就学できない李和平弁護士の娘・佳美ちゃんと、幼稚園に入園できない王全璋弁護士の息子・泉泉ちゃん(王全璋弁護士の妻・李文足さん提供)
人権弁護士大量拘束から2年

子は就学できない 嫌がらせも…苦境を妻が明かす

2015年7月9日から始まった中国当局による人権派弁護士の一斉拘束から間もなく2年。残された家族は、いわれのないうわさの流布や、住居移転を余儀なくされ、さらに子供が就学できなくなるという嫌がらせに遭っている。

残された妻たちは、夫たちの解放に向けて、ネットを通じて最新状況を伝えている。強制連行された王全璋、李和平、江天勇弁護士はいまだに家族との面会も許されず、江天勇弁護士は行方が分からない。 

ラジオ・フリー・アジアが29日に公開した、李和平弁護士の妻・王峭岭さんと王全璋弁護士の妻・李文足さんが語る動画によると、李和平弁護士には最近、非公開裁判で3年の禁錮刑が下ったという。これを不当として、彼女たちは別の弁護士に依頼して、夫の無罪釈放に向けて動いていると語っている。

同じく「709弁護士一斉拘束事件」で拘束された勾洪国弁護士の妻・樊麗麗さんは、李文足さんや王峭岭さんが苦境に置かれていることについてつづった手記を、18日までに大紀元に寄せた。下記はその抄訳。

向かって左から、謝陽弁護士の妻・陳桂秋さん、李和平弁護士の妻・王峭岭さん、王全璋弁護士の妻・李文足さん、勾洪国弁護士の妻・樊麗麗さん(国際特赦組織中国語)

「あなた、早く帰ってきて…!」

この叫びには、一人の女性が嘗め尽くした辛酸と、流した涙が込められている。

王全璋弁護士の妻・李文足さんは、思わず手を差し伸べたくなるような、はかなげな人だ。そんな可憐な女性でさえ、戦うことを選択した。一人息子の泉泉ちゃん(4歳)は、もう2年近くも父親の顔を見ていない。

一年前、文足さんは弁護士拘束事件で憔悴しきっていた私に付き添ってくれた。709事件の「関連部門(政法委)」が、王全璋夫婦の名誉を傷つけるため、根も葉もないうわさをまき散らしていたころだった。文足さんは、怒りと悲しみに打ち震えていた。

追い打ちをかけるかのように、泉泉ちゃんが顎に10針縫う大怪我を負った。病院へ向かう途中、泉泉ちゃんは「ママ、痛くないよ」と強がった。医者の診察中、文足さんは待合室の隅で泣いていた。午前2時の病院。孤独感と自責の念に駆られていたようだった。

当局の「関連部門」職員数人が文足さん親子に張り付いて監視していた。昨年、幼稚園から受け入れを拒まれた泉泉ちゃんは、母親と行動をともにしている。

2015年7月の人権弁護士大量拘束で、囚われの身となった王全璋弁護士と妻・李文足さん、息子の泉泉ちゃん(ネット写真)

就学できない弁護士の娘

 

李和平弁護士の娘、佳美ちゃんも同じような境遇に立たされている。奥さんの王峭岭さんはとても気丈な女性で、私は彼女が泣くのを見たことがなかった。しかし、娘が大好きな学校に入学できないと聞いた時には、くやしさと悲しさで涙を流した。「関連部門」が学校側に圧力をかけたのだ。

8カ月後に彼らと再会した時、泉泉ちゃんも佳美ちゃんも自宅学習して日々を過ごしていた。以前よりも聞き分けが良くなっていたことが、また不憫に思えた。

あるとき、泉泉ちゃんを預かったことがある。夜中に「おばちゃん、ママに会いたい!」と泣きじゃくった。抱っこすると、すぐに寝息を立て始めた。小さな子供が重荷を背負っていることは明らかだった。

泉泉ちゃんには、父親についておぼろげな記憶しか残っていないようだ。だが文足さんは、夫の受けている苦難を忘れたことはない。王全璋弁護士が想像を絶するほどの拷問を受けているという話も、漏れ聞こえてくる。

江弁護士は、かつて「関連部門」に拘束され、拷問を受けた時のことを話した時、子供のように嗚咽した。「死んだほうがましだと思えるほどの深い絶望は、自ら体験してみなければ分からない」と語った。

残された家族が、住んでいる家から追い出されたことも一度や二度の話ではない。だが彼女たちは、子供と安心して住める場所まで奪われようが、なおも凛として立っている。

中国は豊かになったと言われるが、現行の法律は彼女たちの自由と権利を守ってくれるどころか、彼女たちを迫害する道具に成り下がってしまった。こうした恥ずべき行為は、最終的に誰の顔を打っているのだろうか。

他人のために法律に保障されている自由と権利を守ろうと戦う人が、そのことで自分の妻子を守る権利を奪われている。マスコミ報道やさまざまなSNSのコメントを見ると、収監中の王弁護士に対する中傷が公然と行われている。だが、彼はオランダ政府から「人権擁護者チューリップ賞」候補に挙げられるほどの人物なのだ。これも結局のところ、誰が誰の顔を打っているのだろうか?

709弁護士拘束事件・被害者家族 樊麗麗

2017年4月13日夜 承徳にて


709弁護士一斉拘束事件:2015年7月9日から、中国公安部が全国規模で、各地の人権派弁護士らの一斉拘束を開始した事件。16年12月16日までに少なくとも23省で319人の弁護士、弁護士事務所職員、人権活動家やその家族が、当局からの事情聴衆や出頭命令を受ける、出国制限、軟禁、住居の監視、逮捕、強制失踪(政府による拉致)といった状況に置かれている。

(翻訳編集・島津彰浩)

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「政治花瓶(単なる飾り)」と呼ばれる中国の最高立法機関、全国人民代表大会(全人代)。その地方選挙に、北京の人権派弁護士の妻ら14人がこのほど、立候補を表明した。