英蘭、ロシアによるサイバー攻撃を非難 「ならず者国家の仕業」 

[ブリュッセル/ロンドン/ハーグ 4日 ロイター] – 英国とオランダは4日、ロシアが世界的なサイバー攻撃を組織的に実施しているとして非難した。こうしたサイバー攻撃にはオランダ・ハーグに本部がある化学兵器禁止機関(OPCW)に対するものも含まれている。

英国とオランダは北大西洋条約機構(NATO)の国防相理事会がブリュッセルで開かれる中、ロシアによるサイバー攻撃を非難。英国のウィリアムソン国防相は「こうした行為は大国が行うことではない。ならず者国家が行うことだ」と述べた。

欧州連合(EU)幹部も懸念を表明。EUの執行機関である欧州委員会のユンケル委員長、トゥスクEU大統領、モゲリーニ外交安全保障上級代表は声明で、「国際法や国際機関を弱体化させるこうした行動を非難する」と指摘。「EUはデジタル領域における管轄組織や加盟国、国際的なパートナーや機関の対応力を引き続き強化する」とした。

またマティス米国防長官は、OPCWに対するハッキングについてロシアが責任を負う必要があるとし、ロシアは代償を払うべきで、問題への対応について多くの選択肢があると語った。

オランダ当局は、ハーグに本部があるOPCWが4月にサイバー攻撃を受けたが未然に防いだと表明。当局は当時、英国で発生したロシアの元スパイのセルゲイ・スクリパリ氏に対する暗殺未遂事件と、アサド政権下のシリアの双方で使用された疑いのある化学兵器について捜査を進めていた。

オランダ当局によると、4月10日に4人のロシア人がオランダに入国。その3日後にOPCW本部に隣接するホテルでスパイ行為に利用できる機器を所持しているところを拘束された。4人はその後、OPCWがサンプル分析を行うスイスのシュピーツ研究所に向かう予定だったが、ロシアに強制送還された。

オランダ当局は4人のパスポートのコピーを公表。オランダ軍当局者は「多くの国際機関が本部を置いているオランダで(ロシア軍の諜報機関が)暗躍している」と述べた。

これに先立ち英政府は、2016年の米大統領選やスポーツイベント、交通網に至るまでの幅広い分野で混乱を引き起こした一連のサイバー攻撃は、ロシア軍参謀本部情報総局(GRU)によるものだと結論付け、ロシアを非難。

国家サイバーセキュリティーセンター(NCSC)の調査で、15年に英国のテレビ局から電子メールが流出した事件をはじめ、16年の米民主党全国委員会(DNC)、17年の世界反ドーピング機関(WADA)などがサイバー攻撃を受けた事件について、ほぼ間違いなくGRUが背後で指揮していたことが裏付けられたとした。

英国のハント外相は、OPCWにサイバー攻撃が仕掛けられたことは、スクリパリ氏の暗殺未遂事件の背景にロシアがいることを裏付ける一段の証拠となるとの見方を示した。

ロシアは関与を否定しており、西側諸国による非難を受け、ロシアの国際社会での孤立が一段と深まる可能性がある。

*内容を追加しました。

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