21日、フロリダ州のパルム・ビーチにある自身の別荘に姿を見せたドナルド・トランプ氏。25日には、同地でメディア関係者を招いたオフレコのセッションを開く予定(JIM WATSON/AFP/GettyImages)
大紀元評論・謝田

評論:トランプ氏の利益相反 どう解決するか(2)

この記事は、評論:トランプ氏の利益相反 どう解決するか(1)のつづきです。


トランプ氏がビジネスから退くことの難しさ

トランプ氏側が公表した資料を見ると、同氏がCEOを務める不動産企業「トランプ・オーガナイゼーション」は11の金融機関から約16件の融資を受けており、総額3億ドル以上だ。また、祖先がドイツであるとするトランプ氏は、ドイツ銀行(Deutsche Bank)とよく取引する。ドイツ銀行は「トランプ・ナショナル・グラフクラブ」に約1.25億ドル、「トランプ・インターナショナル・ホテルワシントンDC」に1.7億ドル規模のL/C(信用状、Letter of Credit)を提供している。

そのほかにトランプ氏に個人名義での融資や担保があるが、ビジネスから退くなら、これらの融資や担保はどうなるのだろうか? 非常にややこしくなる。

中では最も大きな利益相反は、首都ワシントンの高級ホテル「トランプ・インターナショナルホテル ワシントンDC」だ。このホテルはかつて米国政府の中央郵便局だったが、トランプ・オーガナイゼーションは同建物の使用権入札に成功し、ホテルとしての経営を60年間維持していくことができた。トランプ氏側と連邦政府調達局(General Services Administration)の間でこの契約を結んだが、問題はトランプ大統領の誕生で、トランプ氏が連邦政府調達局の局長を任命し管轄することで、同局の上司でありながら、利用者でもあることになる。これは利益相反が起きる。

米ワシントンDCで10月、中央郵便局を改装して建てられた高級ホテル「トランプ・インターナショナルホテル・ワシントンDC」のオープンセレモニーが開かれた。(Chip Somodevilla/Getty Images)

では、トランプ氏の息子や娘もビジネス界から退いた方がいいのだろうか? あるいは、トランプ氏家族の全財産をすべて白紙委任信託に移せばいいのだろうか?

白紙委任信託:Blind Trust、公職にある者の資産運用について、職務権限との利害関係の疑惑を回避するために、白紙委任デ受託機関に資産管理を委嘱する信託方式

 米国はトランプ一家の資産トラブルを引き継ぐ

 

これは可能だが、しかし現実的でないし、トランプ氏の息子や娘には不公平だ。彼たちの財産を取得する権利を奪うように見える。彼らはまだ米政府の職員ではない。いずれにせよ、米国民はトランプ氏を選んだと同時に、このようなトランプ氏家族の資産トラブルも受け継ぐことになった。

米国歴代大統領を見ると、富豪が大統領になったケースはある。現在の価値で総資産5億ドルと計算されるのはジョージ・ワシントン初代大統領だ。第3代大統領のトーマス・ジェファーソン氏は総資産2億ドル。第26代大統領のセオドア・ルーズベルト氏は総資産1億ドル。財産が最も少ないのは第33代大統領のハリー・トルーマン氏で、総資産100万ドル以下。主に本を執筆する今のオバマ大統領は総資産500万ドル以下で、富豪とは言えない。

数十億ドルの資産を持つトランプ氏は、歴代大統領のなかでも群を抜く富豪だ。しかし、なぜこのような多くの利益相反をもたらすだろうか? 

これは、その資本と投資の国際性に関わっているからだ。トランプ氏は海外の金融機関から融資を受けた。これらの金融機関は米国で支店を持っている。また、トランプ氏は世界20カ国で不動産投資を行っている。現地政府との合同投資プロジェクトも多くふくまれている。

治世を司る人の道徳

この世界の理は相生相克である。トランプ氏は米国に希望をあたえた一方、米国民に挑戦をもたらした。同時に民主主義制度への試練でもある。この利益相反問題を徹底的に解決したいと思えば、利益を受ける者の根本的な地位から、着手しなければならない。しかし、これは私有制、私有財産権利制度と民主主義制度の基盤を揺るがすことになる。

最も良い解決案は、中国古代の聖賢制度かもしれない。聖人や賢者に治世してもらうことだ。聖人なら、道徳をこの上なく重視し、莫大な財産を持たず、海外にも投資を行わないし、利益相反が起きないのだ。聖人らは天の理に従って治世を行い、国民を道徳重視の社会に導く。

トランプ氏の治世の下で、米国は保守、伝統、そして自国強大化との新たな道を歩むだろう。しかしそれによって、より深化した、より徹底的な変化はあるだろうか? またトランプ氏の治世の下の米国は、人類社会をより伝統的、聖人の治世の境地に導いてくれるのか。これは未知であろう。

(翻訳編集・張哲)

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