「いつもあれこれ意見を述べるやつが、今回に限り何もしゃべらないのはおかしい。口に出さないだけで、心の中では党や国の指導者へ大きな不満を抱いているに違いない。これは「腹謗」だ! 心の中で誹謗した罪に当たる!」と、上司や「多数の革命的大衆」たちがそのような認識で一致した(Photo by Kevin Frayer/Getty Images)
大紀元 曽錚コラム

沈黙ゆえに「右派」に認定された男

米国在住の中国人作家・丁抒氏が大紀元中国語版で連載している『陽謀』を読んで、私の故郷、四川省中江県では誰もが知っているある男の話を思い出した。『陽謀』にささやかな補足を加えたく思い、ここに記すことにする。

1957年に始まった「反右派運動」、いわゆる毛沢東の反体制人物狩りの「陽謀」が始まる前のことだ。中江県に住んでいたある男は、よくブラックユーモアじみた言論を披露して、社会問題や不条理さを指摘することで知られていた。

反右派「陽謀」が始まり、党は国民に「大鳴大放(思ったことを自由に発言し、忌憚なく意見を述べよう)」と呼び掛けた。この男を知る人はみな、「言われなくても普段から言いたいことを口にしているこの男なら、この呼びかけでたくさんの発言をするに違いない」と思った。

だがこの男は、事前に「大鳴大放」の真意を知る北京の親戚から「しゃべるな」と固く口止めされていた。「今回の『大鳴大放』は、不満分子をあぶり出し一網打尽するために仕組まれたものだ。何があろうと絶対に発言してはならない」。事前に厳しく言い聞かされていた男は、親戚の言うとおりにすることにした。やがて「大鳴大放」が始まったが、男は、言われた通り堅く口を閉ざして何も発言しなかった。

その結果、男は事なきを得たのだろうか? 

「いつもあれこれ意見を述べるやつが、今回に限り何もしゃべらないのはおかしい。口に出さないだけで、心の中では党や国の指導者へ大きな不満を抱いているに違いない。これは「腹謗」だ! 心の中で誹謗した罪に当たる!」と、上司や「多数の革命的大衆」たちがそのような認識で一致した。

そして、この男は反革命の「右派」と認定された。「腹謗右派」の異名で知られるようになった。

(翻訳編集・島津彰浩)

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