中国伝統文化:「親迎」 なぜ新郎は新婦の実家まで出迎えるのか?

【大紀元日本5月9日】中国では現在結婚式のとき「親迎」という風習があり、新婦のところへ新郎の家族、親戚、友人達が訪問して冗談などを言って楽しく会話し新婦を励まそうとする習慣がある。なぜ新郎は新婦を迎えに行くのか?という質問に主に3つの理由がある。

1)新婦への尊重を表し、新婦が夫に従う意味であると言われている。

2)これは夫婦関係が完璧に確立されるか否かの基本的なよりどころとなる。中国古代では「親迎」しなかった場合は夫が死亡した後、妻は再婚することができる。しかし、「親迎」を行った場合、夫が死亡しても再婚は許されない。

3)陽動陰静によると女性とは生まれつき恥を重んじる性質をもっていることから、必ず男性が自発的に迎えに行く。これが現在中国人の普遍的な考え方となった。

中国の伝統的な結婚の儀式は約3千年前の西周時代に周公旦(しゅうこうたん)氏が日常的な礼儀を含む、秩序などを維持するために様々な決まりを確立した「禮制」の中に既にあった。そられは、納彩(ナツァイ。縁談を持ち込む)、問名(ウェンミン。氏姓を確認)、納吉(ナジ。氏姓確認済みの知らせ)、納征(ナゼン。結納)、請期(チンチ。結婚期日を確認)、親迎(チンイン。新婦を迎えに実家挨拶)の「六禮」である。しかし、現代社会では古代のような繁雑な形式を簡略化し、今でも守られているのが「親迎」だけとなった。

「六禮」の内、「親迎」だけが夕方に行われ、他の5つの手続きは全て朝に行わなければならない。また、新婦の実家を訪ねる際に必ず贈り物として「大雁(オオヒシクイ)」を持参しなければならない。何故なら、オオヒシクイは渡り鳥で秋に飛び立ち、春には必ず同じ場所に戻る、そして、一夫一妻制であることから、夫婦間で必ず約束を守り、互いに忠誠すること誓う。さらに、オオヒシクイは飛ぶ際に秩序よく隊列を作り、健康で年長なものが先頭になり、弱くて年配なもの小さな子供らがその後についていることから、人の年長者と年少者間の関わりに一定の秩序を保つことを諭すといわれている。

中国古代で「問名」は結婚をする前の重要な段取りである。結婚する前に必ずお互いの氏姓や生年月日を確認する。男女が同じ氏姓であれば子孫に恵まれないと言われており、新婦と新郎の生年月日などの相性も重視され、両方に良い結果が出れば結婚の話しが進められることになる。

さて、結婚当日は、新郎は新婦の実家まで出迎えるが必ず「昏(フェン。日没の約1時間半前の時間帯)」の時に行う。「婚姻(フェンイン)」と言う言葉がここに由来するのだ。即ち、新郎が「昏」(婚と同じ発音)の時間に新婦を迎えに来て、新婦は「因(姻と同じ発音)之而去」な故に、縁を結んでからそこを去るのである。

因みに、日本の伝統的な「結納」とは、仲人(使者)が男性側の家を訪れ、結納品「結納金」を預かり女性側の家を訪れ結納品を渡す。また、女性側から結納品を受け取った証拠としての「受書」及び結納品「お返し結納品」を男性側へ渡す。仲人が男性側からの「受書」を再び女性側の家を訪れ渡す。これで結納の取り交わしが全て完了する。最後に、祝い膳で仲人の労をねぎらう。

中国大陸では「六禮」の内容は既に知られなくなったが、無意識の中で古代の伝統的な礼儀「親迎」を受け継いでいる。それらの背景にあるものや深い意味を知った時、きっと中国の伝統文化が広くて深いことに改めて驚かされることであろう。

(翻訳編集・豊山)