直接選挙できない理由は「交通不便」 民主的選挙の日がいつ来るのか

【大紀元日本3月7日】中国では、全国人民代表大会(全人代)の代表を直接選挙で選ぶことができない。その理由について「両会」(全人代と全国政治協商会議)の李肇星スポークスマンは4日記者会見で、「交通不便」としている。同発言はマイクロブログ・微博を中心にインターネットで波紋を広げている。一方、広東省烏坎村では当局と激しく対立した末、党から独立した選挙を行い、中国で初めての「民主的選挙」が実行された。

「最も馬鹿げた言い訳」、ネットで批判の嵐

現行の選挙制度は、県や区といった「地方議会」レベルでは直接選挙が行われ、その上部組織(省、直轄市等)は、下部組織の代表による間接選挙で選ばれる。直接選挙が実施されるなど民主主義的に見えるが、候補者はすべて、政府にあらかじめ指定された人物であり、共産党員以外の独立候補者は一切認められていない。

李スポークスマンは国土が広く、人口が多い中国では、一部の地区が交通不便のため、一律に直接選挙を行うのは困難だとし、現行の直接選挙と間接選挙の組み合わせが望ましいと発言した。この発言はインターネット利用者に「最も馬鹿げた言い訳だ」と批判され、「交通不便」もたちまちホットなキーワードとなった。

杭州師範大学の範忠信教授は自身のマイクロブログで、「実家のある湖北省英山県では道路も電気もなかった1946年にすでに直接選挙が行われた。今や高速道路、携帯、インターネットまで完備しているのに、(同県の上部組織である)黄岡市の人民代表を直接選挙で選ぶことができなくなっている。いったいどういうこと?」と不満をぶっつけた。

広東省の南方テレビの馬志海アナウンサーも「ロシア人は広い国土と不便な交通という困難を克服して、総統選の投票に参加した」と皮肉のコメントを書き込んだ。それに対し、ある利用者は「それはロシアに大雪とソリという便利な交通道具に恵まれているからだよ」と返事した。

中国近代史が専門の章立凡氏は米VOAの取材に対して、現行の選挙法は60年前に制定されたもので、GDPが世界2位になり、強国として自負している今の中国は、民主小国と言わざるを得ないと指摘した。

憲政学者の陳子明氏は、当局が国民に信頼されていないことをよく分かっており、選挙を恐れているのだ、と述べた。

烏坎モデル」が普及されるのか

一方、地元政府の腐敗に抗議する住民が警官隊と激しく衝突した中国広東省の烏坎村で3日、村長ら自治組織役員を決める選挙が行われた。ここでも今までは党が指定した候補者から役員が選出されていたが、住民らは民主的な選挙を求め、共産党の広東省委員会から譲歩を勝ち取った。「烏坎モデル」として国内外に注目される住民運動は中国初の民主的選挙を成し遂げた。

前出の章氏は同村の選挙は「両会」よりも重大な意義を持っているとし、「ただ、烏坎モデルを脅威だと思っている幹部も多くいるが、これこそ中国の希望だ」と高く評価している。

温家宝首相は5日の政府活動報告で「法律に基づいた民主的選挙を実行する」と述べ、土地の強制収用問題など大衆が強い不満を抱く問題の解決に力を入れると訴えた。烏坎村での一連の動きを受けた発言とみられる。

しかし、米CNNは、烏坎モデルは一つの象徴であるに過ぎず、「アラブの春」が発生して以来、共産党は全国範囲で反体制派への監視を強めていると懐疑的な見方を示している。

中国の地方選挙の民主化に取り組む活動家・姚立法氏は烏坎の選挙がもたらす影響が大きいとする一方、農村部の選挙について「有権者が知らないだけで、政府職員が“代わりに”投票用紙を記入している選挙が多く行われている」と述べ、現状は想像する以上に劣悪だとしている。 

(翻訳編集・高遠)
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