大寒では、お腹が張る、下痢をしやすい、食欲がわかないといった、胃腸の不調を感じる人が多くなります。これはたまたま起こるものではなく、季節の変化が体に影響したからです。
大寒は、一年の中でもっとも寒さが厳しい時期であり、同時に冬の終わりにあたります。さらに重要なのは、大寒が単に「寒さのピーク」というだけでなく、季節が切り替わるために「土」の気が大きく働く節目であるという点です。古くからの中医学では、土は体の中心を支える存在で、特定の季節を司るのではなく、体を育て、つなぎ、変化させる役割を持つと考えられてきました。季節が入れ替わるタイミングでは、この土の気が必然的に強まるとされています。
そのため、大寒の頃は寒さが目立ちますが、実際には土の気が体の内側で活発に動いていて、影響を及ぼしている時期なのです。
寒さ・湿気・風が重なり、胃腸が影響を受けやすい
土の気が強くなると、それに引き寄せられるように湿気も増えてきます。湿気は重く、体の中にたまりやすい性質があります。そこに大寒の強い寒さが重なることで、冷えと湿気が合わさり、胃腸の働きが特に鈍りやすくなります。
人体の胃腸は「土」に属し、自然界の土の気と影響し合います。自然界の土の気が急に強まると、胃腸は外からの湿気の影響を受けながら、寒さの中で消化や吸収を続けなければならず、どうしても負担がかかってしまいます。
また、立春が近づくにつれて春の気配も少しずつ生まれ始めますが、まだ寒さが強いため、その流れがスムーズに進みません。その結果、風のように動く春のエネルギーが滞り、体の中で乱れやすくなります。これが肝の働きを妨げると、胃腸を圧迫する形になり、消化のリズムがさらに崩れやすくなります。
このように、大寒の時期の胃腸トラブルは、寒さ・湿気・風の影響が重なって起こります。お腹の張り、軟便、消化が遅いといった症状は、胃腸の流れがうまく回らなくなっているサインです。
大寒の養生は「胃腸を守ること」がいちばん大切
だからこそ、大寒の養生で大事なのは、単に体を冷やさないことだけではありません。胃腸の働きを安定させ、体の中の冷えや湿気をため込まないことが大切です。
胃腸が安定すると、余分な湿気は自然と外に出やすくなり、お腹の調子が整うと、体の巡りも乱れにくくなります。土の気をしっかり守ることで、春のエネルギーも無理なくつながっていきます。
昔の人が大寒を特別に大切にしてきたのは、冬を元気に締めくくれるかどうかだけでなく、次に迎える春を健やかに過ごせるかどうかが、この時期にかかっていると考えていたからです。
日本に残る「冬の土用」の食の知恵
中医学の考え方のもとになった五行の思想は、日本にも比較的そのまま伝わっています。今でも日本では、曜日に日・月・火・水・木・金・土を使い、さらに各季節の終わりに「土用」と呼ばれる期間があります。冬の土用は、大寒から立春前までの、土の気が中心になる時期です。
そのため、日本の昔ながらの食事では、この時期に体を温め、胃腸を整え、余分な湿気をためず、体の巡りを穏やかに保つことが重視されてきました。各地の郷土料理には、こうした季節の流れに寄り添って生まれたものが多く残っています。
鮭の粕汁――冬の土用にぴったりの体を整える汁物
兵庫県の郷土料理である鮭の粕汁は、まさに冬の土用に合った養生料理です。
酒粕は、お米などの穀物を発酵させてできたもので、胃腸の働きを助け、お腹の環境を整えるのに向いています。味噌と一緒に使うことで、消化を助ける力がさらに高まります。大根はお腹の張りをやわらげ、にんじんは体を穏やかに養い、血の巡りを助けます。鮭は体を温める性質があり、栄養が豊富でありながら重たくなりすぎず、寒さと湿気で胃腸が弱りやすい時期に特に向いています。
さらに、生姜やねぎを加えることで、体の中の冷えや湿気を外に逃がし、気分や体の巡りもすっきり整えてくれます。
大寒は、冬の締めくくりであり、春への準備期間でもあります。この時期の養生は、無理に栄養を取りすぎることではなく、体の土台である胃腸を安定させ、春を迎える余裕をつくることが大切です。
冬の土用の養生スープ:鮭の粕汁

材料(2~3人分)
- 鮭 …… 200~250g
- 大根 …… 150g
- にんじん …… 80~100g
- 酒粕 …… 60~80g
- 味噌 …… 30~40g
- 生姜 …… 10~15g
- ねぎ …… 1本
- 水または薄めの昆布だし …… 800~900ml
お好みで
- 昆布 …… 少量
- 日本酒 …… 大さじ1
- 白こしょう …… 少々
- ごま油 …… 数滴(仕上げ用)
作り方
- 大根とにんじんを水で煮て、透き通ってくるまで火を通します。
- 鮭を加え、火が通るまでさっと煮ます。
- 酒粕を煮汁で溶き、味噌と一緒に加えて弱火でなじませます。
- 生姜とねぎを加えて火を止め、仕上げに白こしょうを少しふります。
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