「愛国教育は中国人の世界観を歪ませた」=英フィナンシャル・タイムズ

中国式愛国教育導入の反対集会、香港2012年9月(AFP/Getty Images)

【大紀元日本1月4日】英フィナンシャル・タイムズ紙はこのほど、昨年、中国で繰り広げられた反日デモを取り上げ、「中国当局による国民への愛国主義教育が中国人の世界観を歪ませた」と分析する評論を出した。

陝西省西安市で昨年9月15日に起きた反日デモで、日本車を運転していた中国人男性に重傷を負わせたとして警察に逮捕された蔡洋容疑者は21歳の男性だった。中国国内メディアの報道によれば、地方からの出稼ぎ労働者である彼は抗日ドラマを好んで見ていた。

同容疑者の母は息子の傷害行為を弁解した。「学校はずっとこのような観点を教え込んでいる。つまり、日本は邪悪な民族だと。最近のテレビでは、大多数の番組とドラマは抗日がテーマで、日本人を恨まざるを得ないだろう」

1989年に発生した中国の学生民主運動「天安門事件」や東欧革命から、中国の指導者らは、「共産主義信仰の教育をいっそう強化すべきだ」との教訓を汲み取った。そのため、中国ではそのときから新種の愛国教育が誕生した。それまでの「階級闘争」教育から「外国侵略に対抗する」教育に軸足を移した。

この新型愛国教育では、歴史が断片的に伝えられ、外国侵略者の凶悪さと残忍さが強調され、自国指導者の過ちに一切触れない。その狙いは、外国の侵略に遭ったとの歴史を利用し、若い世代の民族主義の思想を膨張させることだ。

そのため、多くの中国人は中国がまだ弱小で、外国の脅威にさらされていると思い込んでおり、そんな中国が他国を侵略し、苦しめることはありえないことだと考えている。中国の若い世代が学校で教わったのは、祖国は永遠に平和を愛しており、外国侵略の野心は根底からないということ。しかし、遠い昔ではない1979年、中国の侵攻により中国とベトナム間の中越戦争が勃発した。中国側では「対越自衛反撃戦」と名付けており、侵略戦争である認識をする中国人はほとんどいない。

一方、中国人の認識とは対照的に、国際社会の目には、中国は拡張的で、近隣諸国にたびたび脅威を与えていると映っている。

フィナンシャル・タイムズ紙の記者は同評論でこう助言した。「中国の教育制度と中国人の根深い世界観を変えるのは不可能だが、諸外国の指導者は少なくとも、中国の指導部と国民の、自国と外国への見方と心理を知っておくべきだ」

(翻訳編集・叶子)
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