参考写真(David Silverman/Getty Images)

米生体検査大手、新疆ウイグルへ販売停止 弾圧加担の恐れ

米国の生体研究大手サーモフィッシャー(Thermo Fisher)は21日、中国共産党政府が同社技術を使って新疆ウイグル自治区住民のDNAデータベースを作成しているとの報道を受けて、同地域での製品販売を中止すると発表した。

2016年以来、中国当局は新疆地域で住民の血液サンプルを採取しているという報告が複数回出ている。2019年2月、ニューヨーク・タイムズは「米国企業の専門知識の助け」を借りて、共産党当局が「無料の血液検査」を実施していると報じた。

報道で名指しされたサーモフィッシャー社は21日、新疆における血液検査の機器を販売しないと発表した。同社の広報担当者は、「科学の分野で世界をリードする企業として、当社の製品やサービスが顧客にどのように使用されているのか、また使用例を検討することの重要性を認識する必要がある」と述べた。

サーモフィッシャー社は科学検査機器の世界大手で、2018年の売上高は243億米ドルに上る。

新疆ウイグル自治区では、中国共産党政権が「社会安定」を名目に、ウイグル族やカザフスタン系住民を強制連行、信仰・言語・文化的習慣の禁止など、非人道的な同化政策をしている。米国務省は、同地域には100万人収容の施設が複数あり、収容者の即時解放を要求している。

国連人権理事会は、新疆ウイグル自治区の地域に関わる企業に対して、人権への悪影響を防止するための「国連の人権とビジネスの指導原則」を順守し、社会的責任を果たすよう求めている。

2017年6月、人権擁護団体ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)は、サーモフィッシャーがDNA検査技術を新疆公安局に売却したと伝えた。HRWによれば、新疆政府は「全民検診」と称して12〜65歳の全地域住民のDNAサンプル、指紋、虹彩スキャン、血液型を採取しているという。これを拒否した場合、「党への忠誠心が低い」などの理由で処罰が下される。

HRWは、大規模な生体情報収集は国際人権規約に違反すると批判している。同中国担当のソフィー・リチャードソン代表は「中国政府は、人々を顕微鏡の上に置くことで、社会を安定させられると考えているようだが、こうした人権侵害的プログラムは、政府に対する敵意を強めているだけだ」と指摘する。

2018年12月に英ロンドンで開かれた、人道犯罪に対する有識者が開く模擬裁判・人民法廷は、中国臓器強制収奪問題を取り上げた。証言者としてリアルタイム通信映像で出廷した、新疆における収容体験者のウメル・ベカリさんは、入所時に身体検査と採血を受けたと述べた。

カザフスタン籍のベカリさんは、同国と新疆を仕事のため行き来していたが、突如逮捕され10カ月拘禁された。「ウイグル人に対する臓器収奪は、カザフスタンでも嫌というほど耳に入ってくる」と問題の認知度は高いという。身体検査の間、医師たちが「生きたまま私の身体を切り裂き、臓器を売り払う相談をしているのではないか…言い知れぬ恐怖を覚えた」と語っている。

(編集・佐渡道世)

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