中国、裏町の片隅で

【大紀元日本10月20日】

裏町の片隅に老人が静かに座っている。車で通った私はついブレーキをかけた、彼をびっくりさせないように。

こっそり近づいて見ると、元気のない彼は心配そうな顔をしている。周りは「くず」だらけだった。

彼に声をかけてみると、人とあまり話していないせいか、彼はゆっくりと口を開いた。

誰もが幸せな家庭を持っていると思っていたが、彼の家庭は? これが彼の財産のすべてだという。鍋の中に残っていた蟹は近くの飲食店から拾ってきたものだと教えてくれた。

彼は子供の話をしたとたんに、目に涙が溢れた。見知らぬ人の前で泣いた彼は、どうしたらよいか分からない様子で、頭を下げ、手で涙を軽く拭き取った。

どのように慰めてあげたらいいかと悩んでいるうちに、彼は何かに気がついたように、「部屋」に戻って、かごを出した。

近くにある飲食店がお客の食べ残しをごみ捨て場に出している。直面しないといけない現実が、彼を悲しみの記憶から覚めさせたようだ。

ごみ捨て場には、臭いにおいが充満している。自尊心のためなのか、彼はずっと頭を低くして、黙って生活に必要なものを捜していた。

何か別の話をしようとしたら、彼は急に頭を上げて私を見つめた。

目が合った瞬間、私の心はなぜか激しく震えた。

あの目は何を言おうとしているのか。繁華な都市で生活している私は、裏町にたたずむこの風景の意味を、永遠に読みとれない気がする。

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