2016年9月、杭州で開かれたG20サミットで握手を交わす安倍晋三首相と習近平主席(Lintao Zhang/Getty Images)

日本政府「裏の戦後賠償」40年継続のODA終了 「見返りは反日教育」

日本政府は23日、40年間継続してきた中国への政府開発援助ODA)は、一定の効果が得られたとして計画の終了を発表した。北京空港や中日友好病院の建設など、ODAの支援額は総額3兆6500億円を超える。

昭和54年(1979年)以来、日本はODAを通じて中国を経済援助してきた。北京国際空港はODAにより1999年に大増築が行われ、第2ターミナルをはじめ現在の規模に拡張された。日本国際協力機構(JICA)によると、1984年に北京の中日友好医院は、日本政府から165億円あまりの無償資金援助を受け開業した。また、同院は「中国国民の信頼は厚く政府から北京100病院の一つに選ばれており、2003年SARS流行では、患者99%を治癒させた」という。

ほかにも、中国の多くの鉄道や港湾のインフラ整備工事には日本のODAの対象として支援金があてられた。いっぽう、中国国内でその成果はほとんど知られておらず、逆に中国共産党政府は官製メディアを駆使して抗日思想(反日)を積極的に宣伝し続けている。香港紙・蘋果日報は24日の記事で「日本の40年間続いた援助の見返りは反日教育だ」と報じた。

中国公式発表のGDPには信ぴょう性が疑われるが、中国は「世界第2の経済大国」と主要メディアは報じるようになった。日本のネットユーザーは、現在中国は十分な経済規模があるにもかかわらず、日本の税金から政府経済援助を受け取り続けたとして、ODAは「姿を変えた第二次世界大戦の戦後賠償」と揶揄されている。

戦後賠償放棄は日本取り込みと対米政策

中国ポータルサイト大手・騰訊網が2012年に発表した『戦後中日関係シリーズ』によれば、賠償を放棄した理由は、1949年にソ連スターリン共産党書記長による助言「日本を手に入れよ」が影響していると分析する。

文章によれば、スターリン書記長は、米国と日本の関係が深まり中国の脅威となることを危惧していた。ソ連を訪れた劉少奇主席ら中国代表団に、日本の赤化と浸透工作を深めるために、賠償請求で日中両国民の軋轢(あつれき)が深まるのを避けるよう助言したという。

スターリン書記長は「中国共産党が日本を手に入れるための障害にならないように。これからの中国共産党の任務は、日本共産党とその他の進歩勢力を援助し、日本の『反動分子』(注:共産党を警戒する勢力)を打撃することだ」と指示した。

この共産党による「日中団結」の指針は1949年7月1日、官製メディアの日中戦争開戦12周年記念の評論記事で明示された。『日中両国国民が団結し、米国による長期的な占領に反対せよ』とのスローガンが打ち出された。

中国共産党の周恩来政権は、1972年に日中両国国交を樹立した際、当時の田中角栄首相に、戦争賠償請求の放棄を明言した。

大紀元評論員・謝天奇は、2017年の評論文に「文化大革命後、中国共産党政権が市場の改革開放を打ち出すと、欧米企業より、いち早く中国市場に進出したのが日本企業だった。日本はこの30年間の中国経済発展に大きく貢献した」と書いた。

いっぽう、共産党政府は国民の政権に対する不満をそらすため、反日キャンペーンを展開してきた。「中国共産党は日本との真の友好を考えておらず、『日本を利用したい』という卑劣な一面を証明している。日本は中国共産党政権の悪質さを再認識する必要がある」と分析する。

安倍首相の訪中、オープンさや透明性ある中国合同プロジェクト 堅持できるか

安倍晋三首相は25日に訪中する。日本の首相が北京を公式訪問するのは7年振りで、2012年の安倍政権以来初めてとなる。日本からは500人規模の経済界要人が訪中し、3日間の首相滞在期間に開かれる経済フォーラムに参加し、「第三国での合同プロジェクト」が話し合われると考えられている。

米政府系ボイス・オブ・アメリカ(VOA)の取材に答えた、台湾の舗仁大学日本語文化教授・何思慎氏は、日本企業とのビジネスの取り付けには共産党の思惑が見え隠れすると分析する。

大陸をまたぐ経済構想「一帯一路」は、関係国に負わせて中国共産党の政治的影響力を強めていると批判されている。

このため、国際批判をかわすために、米国の同盟国でありアジアの経済大国である日本との「友好」を選択すると同教授は分析する。

日本政府は、経済発展を促進するために世界規模でインフラ整備を支援することを明確に示している。安倍政権は投資プロジェクトが受入国に対して「オープンで透明性があり、経済的に実行可能で、財政的に持続可能でなければならない」と強調している。このたびの中国との合同プロジェクトで、首相のスタンスが堅持されるかどうかが注目される。

(編集・佐渡道世)

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