監視目的か

「自宅刑務所」新疆の家庭に政府職員がホームステイ 100万人規模

中国北西部新疆ウイグル自治区の一般家庭では近年、政府幹部による定期的な「ホームステイ」の受け入れを強いられている。中国政府による「民族団結」を名目とした厳しい監視が目的とみられている。官製メディアによると、2018年は職員100万人を同地農村へ派遣した。

国際人権組織ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)5月13日の報告によると、新疆地区では今年初めから、ウイグル人の家族は政府職員の招待を強いられ、暮らしぶりや政治観について情報を公開するよう求められている。

HRWは中国共産党政府に対して、「国際人権法のもとで保護されている少数民族の文化的権利、プライバシー、家庭生活を侵害するこのホームステイ計画を、直ちに終了すべきだ」と提言している。

HRW中国上級研究員マヤ・ワン氏は「ウイグル族家族の日常は文字通り、共産党政府の目の届く範囲内で、寝食するよう強いられている」と報告書に記している。

2016年10月、共産党政府は「民族団結」をスローガンに掲げた家族化計画を打ち出し、2カ月毎に11万人もの政府職員を派遣し、ウイグル人の家庭へホームステイさせた。一度の滞在は5日間~1週間とされる。

官製メディア中新網2017年12月の報道によると、政府はこの家族化計画を2018年初めに延長・強化すると発表。さらに増員して100万人の職員を新疆地区農村部の家庭に一時居住させ、職員は家族と「共に食べ、共に住み、共に労働し、共に学習」させるという。

共産党政府は、ウイグル人がこのホームステイを拒む権利を持つかどうかを説明していない。

ラジオフリーアジアによると、政府職員は家庭訪問中に「家族に関する情報を収集し、最新状態に更新する」という。たとえば家族構成の変化、他地域からの移住者、政治的見解、宗教など。職員は「問題」を報告し、これを「是正」する活動が許可されている。

中新網によると、職員は滞在中、中国北京語(共通語)を教えたり、中国国歌や共産党を礼賛する歌を歌ったりする。また、街内の広場で中国国旗を掲げる国旗掲揚式を開催し、家族を招待している。

新疆ウイグル自治区は「自宅刑務所」と化す

 

中国大手ソーシャルサービス微博には、共産党政府アカウントが、実際にウイグル人の家での生活や、党員たちの「親密さ」を宣伝する写真を掲載している。家族にベッドを用意させ、一緒に寝床に入り、食事を共にし、子供たちや女性たちと親しげに接して家庭教師役を担ったりしている様子が映っている。

HRWの王氏は、新疆地区の住民たちに対する「深く侵略的な強制同化政策は、基本的人権を侵害しており、地域の怒りを促すことになりかねない」と指摘した。

ドイツ拠点のウイグル人権組織・世界ウイグル会議代表のドルクン・イッサ代表は、共産党の計画で、新疆地区の家庭は「逃れらない刑務所と化した」「単なるプライバシー侵害ではなく、家族の幸福、安全、安心を消滅させるもの」と計画を強く批判した。

新疆地区の文化はますます中国当局による侵略的な同化政策により消滅の危機にさらされている。2017年、現地政府はウイグルの伝統である男性の長ヒゲ、女性の公共の場での覆面は禁じられ、新生児の名づけも禁止リストが発布された。教育当局は自治区内の学校で使われる教科書にウイグル語やカザフ語の使用を禁止した。また、自宅に共産党総書記の肖像を掲げることを義務付けるなどを強いている。

イッサ代表によると、2016年に始まった家族化計画と同時に、ウイグル人に対する共産党の政治的再教育を名目とした連行と拘留が行われている。2017年4月以降、「強い宗教見解」「政治異見」などの理由で、男性たちが警察に連行されたと明かした。

「体制主導の抑圧的な計画で、民族の調和と団結などできるはずがない」とイッサ代表は批判した。

4月、米国マルコ・ルビオ上院議員(共和党)は、在中国大使テリー・ブラインスタッド氏に公開書簡を送り、新疆地区で反人道的な「監視と大量拘留」があるとの人権団体の報告に応え、現地調査するよう求めた。

ルビオ議員は同時に、米国政府に対して、外国の人権侵害を制裁対象とする国際マグニツキー法に基づき、中国に対して制裁措置を検討するよう求めた。

(編集・佐渡道世)

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