6月初めに迎える節気は「芒種(ぼうしゅ)」です。旧暦では五月節に当たり、毎年陽暦6月5日から7日の間に移ります。中華圏ではこの時期に「芒種蝶仔討無食」という俗諺があります。これは芒種になるとほとんどの花の季節が終わるため、蝶が花粉を集めにくくなることを伝えています。別の角度から見れば、仲夏(真夏)が到来し、1年も中間点に近づいたということです。
「芒種」という名称の由来
「芒種」という節気の名称はどのように生まれたのでしょうか? 答えは「芒」と「種」の二文字にあり、この節気における農事現象を反映しています。
- 実った麦や稲の穂に芒(のぎ)が見られる。
- 芒のある穀物が実って「種」となり、収穫できる。一般的に夏は温帯地域で大麦、小麦、早稲の主な収穫期です。
- 芒のある穀物を栽培する農家は、この時期に種まきの準備をします。『月令七十二候集解』(主に黄河中下流域を対象)には「芒種は五月節、有芒の種穀を稼種す可し」とあります。
暦書は「芒種、この時有芒の穀を種う可し、これを過ぎれば失敗す」と強調します。南宋の陸游の詩『時雨』は、芒種の農忙の様子を「時雨芒種に及び、四野皆插秧す」と描いています。この時期、農民は収穫と田植えに忙しく、「芒種」には「忙種(忙しい種まき)」という意味も込められています。
古代中国の民諺に「春は日を争い、夏は時を争う」とあるように、李紳の詩『憫農』にも「田を鋤くは日中を当たり、汗は禾下の土に滴る。誰か念う盤中の飧、粒粒皆辛苦」とあります。食卓の穀物は簡単に手に入るものではなく、一粒一粒が苦労の結晶なのです。
芒種の養生
仲夏の芒種節気では、農作業の忙しさだけでなく、除湿養生にも注意が必要です。収穫した穀物を活用して健やかに過ごしましょう。
1. 梅雨入り対策でカビを防ぐ
「水郷芒種の後、梅天風雨涼し」。芒種が来ると梅雨も訪れ、長雨が稲の苗を育てる一方で、大量の湿気をもたらします。高温多湿は蚊や虫を増やし、カビを発生させ、感染症を増加させます。人体も湿疹などの不調を起こしやすくなります。
芒種の時期は除湿を怠ってはいけません。除湿はカビの発生を抑えます。室内に木炭や竹炭を置くと吸湿・防湿効果があります。カーテンを開けて陽光を取り入れ、窓を開けて空気を入れ替えることで、室内の陰湿を追い払い、陽気を高めます。

2. 精を補う一つの宝
仲夏の芒種節気は暑熱が激しく発汗も多いため、精力を消耗しやすく、精神も萎えやすい時期です。伝統中医学では穀物を摂取することを推奨します。五穀は精を養い、粥の米油は精を生むとされます。『黄帝内経』に「汗は精気なり」「精は穀に生ず」「五穀は養なり」とあり、発汗の多い夏に穀物を食べて精力を補うのは良い選択です。
では、穀物をどのように食べれば養生の目的を達成できるでしょうか? 清代の『養生三要』は「粥を食して精を補う」ことを推奨し、「淡く穀物の味を食すのが最も精を養う」としています。同書には「世間の物の中で、ただ五穀のみが味の正しきを得る。淡く穀物の味を食するのみが最も精を養う。粥や飯を煮るとき、中に厚い汁が一団となって転がるものは、これは精の精液が集まったものであり、これを食すれば最も精を生む。試してみれば効果あり」とあります。ここでいう「厚い汁が一団となったもの」とは、粥が炊きあがったときに表面に浮かぶねばねばした濃い汁のことで、粥油と呼ばれます。

元代の『格致余論・茹淡論』は粳米(うるち米)を称賛し、「あの粳米の甘く淡い味は土の徳なり。物の中で陰に属し最も補うものなり。ただ菜と一緒に進むべし」と述べています。特に、粥は淡い青菜と一緒に食べ、肉類などの濃厚な味のものと組み合わせないことを強調しています。
一般的に、濃い粥の水と米の比率は15:1〜20:1(米1に対し水15〜20)です。水の量は鍋と煮る時間によって調整します。粥油を出すコツは、水と米の比率を正確に守り、一度に水を十分に加えることです。途中で水を足さないようにしてください。そうすると粥油が壊れ、粘り気と香りが大幅に落ちてしまいます。
また小麦も暑熱の煩いを和らげます。『本草綱目・穀部之一』に「消渴心煩には小麦で飯や粥を作って食す」とあります。仲夏に穀物粥で精を養う際は、焼き物や揚げ物、体を温める性質の強い補養食は控えめにするのが望ましいでしょう。摂りすぎると、のぼせ(上火)を招いたり、体のうるおい(津液)を消耗しやすくなるためです。
3. 陽を升し、熱を清め、湿を除く
(1)日光浴で陽気を吸収し、寒湿を除く
日光浴は盛夏の陽気を吸収し、体内の寒気を除去します。体内に湿気が多い人には余分な水分を代謝する効果もあります。ただし、仲夏の太陽は非常に強いので、朝早くまたは夕方日没前に日光浴をするのが適切です。熱中症に注意してください。
(2)入浴をこまめに行い、陽を升し熱気を排出する
暑気は耐えがたく、夏は汗で体がべたつきます。お風呂は汗や汚れを落とし、体をすっきりさせます。ぬるめのお湯で入浴すると毛穴が開き、体内の陽気が昇発され、熱気も発散しやすくなります。通常、人体温に近い35℃~37℃程度のぬるめのお湯がおすすめです。
まとめ
芒種の節気は、暑熱の中で農作業が忙しく、稲の収穫が行われます。高温多湿で体は負担が大きく、人も疲れやすい時期です。しかし、天は生命を養う術を与えてくれ、穀物粥という宝で精を補い力を養うことができます。物事には両面性があります。どのように賢く活用するかは、自分の体得次第です。
(翻訳編集 日比野真吾)
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