【ノンフィクション】ナンシーのカルテ(5)

【大紀元日本8月27日】ナンシーが私のクリニックを最後に訪れてから、だいぶ日が過ぎた。私の推測では、彼女の化学療法は第一段階と第二段階を過ぎたはずだ。知らせがないのはよい知らせだ、と自分に言い聞かせ、ナンシーが回復していることを願った。

ナンシーがクリニックを再び訪れたのは、私が彼女のことを考えていた矢先だった。彼女は、車椅子に乗せられて、体は三分の一くらいに萎んでいた。以前の彼女は、体が大きく、自信満々な感じだったが、今はとてもその頃の面影はない。最も驚いたのは、彼女の目、鼻、耳などから血が滲みでていることだった。血の滲んだ汗が、彼女の肌から流れていた。このような症状を、私は見たことがなかった。私は、ナンシーの夫に、彼女をすぐにでも救急病院へ連れて行くよう提案したが、意外にもナンシーは強い口調で反論した。「いいえ!もうあの場所へは、二度と行かないわ。もう一度行けば、私はもうその部屋から出ることができなくなる!」

ナンシーの目からは、血の滲む涙がこぼれた。彼女は、弱々しくなりながらも、これまでの経緯を話してくれた。

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