孔子が説く「君子の道」

一、君子の徳行

孔子曰く、「顔回は君子の徳行を四つ持っている。一つ目は仁義を貫く事、二つ目は人の勧告を素直に受け入れる事、三つ目は官職に慎重で謙虚である事、四つ目は日頃の行いを慎んでいる事。史鰍も君子の徳行を三つ持っている。一つ目は官職がなくても上の者に忠誠を尽くす事、二つ目は祭祀を行わなくても神様を尊敬する事、三つ目は自分に厳格であり、他人に寛容である事」

曽参曰く、「私はいつも先生の素晴らしい行いを拝見していますが、自分にはとても無理です。その一つ目は、人に長所が一つでもあれば、百個の欠点を許してあげる事、二つ目は人の利益でも自分の利益のように嫉妬しない事、三つ目は良い話を聞いたら積極的に実践し、疎かにしない事。先生のこの三つの行いを知っているのにできない私は顔回と史鰍に及ばないことだ」

二、子貢はずっと後退する

孔子は曰く、「私が死んだ後、子夏はずっと進歩するが子貢はずっと後退する」

曽参は「それはどうしてですか」と聞いた。孔子は、「子夏は自分より強い人の方を好むが、子貢の周りには自分に及ばない人たちが多く、自分の意見を発表するのが好きだ。どんな人なのかはその人の父親と友人を見れば分る、どんな君主なのかはその君主が任命した使者を見れば分る、どんな土地なのかは生えて来た植物を見れば分る、というような事を聞いた事がある。良い人といると蘭の栽培室に入ったかのように、いればいるほど香りが分らなくなる、自然と蘭の香りがうつったのである。悪い人といると、魚市場に入ったかのように段々生臭いにおいも感じなくなる。その臭いが身に染みついてしまったからである。赤い顔料に物を入れると赤くなり、黒い漆に物を入れると黒くなる。君子は周りの人を慎重に選ぶべきである」

三、もし水が船に入ったら

孔子曰く、「水がないと船は動かず、水が船に入ったら船は沈む。君主は国民がいなければ国を治めることもできず、国民の権力が君主より大きくなれば国を治められなくなる。君主の行いは慎重にし、国民も制約しないといけない」

四、孔子が説く「君子の道」

斎国から来た高庭が孔子に言った。「私は為幾山河を越えて君子の道を教わる為先生に会いに来ました。是非教えてください」。孔子曰く、「常に純粋で素直な気持ちを保ちなさい。それが人としての根本である。普段は慎重に振る舞い、自分の意志をしっかりと見守り、仁義を実践し続ける事。才能がある君子に出会えたら、謙虚に学習し、才能もなく卑劣な人から離れなさい。才能がある君子には決して嫉妬してはいけない、彼の行いを素直に見習うべきである。そうすることによって、遠方にいる人でも兄弟のように親しい関係が保つことができる。その逆であれば、身近な人でも上手く付き合いをすることができなくなる」

日常生活の中で、人を傷つける言葉を発さず、後悔しないよう言動を慎むことは、容易ではない。一生の間に過ちを犯したことがなくても、不適切な言葉一つで人生に汚点をつけてしまいかねない。故に、君子になるには何時でも何処でも何に対しても慎重に行うことが肝心である。

(翻訳編集・蘭因)