<赤龍解体記>(11) 温家宝、胡錦涛とたもとを分かつか

4月14日、温家宝首相は中南海で、新しく招聘した8名の国務参事と5名の中央文史館館員に証書を授与し、座談会で談話を発表した。中共の政局が激変している今、温家宝の特異な談話が今中共の政局にいかなる影響を与えていくかが注目されている。

 ■温家宝はふたたび政治改革を訴えた

 温家宝は座談会で、中国の5つの重大な研究課題を打ち出した。1)科学発展観を持続し、経済発展の不安定、不調和、不均衡、持続不能な問題を解決すること。2)社会の公平な正義を推進し、発展や収入の格差や不公正問題を解決し、いかなる組織・人間でも憲法と法律の前ではすべて平等でなければならない。3)技術、教育、文化、医療、体育事業の発展を重視する。4)法律に依って国を治め、法治国家を建設し、とりわけ司法の独立性と公正を保たなければならない。5)経済改革と政治改革を進め、制度と体制上から経済や社会発展に影響している深い次元の問題を解決する。

 この5つの問題について、温家宝はどれもこれも国家の長期的発展に関わる大問題と強調すると共に、参事と館員たちに対し、人民の声に耳を傾け、諸問題を隠さずにありのままに報告し、問題解決に真に価値のある対策と提案を出してほしいと要求した。

 注意すべきは、5つの問題を解決する焦点は政治改革を実施することにあり、言い換えれば、温家宝はあらためて中共のタブーを犯したのである。

 ■腐敗の腫瘍を取り除き、人民の言論自由を保障すべき

 温家宝は、中共の諸々の腐敗現象を社会の腫瘍だとし、それらを取り除かなければならないと述べる。そして、腐敗の土壌を取り除くためには、根本的に制度と体制を変えなければならず、人民が政府を監督し批判することができ、権力が制約されなければならないと強調する。

 談話の中で温家宝は、近年頻発する毒粉ミルクなどの事件にも言及し、事件発生の原因を社会道徳の堕落としている。また、一国家として国民性の向上と道徳の力量が欠ければ、決して真の大国と尊敬される国家になれず、社会方式の転換期における道徳と文化の建設を重視すべきとしている。

 ■転換時期での発言の真意は?

 温家宝の特異な発言が行われた背景は次の通りである。

 1)18大の権力中枢の人事争奪戦が実質的な段階に入っている。2)上海組の中共政治局常務委員や政治局委員らが相次いで重慶を訪れ、薄煕来の「唱紅打黒」運動を支持した。とりわけ、呉邦国と中共組織部長の重慶視察と薄煕来への絶賛は、胡錦涛を含む中央指導部の意志表明だと思われる。中共誕生90周年を迎えている今、中共は明らかに左へ大きく方向転換している。3)中国ジャスミン革命運動が激しく弾圧され、著名な芸術家・艾未未氏が中共批判により逮捕されている。4)中共の独裁体制に反対する国民運動はあちらこちらで起き、民意の声が次第に高まっている。

 温家宝はたびたび上記のような言論をもって、権力中枢で発言権を強化しようとしているが、彼の言論はただパフォーマンスに過ぎず、それなりの行動が見られないなどの指摘がある。

 しかし、中共体制内において、温家宝の言論は明らかに異質な声であり、胡錦涛が掲げ、中共各派閥の最大公約数である「調和」や「安定」を破り、乱を起こしている。この現象は中共史上において未曾有なことである。

 温家宝の究極のねらいはなお不明だが、彼の言論は少なくとも中共が乱闘時代に入り、彼がすでに胡錦涛とたもとを分かったと読み取れるだろう。

 

関連記事
「21世紀は中国の世紀だ」と中国人は気負う。文明史的な視点から見れば、このことばは自惚れの嫌いがあっても、必ずしも過言ではないかもしれない。将来、歴史的事実として証明されるであろうが、中国の台頭およびその影響力の増強は人類文明史の必然のステップであり、歴史の発展の大趨勢である。
過去一年間、中共政治局常務委員の習近平、李長春、賀国強、周永康および18人の中国人民代表大会副委員長が、走馬灯のように重慶市を視察し、重慶市トップ薄煕来の「唱紅打黒」(革命の歌を歌い、マフィア組織を打撃する)活動を支持した。
世界情勢が激変し、中共の内部闘争や分裂が表面化している今、軍隊の立場と役割が中国の未来を左右するもっとも重要な要素となっている。それゆえ、「安定」を最大の政治目標とする中共指導部にとって、民間人より軍隊の乱れを未然に防ぐのが最大かつ最重要の課題となっている。
胡錦涛が中共トップに登った当初、「胡温新政」として大いに期待されていた。これまで、江沢民の上海組からひどくけん制されるだろうと、彼の不作為を寛大に見つつ奮起するのをずっと待っていた。
5月14日、中国新華社ネットおよび国営の大手メディアは一斉に、習近平が中共の幹部に、マルクス、レーニン、毛沢東の著作を学習するよう強調したと報道している。
中共解放軍の陳炳徳総参謀長が率いるハイレベルの軍事代表団が、今月15日から22日まで米国を訪問した。18日には、米国国防大学を訪問、マレン米統合参謀本部議長と会談し、その後記者会見を行った。
北朝鮮の金正日総書記が20日から26日まで、最近1年間で3回目の訪中を行った。今回の訪問は唐突の感を免れないため、その真意がさまざまに憶測されている。
米国の大手検索エンジン・グーグルが最近、中国軍のネット部隊の技術者を育成する基地(中国の済南にある藍翔技術学校)から攻撃されたことを受け、米国はすばやく反応し、クリントン国務長官が2日「事態を重大視している」と強い懸念を表明し、米連邦捜査局(FBI)も捜査を進めると表明した。
中国の大学入試全国統一試験が6月7、8日に行われた。自分たちの運命を決める大事な時であるだけに、受験生たちはみな薄氷を踏む思いで各科目の問題を慎重に解いていくのである。