焦点:過半数かけ自公と希望が激突、急造批判に問われる小池氏の手腕

 

[東京 28日 ロイター] – 安倍晋三首相が28日、衆院解散に踏み切った。勝敗ラインは安倍首相が自ら示した「与党で過半数」の233議席。当初は圧勝予想もあった与党陣営だが、小池百合子東京都知事が代表になった希望の党の誕生で情勢が急変。

自民・公明と希望がしのぎを削ることになった。ただ、新党には「急造」「寄せ集め」の批判が早くも出ており、早速、小池代表の手腕が試される局面になっている。

「新党ブームは混乱と経済の低迷を招いた」──。安倍首相は28日、衆院本会議後の両院議員総会で、希望の党を念頭に、野党の動きをけん制。「安倍対小池」の対決モードがいきなり高まった。

ただ、当初からこの構図を想定して、安倍首相が解散を決断したのかどうか、不透明な点も多い。

<解散決断へ動いた10日の安倍・麻生会談>

複数の政府、与党関係者によると、首相が解散を決断したのは今月15日。これに先立つ安倍首相と麻生太郎財務相の10日の会談では、1)消費増税の使途変更、2)人づくり革命に向けた予算措置、3)賃上げを促す減税案――などを盛り込んだ対策案を協議したが「所信表明に向けた調整だと思った」と、政府関係者のひとりは当時を振り返る。

急転直下の解散劇。首相周辺は14日に関係者に衆院解散を伝達する調整に入り、翌15日、公明党の山口那津男代表や自民党の二階俊博幹事長らに解散の意向を伝えた。

このタイミングでの解散について、外交筋のひとりは「北朝鮮情勢にほかならない」と指摘するが、小池新党の動きを封じる狙いも透ける。政府・与党関係者の一部では「(首相周辺は)小池新党が(急ピッチで準備を進め)台頭してくることを織り込んでいなかったのではないか」との見方もある。

<93年細川連立政権と酷似の声>

民進党の前原誠司代表は同日午後の両院議員総会で、小池百合子東京都知事が代表を務める「希望の党」から、希望者が立候補して公認候補になることを容認する案を提示。その場で承認された。

その結果、かなりの規模の民進党議員が希望の党の公認候補として、衆院選に立候補する見通しとなっている。

こうした動きを受け、政界関係者の中には、1993年7月の衆院選後に成立した7党1会派による細川護煕首相率いる「非自民連立政権」の成立時と状況が似ていると指摘する声が上がっている。

ただ、希望の党代表の小池百合子東京都知事は、民進党議員の加入は個人ベースであり「民進党とは合流という考えではない」と述べており、合流できない民進党議員が出てくる可能性がある。

93年当時も「ガラス細工」を批判されたが、野党勢力を結集した政権奪取のハードルは高そうだ。

<消費増税でぶつかる主張>

 

また、マクロ経済政策などがどのようになるのか、小池代表から詳細な発言はなく、公明党の山口那津男代表は、希望の党の内実は民進党であり「もっと言えば、かつての民主党政権を担った人たちがお面を変えて登場することになる」と批判した。

マクロ政策に詳しい元政府関係者のひとりは「(小池新党が)急場でこしらえた綱領は不明瞭だし、特定の政策思想もないため、野党の躍進は、かえって政治停滞を招くだけ」と話す。

与党のベテラン議員は「烏合(うごう)の野党が政権とれば、北朝鮮対応も流動的になりかねない」と、政権の安定性が重要であると訴える。

安倍首相は2019年10月の消費税10%への引き上げと使い道を全世代型に変更することを大きな争点に戦う姿勢を鮮明にしている。

一方、小池代表は、消費税引き上げの前提になる経済成長について「好景気の実感がない」と述べ、引き上げないスタンスに傾斜している。

この違いを有権者がどのように判断するのかが、選挙戦の情勢を大きく左右しそうだ。

ただ、安倍首相の使途変更が実現すると、2020年の基礎的財政収支の黒字化目標は、先送りされることになる。増税凍結でも同様に先送りを回避できない。

一部の政府関係者からは「いずれの選択も、財政健全化への取り組みを後退させることになる」と、財政構造の悪化に懸念を強める見方も浮上している。

 

(ロイター日本語ニュース 編集:田巻一彦)

関連記事
4月29日、テキサス大学オースティン校にテントを張っていた親パレスチナ派デモ参加者を、警察当局が逮捕し始めた。
米国とフィリピンが、南シナ海で初めて肩を並べて行った共同軍事演習の最中、4月30日に中共の海警船が、同海域でフィリピンの船舶に再度危険な干渉を行(おこな)った。中共は以前から、南シナ海でフィリピンの船舶に対して干渉を繰り返し、国際社会から批判を受けている。
今年11月に迫る米大統領選で勝利した場合、トランプ氏は数百万人の不法移民の強制送還や中国製品の関税強化、議会議事堂事件で起訴された人々の恩赦を行うと米誌タイムのインタビューで語った。
米国連邦大法院で、ドナルド・トランプ前大統領に対して一定レベルの免責特権は適用可能かもしれないという前向きな解釈が出た。これは、任期中に適用された容疑に関して「絶対的な免責特権」を要求していたトランプ側の主張に対して懐疑的だった従来の立場から少し緩和されたものだ。
北米全土の大学生の間で、ハマスへの支持とパレスチナ人の幸福への懸念が急激に高まっている。ほとんどの学生にとって、それは地球の裏側にいる人々と密接なつながりがあるからではない。学業をなげうってまで過激主義に傾倒するのはなぜだろうか。