反日デモに巻き込まれた中国人家族の悲運

【大紀元日本9月25日】西安市在住の51歳の男性李建利さんは一家の大黒柱。今、李さんは病院の脳神経外科の病床にいる。北京青年報が反日デモで被害を受けた彼の境遇を報じた。

左足と左手は徐々に運動機能を回復し始めているが、右半身は不随になったまま。言語能力も著しく損なわれ、「ありがとう」「お腹が空いた」などの単語しか発声できない。

西安市中心医院の診断結果は、重度の頭蓋骨と脳の損傷。15日の悪夢のような遭遇を思い出し、彼の目から大粒の涙がこぼれ落ちた。

この日の午後3時半ごろ、彼は反日デモの参加者に鉄の鈍器で頭を強打され、頭蓋骨骨折、脳の一部が出て大量出血。彼はその場で意識を失った。

李さんは当時日本車を運転していた。愛車のカローラに、妻と長男、その婚約者を乗せ、市内の環城西路に通りかかったとき、不運にも反日デモの大群に遭遇した。

日本車を手当たり次第に壊している暴徒たちはすぐに目の前にやってきた。手には棒や、レンガ、鉄製の鎖。無論、カローラはその攻撃の対象になった。

「私たちは車から降り、どうかやめるよう説得しようとした」と李さんの妻王さんは当時を振り返った。

「苦労して貯めたお金で買ったんだから、お願いだから壊さないでください。日本車を買った私たちがいけない。今後はもう日本車を買わない。どうか見逃してください」

そのとき、車の向こう側で何か騒ぎがあった。王さんが振り返ると、なんと夫は車前方の地面に倒れこんでいた。頭から血が溢れ出し、彼女の頭の中は真っ白になり、夫の頭を抱えて号泣した。

そんな彼女をよそ目に、十数人の暴徒は次のターゲットを探しに現場から去った。集まった大勢のデモ参加者と野次馬もこの状況に驚いた。現場の写真を撮る人もおり、だれかがティシューペーパーを差し出した。王さんはそれで夫の頭を押さえたが、血は依然、勢いよく流れ出ている。辺りは血で真っ赤に染まった。

1人の赤服姿の青年が彼女に声をかけた。「救急車を呼んでもいまの状況ではすぐには来れない。タクシーで病院に搬送したほうがいい。じゃないと手遅れになる」

運よく一台のタクシーが通りかかった。この青年はタクシーを止めた。血まみれの負傷者をみて、運転手は最初は動揺していたが、すぐに「早く乗れ」と言った。

「青年はタクシー代ももらわなかった。あの方には申し訳ないことをした」と王さんは病室でこう繰り返した。「車の後部座席はひどく血で汚れた。本当に大変迷惑をかけた」

李建利さん一家のカローラは昨年4月に買ったばかりの新車。諸税込みで12万元(約144万円)だった。決して裕福ではない一家にとって、一世一代の買い物。夫の勤め先は倒産し、妻の王さんは早期退職した。月の年金は1500元(約1.8万円)。夫の李さんは中古車仲介会社に再就職できた。長男と次男も同業種に勤めている。

この自家用車を買うのに、長年の貯蓄を使い果たした。王さんは涙ながらに語った。「自分の愛車が目の前で壊されているのをみて、心がえぐられるように辛かった」

李さんが負った重い傷はこの家庭に計り知れぬダメージをもたらした。わずか6日間の入院で、医薬費はすでに4万元(約48万円)と高額。しかも、乱闘による負傷だと判断され、医療保険の対象外で、全額自費だ。いまは親戚に金を借りるしかない。「6カ月後には、二度目の手術を受ける。その総費用にまた4万元かかる」という。

未来のことはどうなるのか、夫がどこまで回復するのか、一家は、いまでは想像する勇気もないという。

(翻訳編集・叶子)
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