完璧主義のパンデミック──何がその背景にあるのか?

カーラ・ブランケンシップさんは、「子どもは口答えをせず、言われたことに従い、周囲の期待に応えようと努力すべき」という文化の中で育ちました。家族の長女だった彼女は、良い成績を取ることで褒められ、自分の価値は周囲を満足させられているかどうかで決まるものだと考えるようになっていました。

外から見れば、彼女は大学で音楽を専攻する申し分のない優等生でした。しかし、その内面では、すべての教授の助言に応えようと必死になり、失敗を一切許さない高すぎる基準を自分に課し、そもそも自分が目指している学位を本当に望んでいるのかさえ分からなくなっていました。

完璧を求め続ける姿勢は、彼女の自己肯定感を揺るがし、人間関係にも悪影響を及ぼしていました。

「『自分はあの人たちより優れている』と思うようになってしまいました」と、ブランケンシップさんはエポックタイムズに語りました。

「他人に寛容になれなくなっただけでなく、自分自身にも優しくできなくなっていたのです」

2000年以降、完璧主義の増加は特に著しくなっており、研究者たちはこれを「完璧主義のパンデミック」と表現しています。

かつての完璧主義は、主に自分自身が課すものでした。しかし現在では、自分自身によるものに加え、社会から課される完璧主義も広がっています。そして、メンタルヘルスの問題の発生率は、完璧主義の割合と一貫して関連していることが分かっています。
 

私たちは「完璧主義のパンデミック」の時代にいるのか?

完璧主義とは、単に何でもそつなくこなす人の性格的特徴ではありません。臨床心理士であり、「Cultivating Excellence Podcast」のホストを務めるレベッカ・レズニック氏は、エポックタイムズの取材に対し、完璧主義は深刻な健康問題を引き起こし得るものであり、それ自体が公衆衛生上のリスクであると話しています。

完璧主義は、考えすぎや低い自己評価として現れることもありますが、それだけではありません。不必要に大学を中退したり、一度に大量の飲酒をする「ビンジ飲酒」につながることもあり、身体の健康にも危険な影響を及ぼす可能性があるといいます。

「これは、プレッシャーに耐えられない大学生がたまにいるというような、限られた問題ではありません」と、レズニック氏は述べています。

自己に課す完璧主義とは、高い目標を追い続けながらも決して満足できず、慢性的に自分を疑い、他人からの期待を不公平で過剰かつ自分ではコントロールできないものと感じる状態です。

一方、社会的な影響を受ける「完璧主義への懸念」は、さらに速いペースで増加しています。これは、優柔不断、失敗への恐れ、他人から否定的に評価されることへの恐怖などを伴います。

学術誌『Psychological Bulletin』に掲載された最新の研究の筆頭著者であるトーマス・カラン氏は、社会的な影響を受ける完璧主義が、この35年間にわたって着実に増加してきたことを明らかにしました。

2020年には、心理学者のゴードン・フレット氏とポール・ヒューイット氏が論文を発表し、完璧主義が広範囲に広がり続けている現象を「完璧主義のパンデミック」と呼びました。

今回の研究の著者も、この見解に同意しています。

「今回の結果は、若者のメンタルヘルスをめぐる最近の議論に、新たな背景を示しています」と、カラン氏は声明で述べています。

「スマートフォンやソーシャルメディア(SNS)が多くの原因として挙げられていますが、完璧主義の増加はSNSが普及する以前から始まっています。この研究は、もっと根本的な要因が働いていることを示唆しています」

この研究では、極めて高い自己基準と、失敗や他人からの評価に対する強い不安が組み合わさることで、メンタルヘルスの状態が特に悪化しやすいことが示されています。

さらに深刻な健康問題との関連も確認されています。学術誌『Journal of Personality』に掲載されたメタ解析によると、自己に課す完璧主義と社会的に課される完璧主義の両方が、自殺念慮と関連していました。また、完璧主義は摂食障害や、死を目的としない自傷行為とも関連しています。

