工場従業員数千人による抗議要求、政府が承諾=河南省

【大紀元日本8月20日】河南省濮陽市にある国営企業・林州鉄鋼(以下、林鋼)が私営企業へ売却されることをめぐり、大幅な人員削減や、少ない補償金制度を不服として、従業員らが11日から工場を占拠していた事件で、地元政府の幹部が工場へ赴き、交渉に応じた。15日朝、双方は私営企業への売却の暫時停止、補助金の増加などを条件に合意に達し、従業員らは人質として捕えていた政府職員を解放した。

林鋼は40年の歴史を持ち、5,000人あまりの従業員を抱える国営企業。先月、同企業は私営企業「鳳宝」に売却され、大勢の従業員が解雇された。従業員らは、解雇や、補償金が少なかったことを不満とし、今回の事件へと発展した。従業員らは、政府職員を人質に取って工場を占拠し、敷地内に入ろうとする武装警察と数回衝突した。

河南省政府の幹部は、占拠された工場へ赴き、企業売却の暫時停止と補助金増加などに協議の上合意した。現在従業員は、政府幹部の履行を待っている。

工場従業員による抗議事件が多発

今年7月末、吉林省通化鉄鋼グループの従業員約3万人が、鉄鋼業界再編による経営悪化を不満とし、抗議事件を起こしている。この事件では、同企業を買収した民営企業の社長が殴殺され、デモ中の労働者数百人が負傷するなど、大規模な抗議へと発展し、波紋を呼んだ。

現在、中国鉄鋼業界では、企業の買収・合併制度が改正され、多くの労働者に失業や賠償金の問題が発生し、抗議事件のきっかけとなっている。これは中国政府が推進する「国退民進(国有企業が退出し、民営企業が参入する)」の中で、国有資産の売却が適切に行われていないからだと専門家は分析する。

今回の林鋼売却問題について、林鋼のある責任者は 「今回の売却は、主に政府が決定し、公開落札という方法をとった。しかし、政府は落札する企業の実力や経営方針、また人事が適切かどうかといった問題を考慮していなかった」と不満を述べた。

中国憲法では「一切の権力は人民に属する」と規定されており、中国は社会主義国家であると謳われている。しかし、国営企業の「主人」であるはずの労働者には、国営企業が私営化される過程において、発言権を与えられていなかった。今回の林鋼売却事件については、政府が「主人」の要求を聞き入れた稀なケースといえる。

(翻訳編集・坂本)

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