亡命の中国人女医、再び新書出版 中国エイズ大規模感染の真相

中国民間エイズ感染支援の第一人者」と称される医師・高耀潔氏(83)はこのほど、米コロンビア大学で「中国のエイズ感染の真相を明かす」と題する新書の発表会を開いた。高耀潔氏は、当局が血漿買収の政策を遂行していたことや、業者のずさんな現場管理、偽薬販売の黙認、その結果生じたエイズの大規模集団感染の後も、真相を隠ぺいしようとしたことなどを綴り、同著の出版を通して中国でのエイズの真相を明らかにしたいと語った。

 中国河南省中医学院教授を務めた高耀潔氏は、エイズ感染被害者への救済活動が評価されて、02年にはタイムズ誌で「アジアの英雄」と評されたこともある。また、「アジアのノーベル賞」と呼ばれるマグサイサイ賞など多数の賞も受賞したが、当局の軟禁により授賞式に出席することができなかった。高氏は当局の迫害から逃れるため、昨年8月、82歳の高齢で密かに出国し、現在、米国に事実上亡命している。

 昨年末、高耀潔氏は中国におけるエイズ感染者の生存状況などを記録した自著のドキュメンタリー「血の災い 1万通の手紙」(英語版)を出版した。「私が米国に脱出したのは、3冊のドキュメンタリー本を出版するためです。こんな年なので命は惜しくありません。私が死んでしまったら、これらの真相は永久に闇に封じ込められてしまいます。国際社会に知ってほしいのです」と語っていた。

 90年代半ば、中国政府が血漿買収の政策を打ち出した。中国中部の河南省を中心に、各省で、現地政府支援の多くの血漿買収業者を通して、貧困農民の血液が買い取られ、製薬会社に売られた。しかし、極めて不衛生な設備とずさんな採血方法のため、大規模なエイズ集団感染が発生し、「エイズ村」と呼ばれる村落がたくさん現れる結果となってしまった。

 高耀潔氏は、早くからこのような村を数百カ所訪れてきた。これまでに費やした支援資金は100万元(約1200万円)を超えたという。彼女は国外の中国語雑誌「新紀元週刊」の取材に応じて、中国のエイズ感染拡大を防げない最大の原因は、依然として横行している闇での売血だと指摘し、「貧困のために、中国各地で売血で生計を立てる農民はたくさんいる。農民は800ccの血液を売って80元(約千円)しか得られないのに、臨床で使用する血液は、100ccで100元」と語った。

 一方、中国政府は真相を隠ぺいするため、エイズ大規模感染の原因は麻薬の使用と乱れた性行為であると宣伝し、同時に情報を封鎖して調査を妨げ、関連書籍の出版を禁止していると同氏は指摘する。多くの悪徳業者が大規模感染に便乗し、エイズ治療の偽薬を販売しており、その背後には政府幹部が絡んでいることも証言した。

 

(翻訳編集・叶子)

 

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