カラン氏は、若者のメンタルヘルス危機に対応するには、このようなプレッシャーを生み出している文化的・経済的な環境を見直す必要があると述べています。
 

経済的な影響

カラン氏の研究では、2024年までの25年間にわたるデータを分析し、アメリカ、カナダ、イギリスの3か国で、完璧主義の割合が特定の経済状況と連動していることが分かりました。

国内総生産(GDP)によって示される景気が低迷すると、高い目標を達成するために努力し続ける「ストライビング(高い目標への努力)」が増える傾向がありました。

ストライビングは完璧主義の中でもより複雑な形態であり、卓越性を目指す動機となる場合には必ずしも不健康ではありません。しかし、「うまくやらなければ自分は価値がない」といった感情的な動機に支えられるようになると、有害なものになります。

言い換えれば、ストライビングとは、自分に対して高すぎる目標を設定することです。一方、完璧主義への懸念とは、その目標を達成できなかった場合に、自分の将来がどうなるのかという感情や思考のパターンを指します。

完璧主義への懸念は、失敗への恐怖、挫折後の羞恥心、自分の価値を成果だけに結び付ける考え方と密接に結び付いています。この組み合わせは、より深刻な悪影響をもたらし、貧富の格差の拡大と歩調を合わせるように増加していることが研究で示されています。

「経済格差が広がると、失敗することへの恐れや、他人の評価を過度に気にすることが、若者の心理の中心的な特徴になっていきます」と、カラン氏は話しています。
 

親の影響

レズニック氏によると、親の不安が子どもへと伝わることも、完璧主義を助長する一因になっている可能性があります。子どもに失敗してほしくない、あるいは経済的な不安を抱える親は、特定の学校や職業を勧めることがあります。

「将来が見えないという不確実性は、人がストレスや不安を感じる大きな要因です」と、レズニック氏は述べています。

「親の不安は、意図しているかどうかにかかわらず、子どもに『一定レベルの成果を達成しなければならない』というプレッシャーとなって伝わります。親は、それが子どもを守ることになると考えているのです」

カラン氏の研究では、大学生は、そのプレッシャーが自分自身ではなく社会から来ていると理解していても、優秀でありたい、成功したい、そして完璧に見られたいと強く望んでいることが示されています。

レズニック氏は、親は子どもが本当の意味で自分自身を大切にできるよう育てることで、良い影響を与えられると話します。また、完璧な成績平均点(GPA)、吹奏楽部でのトップパート、スポーツでのレギュラー入りなどを過度に重視すべきではないとしています。多くの場合、他の親がそうしているからという理由だけで、無意識に成果に価値を置いてしまうのです。

「親は意識的に、有害な文化的影響から抜け出すことができます」と、レズニック氏は述べています。

「それはやがて広がっていきます。十分な数の親が『もう十分だ。自分の子どもにはこんなことはしない』と言うようになれば、そのとき社会は変わり始めるのです」
 

本当に大切なものを見つめ直す

ブランケンシップさんが完璧主義を克服するまでには、長い時間がかかりました。

最終的に彼女は、本当に望んでいた仕事へと進路を変更しました。現在は「Optimize Wellness」というメンタルヘルスとウェルネスの支援施設で、カウンセラー兼臨床責任者を務めています。彼女は学びの過程で、完璧主義的な考え方から抜け出すことができました。

彼女が最も大きな学びとして得て、相談者にも伝えていることがあります。それは、完璧主義は「固定マインドセット」であり、「成長マインドセット」ではないということです。

新しいプロジェクトに取り組み、それを人に見せるときには、結果や他人の評価への執着を手放すことが、大きな解放につながると彼女は言います。

「最初からすべてを完璧にする必要はありません」と、彼女は語ります。

「必要なのは、とにかく始めることです。失敗しなければ成長はできません。間違いをしなければ、本当の意味で学ぶこともできません。それが私にとって、大きな転機となりました」

(翻訳編集 井田千景)

イリノイ大学スプリングフィールド校で広報報道の修士号を取得。調査報道と健康報道でいくつかの賞を受賞。現在は大紀元の記者として主にマイクロバイオーム、新しい治療法、統合的な健康についてレポート。