自分の過ちに気づき、生まれ変わる(二)

【大紀元日本4月15日】唐朝の頃、馬周(ばしゅう)という男がいた。彼は幼いころに父母を亡くし、とても貧しかったが、勉学に励み、『詩経』や『左伝』などにも精通していた。

しかし、馬周は大酒飲みで、時に仕事を怠けることもあった。彼は博州で教師の助手をしていたころ、他人から欠点を指摘されると、仕事をやめてしまった。それからはますます酒を飲むようになり、食客となって各国を渡り歩いた。

ある日、馬周は有名な占い師のところへ行き、自分の運勢を占ってもらうことにした。占い師は馬周の顔を見て言った。「お前さんの五神(五臓に宿る神)は、すでに身体から離れてしまっている。とても危険じゃ。お前さんの前途は真っ暗じゃよ」

馬周は驚いて、どうすればよいかと占い師に聞いた。占い師は遠くを指さしながら、「あそこに、水牛に乗っている老人が見えるだろう。あのお方について行くがよい」と言った。

馬周は言われた通りに、老人について行った。すると、老人はある山にたどり着いた。老人は馬周を振り返ると、言った。「お前はもともと天上にいた神であり、この世に降りて皇帝をよく助けるという使命を背負っていた。しかし、今ではその使命を果たすどころか酒に溺れ、落ちぶれてしまっている。お前の五神はすでに去り、正気も失いつつある。死は目前に迫っているぞ。早く悔い改めるがよい」

馬周は老人の言っていることが分からず、ポカンとしていた。すると老人は、馬周を連れて豪華な建物までやってきた。扉には、馬周の名前が書かれている。老人がその扉を開けると、中には五人の男が立っていた。それぞれ、東、西、南、北、中央という文字が衣服に書かれている。彼らは馬周に言った。「私たちは、五臓に宿る神だ。お前は酒を飲むばかりで、怠けて精進しなかった。お前が身体を汚したので、我々は身体を離れ、天上に戻ってきたのだ。もし我らに、お前の身体に戻ってほしいのなら、目を閉じなさい」

馬周が目を閉じると、すぐに身体は元気を取り戻し、意識もはっきりとしてきた。そして、天上で誓った使命をすぐに思い出した。彼は自分の扉を閉めると、仙王大殿に参上し、神々たちに心から謝罪した。そして、もう一度人間世界へ戻ることを請い、許された。

馬周は山を下りると、再び占い師のところへやってきた。占い師は馬周を見ると、今度は驚きながら言った。「何かあったのかな?お前さんの人相はとてもよくなっているぞ。今回は、お前さんの将来が見える。お前さんは、何度も昇進し、100日のうちに、宰相まで上り詰める。自分を大切にするがよい」

馬周はその後、長安の都にやってきた。当時、長安は厳しい干ばつに見舞われ、人々は苦しんでいた。皇帝の唐太宗は何度も雨乞いの祈祷をし、自分の治世の不足を責める一方、文武百官を呼んで、良策を出すよう促した。馬周は治世の状況を細かく観察し、20を超える改善策を太宗に提案した。その提案はどれも問題点を鋭く指摘しており、太宗は非常に満足した。それから太宗は馬周を気に入り、四度も人を遣わして馬周を呼びつけた。二人が会うと、まるで旧知の友人であるかのように治世や社会のことについて語り合った。

唐太宗は家臣を任命するとき、その人物の徳や人格を重視した。徳と才能を備えた馬周はすぐに監察御史、中書舎人、諌議大夫、中書令などに任命され、最後には皇太子の教育係りも務めた。

馬周は唐太宗に心から忠義を尽くし、次のように述べた。「経典や歴史を学ぶたびに、私は忠義と親孝行の教えに惹かれます。私は小人ですが、大道に沿って人生を歩みたいと望んでいます。私は幼いころに両親を失って親孝行することができないのですが、国のために忠義を尽くすことができます。天上では、忠義と高潔が最も重要であり、人間はそれらに従って生きることが大切なのです」

 (翻訳編集・郭丹丹)