
- 黒こしょう 適量
お好みで
ホワイトチアシード 大さじ1
セラーノ唐辛子 適量
無糖カシューヨーグルト 大さじ2
作り方
1.イワシの皮、骨、内臓は任意で取り除き、次にボウルに入れます。
2.すべての材料を適切に切った後、イワシと混ぜ合わせます。
3.フォークを使って混ぜ、イワシの小さな塊をいくつか残すようにします。
ガラス容器に移して冷蔵庫で最大5日間保存してください。
楽しい豆知識
- 人類は数千年もの間、イワシを食べてきました。古代ローマ時代にまで遡ります。
- イワシの缶詰は歴史が長く、フランスでは1834年ごろから作られていました。この保存方法は、ナポレオン・ボナパルトが軍隊の食糧確保のために食品保存技術の革新を促したことをきっかけに、フランスで広まりました。
- 「packed like sardines(イワシの缶詰のように詰まっている)」の慣用句は、19世紀にヨーロッパでイワシの商業的な缶詰製造が始まった後に生まれました。最初はイワシが缶にぎっしり詰められている様子を文字通り表現するために使われ、その後、今日のように混雑した空間を比喩的に表す表現に進化しました。
- 一部のイワシ種は15年まで生きることができます。しかし、私たちが食べる商業的に捕獲されたイワシの平均年齢は3~5歳です。
- 世界中で一般的に販売されているイワシの品種は20種類以上ありますが、すべてのタイプが同じ健康効果を持っています。
子ども向けのヒント
子どもとイワシは自然な組み合わせに見えないかもしれませんが、イワシの栄養密度の高さから、成長中の脳と体にぴったりのスター食材です。小さなお魚に子どもを興奮させる方法がいくつかあります。

イワシを馴染みのある形で紹介すれば、より魅力的に感じるでしょう
- ご飯、きゅうり、アボカドを使ったお子様向けの巻き寿司、そしてしらすフレークのピザを添えます。
- イワシをクリームチーズかギリシャヨーグルトと一緒にフォークで潰し、レモン少々とマイルドなスパイスを加えて、クラッカーや野菜スティックのディップにします。
- トマトソースやクリーム系のパスタソースにこっそり混ぜ込めば、子どもはまず気づきません。
- タコスやケサディーヤもまた大人気です。しらすフレークをチーズ、アボカド、マイルドなサルサと一緒にして、子どもたちに自分だけの食事を作らせましょう。
7歳のマラナさんと、5歳の弟コアくんは、物心ついたときからずっとイワシが好きです。イワシを試すのをためらっている子どもたちに向けて、マラナさんは「美味しいし、パワーが出る魚だよ」と励ましの言葉を贈りました。
医学的レビュー:ジミー・アーモンド医学博士
(翻訳編集 日比野真吾)
エルダーベリー:風邪やインフルエンザと戦う免疫の守り手
『オレガノ』 料理を彩り、健康を守る万能スパイス
ローズマリー:認知力を高める愛のハーブ
黒豆:毎日の健康を支えるパワーフード
ライム:免疫力を高め、腎臓結石の予防にも役立つフルーツ
アボカド:心臓、脳、目を守る――その効果を最大限に引き出す方法
バナナ:消化、気分、血圧をサポート――その効果を最大限に引き出す方法
マンゴー:腸と脳をサポート――吸収を高める食べ方
リンゴが脳卒中を防ぎ、腸を養う—最大限に活用する方法
卵:脳と筋肉を支える完全タンパク質
ケフィア:世界最古級の飲料が腸内細菌の多様性を高める
イワシ:心臓代謝と骨の健康を高める栄養の宝庫
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