中国、電磁パルス攻撃に特化した核弾頭を製造=米機密解除文書

米国防総省が最近公開した文書によれば、中国は、電子機器を破壊する電磁パルスEMP)攻撃に特化した核弾頭を製造しているという。

2017年7月作成の報告書「核の電磁パルス攻撃と組み合わせたサイバー戦争」は、ピーター・ビンセント・プレイ(Peter Vincent Pry)博士が、米議会のEMP調査委員会の求めに応じて書いたもの。当時、北朝鮮が米国に対する電磁パルス攻撃を示唆していた。国防総省は2019年1月27日に機密扱いを解除した。

プレイ博士は、米中央情報局CIA)で10年間ロシア核戦略分析責任者を務めた。国家防衛委員会や電磁パルス評価委員会を含め、議会でこの攻撃能力に関して分析を提出してきた。

電磁パルス攻撃とは、核爆発などにより瞬時に強力な電磁波を発生させ、電子機器に過負荷をかけ、誤作動させたり破壊したりするもの。ミサイルに搭載した核弾頭を地上30~400キロ上空で爆発させれば、半径600~2200キロの範囲で地球に向かって伝播するEMPが生成される。

専門家によると、この攻撃によりコンピューター、発電所、通信衛星、電話、電気制御された水道設備やガスパイプラインなど対象地域のすべての電気系統の機器が失われ、地域は「石器時代に戻る」と表現されている。

プレイ博士によると、中国、ロシア、イラン、北朝鮮は、米国社会が電気・電子・技術に大きく依存していることに着目し、このネットワークを標的とするよう軍事計画を修正した。

2018年、国土安全保障省と国防総省の専門家グループは、EMP攻撃と磁気攪乱に対応する緊急対策案を報告している。それによるとEMP攻撃で1年以内に米国人口の90%が死亡すると推定している。

また2017年の段階で、北朝鮮の外交戦略の優先事項には、日本と韓国を対象にした「復讐と統一のための」計画がある。博士は、北朝鮮も電磁パルス攻撃を、この戦争のための選択肢にあるとした。

ほかにも、2000年2月12日に解放日報は中国共産党上海中央委員会の文書として、中国共産党政権は台湾戦略のために、接近する米原子力空母と台湾に対してEMP攻撃を使用することの有効性を報じた。

文書によると、米空母の致命的な欠点として「電子機器に大きく依存」を明記する。「電磁パルスにより、空母の中枢システム、随行する他艦船や上空の航空機のレーダー、通信設備を破壊することができる」「攻撃は死傷者を出さず、空母をマヒさせることができる」とある。

台湾国防大学の軍事アナリストは2006年、北京の清華大学の核科学教授の発言を国防資料としている。それによると、「EMP攻撃のシナリオは台湾攻撃の切り口となりうる。最初に(台湾側に)麻痺状態を起こし、別部隊を投入する」

北朝鮮が対日戦で電磁パルス攻撃を使用した場合の想定。半径1080キロが影響範囲となり、グレーは電気が無効化する地域(firstempcommission.org)
中国軍が台湾と米空母に電磁パルス攻撃を使用した場合の想定(firstempcommission.org)

電磁パルス攻撃は軍事行動の革命的存在

今回、機密解除されたレポートによると、中国共産党政権の指導部は、電磁パルス攻撃による戦争を「第六世代戦争」「非接触戦争」「電子戦」などの名称で言及しており、EMP攻撃は軍事行動の革命としている。

さらに北朝鮮、イラン、そしてロシアの軍事教書は中国側の理論を真似ている。中国軍機関紙は、EMP攻撃について「21世紀の真珠湾事件」と例え、「米国は他のどの国よりも攻撃に対して脆弱である」と分析記事で主張している。

別の中国官製紙も「敵の通信網、燃料パイプライン、送電網、交通管制システムなどを破壊するのにEMP攻撃は使用できる」と書いている。

中国軍の教書にあるEMP攻撃の説明は「国のコンピューターネットワークが破壊され、国が麻痺状態に陥り、国民生活が停止する」とある。

壊滅的なEMP攻撃を引き起こす可能性がある従来の核弾頭に加え、中国や北朝鮮は強力な電磁パルスを発生させるEMP攻撃に特化したスーパー核弾頭を開発しているという。報告によると、1メートルあたり最大200キロボルトを発生させる。

米国防総省は現在、兵器や通信システム強化といった、限られた措置しか講じていない。米軍の機能は民間インフラに依存し、国防総省は対処していない。報告によると、中国やロシアの軍事計画立案者はこの米国の抱える問題を明白に認識している。

日本の防衛省は2017年度予算に電磁パルス攻撃の研究費に14億円を計上。電磁パルス弾技術要素や防護装備品の開発研究を行っている。

(編集・佐渡道世)

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