焦点:スペインの北朝鮮大使館襲撃、反体制組織「自由朝鮮」とは

[ソウル 27日 ロイター] – スペインの首都マドリードで2月に起きた北朝鮮大使館襲撃事件の詳細が判明するとともに、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長が率いる体制の打倒を目指す組織「自由朝鮮」の存在が注目を浴びるようになってきた。

自由朝鮮の存在は、2017年にマレーシアで殺害された金正男氏の家族を保護したと宣言した際に初めて明らかになった。

スペイン当局が26日に公表した裁判所の記録によると、その自由朝鮮のメンバー少なくとも10人がマドリードの北朝鮮大使館に押し入り、数時間にわたって一部大使館員を拘束するなどした後、コンピューターとハードディスクドライブを持って逃走したもようだ。

自由朝鮮はウェブサイトで大使館侵入を認めた上で、武器を持ち暴力をふるったというスペイン当局の説明は間違っていると主張。代理人の弁護士は、スペインの裁判所が自由朝鮮側の言い分を聞かずに「結論を下したと称している」と指摘した。

さらにスペイン側が一部侵入者の氏名などを公表したことについて「常に敵を処刑する残忍な体制に反対する活動をしている人々の名を公開するのは非常に無責任だ」と批判している。

公表されたのは侵入した10人のうちの7人の氏名と誕生日。専門家や人権団体などからは、この7人は命が脅かされるとの懸念が出ている。

侵入者の1人と以前、ともに運動したというある韓国の人権活動家は「あまりに危険だ。彼らの素性が知れてしまった以上、これまでのような活動はできなくなる」と話した。

<長年の活動家>

メキシコ国籍を持ち、スペイン当局から事件の首謀者の1人と名指しされたのはエイドリアン・ホン氏だ。同氏は脱北者支援団体「リバティー・イン・ノースコリア(LiNK)」の設立に尽力し、その後北朝鮮の「差し迫った劇的変化」に備える組織を率いた長年の活動家として知られる。

スペインの裁判所の記録によると、ホン氏は北朝鮮大使館襲撃を指揮し、米国に渡って連邦捜査局(FBI)に盗み出した情報を提供したという。

ホン氏は他の数人のLiNKメンバーとともに06年、北朝鮮からの亡命者グループを支援したとして中国当局が逮捕し、国外退去処分を科した。

ただLiNKは26日の声明で、ホン氏とはもう10年余り関わりがないとした上で、LiNKには同氏の現在の活動に関する情報は何もないと付け加えた。

<情報機関の影>

自由朝鮮はサイトで「臨時政府」の樹立を宣言しており、自ら北朝鮮国民を代表する唯一の正当な政治組織だと名乗っている。3月11日にマレーシア首都クアラルンプールの北朝鮮大使館の外壁に落書きが見つかった事件も、自分たちがやったと明らかにした。

これらの自由朝鮮の大胆な動きを受け、金正恩体制に反発する勢力が相当な力を持ちつつあるのではないか、と一部の専門家は考えている。ただ別の専門家は、自由朝鮮は外国の情報機関と連携している可能性が根強く残るとの見方を示した。

コリア・リスク・グループのディレクター、アンドレイ・ランコフ氏は「プロの関与があったとの考えを持ち続けている。自由朝鮮はコンピューターとハードディスクドライブを持ち出したが、暗号解読の高度な専門技術がないのであれば、主要国の情報機関以外にとっては恐らく無用の長物だろう」と述べた。

自由朝鮮は、北朝鮮大使館襲撃についていかなる政府も関わっていないと強調。FBIとは先方の要請によって「莫大な価値をもたらす可能性がある特定情報」を共有したものの、秘密厳守の合意は破られてしまったようだと説明した。

米国務省は、同国が襲撃事件に一切関与していないと断言している。

(Josh Smith、Hyonhee Shin記者)

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